逆流性食道炎は、胃の中の胃酸や消化物が食道に逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こす疾患です。
本来、胃酸は強い酸性で胃の中だけに存在するものですが、これが食道に上がってくることで胸焼けや咳などの不快な症状が現れます。日本でも近年患者数が増加しており、