逆流性食道炎
胃の中にある胃酸や消化酵素が食道に逆流すると、食道粘膜が損傷し、炎症を引き起こします。すると、みぞおちのあたりに痛みを感じるほか、胸焼け、胃の中から酸っぱいものが込み上げてくる感じ、のどの違和感、せきなどの症状があらわれます。これが逆流性食道炎です。ある程度年齢を重ねてから症状が発生したという人や、生活習慣が乱れている状態が続いて症状が出てきたという人もいますが、一度かかってしまうと再発しやすいという特徴があります。
食道がん
その名の通り、食道の粘膜にがんが発生し、進行するにつれてみぞおち周辺や胸、背中の痛み、のどがつかえるような感覚、飲食時の飲み込みにくさ、体重減少、せき、声のかすれなどの症状があらわれます。食道がんは、初期段階ではほとんど自覚症状がありません。進行が早い傾向があるだけでなく、転移しやすいため、早期発見・早期治療が必要ですが、最初は自覚症状がないことから難しい場合も多いです。食道がんで早期発見に至ったケースは、何らかの理由で胃内視鏡検査を受けて、偶然発見されたという例がほとんどです。現状、食道がんの早期発見や確定診断が可能なのは、胃内視鏡検査のみです。飲酒・喫煙の習慣がある、少しでもお酒を飲むと顔が赤くなる、逆流性食道炎などが原因で食道粘膜の炎症が続いているといった場合は、食道がんのリスクが高いといえます。これらに該当する場合は、たとえ症状がなくても胃内視鏡検査を定期的に受けるようにしましょう。
機能性ディスペプシア
みぞおちの痛み、胃もたれ、吐き気、膨満感、灼熱感、すぐに満腹になってしまうなどの症状がなかなか治らない状態です。血液検査や内視鏡検査をしても、炎症などの異常はみられません。臓器や器官には異常がないものの、消化機能に何らかの問題がある、または知覚過敏などの影響から、機能性ディスペプシアが引き起こされると考えられています。
急性胃炎
暴飲暴食、解熱鎮痛消炎剤の服用、過度のストレスなどが原因で、胃の粘膜に炎症が起こってしまう病気です。急性的な炎症であることから、突然みぞおち付近や胃に痛みを感じるようになります。吐き気や嘔吐、発熱などを伴うこともよくあります。
慢性胃炎
ピロリ菌の感染などが原因で、胃が慢性的に炎症が起こっている状態です。主な症状としてはみぞおちの痛み、むかつきなどですが、無症状の場合もあります。ゆえに自覚がないまま、進行することもあるため注意が必要です。 進行した場合、萎縮性胃炎を引き起こすこともあり、こうなると胃がんのリスクが高くなってしまいます。それを防ぐためにも、ピロリ菌感染が陽性だった場合は除菌治療を受けましょう。除菌治療が一度で完了しないケースもありますが、うまく進めば胃炎の再発防止に効果的です。
神経性胃炎
神経性胃炎は、ストレスや過労によって引き起こされた自律神経のバランスの乱れが原因で発症します。症状としては、みぞおちの痛みのほか、胸焼け、ネガティブな気分が続く、のどがつかえるなどです。 仕事や人間関係のストレスが発端になるケースはもちろん、近年ではスマートフォンなどの情報端末が常に手元にないと不安やストレスを感じる「テクノ依存症」から神経性胃炎につながる例も報告されています。
胃潰瘍
「消化性潰瘍」とも呼ばれ、胃の粘膜がただれたようになってしまい、みぞおちの痛みを感じるようになります。強いストレスを感じたことが引き金になることも多く、その結果として胃液中の物質が胃を保護している粘膜を消化するようになり、潰瘍ができてしまいます。 胃潰瘍になると、食後にみぞおちのあたりが痛み、食べすぎると痛みが長引く傾向があります。逆に、空腹時にみぞおちのあたりが痛み、食事をとると和らぐという場合は、十二指腸潰瘍が疑われます。 みぞおちの痛みが強くなるほど、胃潰瘍が進行しているのではと思いがちですが、実は痛みと進行度には関連がありません。中には、胃潰瘍にかかっても症状がないケースもあります。こうなると、知らず知らずの間に胃潰瘍が悪化してしまい、胃に孔(あな)が空く「穿孔性潰瘍」になることもあります。穿孔性潰瘍になるとみぞおちに激痛が起こり、つらい思いをする方も多いため、早めの対処が肝心です。
胃・十二指腸潰瘍
炎症などが原因で、胃の粘膜がひどく傷ついてしまった状態が胃・十二指腸潰瘍です。発症すると、みぞおちの辺りに鈍い痛みを感じるようになるほか、胸焼け、げっぷ、吐き気、胃もたれなどがあらわれるようになります。放っておくと潰瘍から出血するようになります。この段階になると、吐血、黒いタール便、貧血から起こるめまい・頻脈・動悸などもみられます。 胃・十二指腸潰瘍は、負担の少ない治療で改善が見込めるため、放置せずに受診するようにしましょう。そのままにしておくと、消化管の内側表面にある粘膜が脱落して、その下の粘膜下層や筋層が露出し、大出血や穿孔を起こすこともあります(腹膜炎)。腹膜炎になると、命にかかわるケースもあるので、注意が必要です。 胃・十二指腸潰瘍の原因として最も多いのは、ピロリ菌感染による慢性的な炎症です。次点で、解熱鎮痛消炎剤の服用が原因で発症に至るケースが多いとされています。薬物療法を続けることで治る病気ですが、ピロリ菌感染陽性の場合には再発しやすいため、ピロリ菌の除菌治療を受けましょう。除菌することで、再発しにくくなります。解熱鎮痛消炎剤の服用が原因の場合は、処方薬の変更などで改善されるでしょう。
胆石症
胆嚢とは、肝臓で作った胆汁を食事のタイミングまで濃縮して溜めておく袋で、この中に石ができてしまった状態が胆石症です。人の身体の中では、食物を消化して栄養を吸収するために、唾液や胃液、膵液といったさまざまな消化酵素を含んだ液を分泌していますが、胆汁もそのひとつです。胆石症になると、食後にみぞおち付近が痛むほか、胸焼けやお腹の張りを感じることもあります。
膵炎
膵臓に炎症が起こっている状態で、炎症が急性的なものだった場合は急性膵炎と呼ばれます。人の身体の中では、食物の消化を助けるための酵素が作られていますが、酵素が過剰に分泌されたり、膵管をスムーズに通れなかったりした場合、膵臓内に溜まってしまいます。また、酵素が異常に活性化すると、膵臓そのものを消化(自己消化)し、炎症を起こすこともあります。この状態こそが膵炎です。 膵炎になると、みぞおちや背中に激しい痛みを感じることがほとんどですが、自己消化が急速に進んでしまう場合もあるので注意が必要です。自己消化が進むと、膵臓のみならず、心臓、肺、肝臓、腎臓なども炎症してしまいます。場合によっては多臓器不全を起こしたり、壊死した部位が細菌感染を起こして重篤な感染症を合併したりすることもあるのです。こうなった場合、命にかかわることもあるため、早急に適切な治療をしなければなりません。
心筋梗塞
心筋梗塞とは、心臓にかかわる病気である狭心症が進んだ状態です。狭心症になると、心臓に血液を送る冠動脈が詰まりかける、または血管が痙攣することで一時的に血管が細くなり、血の巡りが悪くなってしまいます。 ここからさらに進んで心筋梗塞を引き起こした場合、冠動脈が完全に詰まり、心臓の筋肉が壊死してしまいます。心臓の筋肉が壊死するということは、心臓の動きが止まってしまうことを意味します。命にかかわる深刻な病気です。 狭心症または心筋梗塞の代表的な症状としては、重しを乗せられたような強い圧迫を前胸部の広い範囲に感じるというものです。狭心症に比べて、心筋梗塞の方が強い痛みを感じます。そのほかの症状としては、冷や汗、左腕や顎、歯、背中の痛み、みぞおちや胃周辺の痛みがあります。 胸が痛む場合、心臓の病気を疑って受診する人は多いですが、狭心症や心筋梗塞ではみぞおちや胃周辺の痛みしか症状がないという例もあります。よって、胃の病気を疑って受診した結果、狭心症や心筋梗塞だったというケースもあるため、注意が必要です。
胆のう炎・胆管炎
胆のうは、肝臓で作られた胆汁を溜め、胆管を通じて胆汁を十二指腸に送る役割を持っています。右のわき腹に存在し、肝臓にくっつくような位置におさまっています。胆のう炎・胆管炎とは、胆のうや胆管に結石などができ、炎症している状態です。 発症すると、みぞおち周辺や右上腹部、背中が痛むようになり、発熱や吐き気、嘔吐などを伴う例もあります。治療では主に抗生剤の投与や結石の除去が行われますが、状態によっては胆のうを切除する外科手術をしなければならないこともあります。
急性虫垂炎
虫垂とは、右下腹部にある小さな臓器で、大腸の一部です。何らかの原因で虫垂に炎症してしまうのが虫垂炎で、「盲腸(もうちょう)」とも呼ばれます。厳密にいえば、「盲腸」は病気の名前ではなく、虫垂の根元にある大腸の一部分の名前です。 虫垂炎になると、初期ではみぞおちの痛み、むかつきなどの軽い症状があらわれます。しかし、そこから一日程度経つと痛みがお腹の右下辺りに移動し、放置するとお腹が突っ張って歩きにくい、下腹部だけでなくお腹全体に痛みを感じる、腹痛のみならず発熱もみられるといった状態になります。とにかくひどい腹痛が起こるのが特徴で、ひどくなると腹膜炎を引き起こすこともあります。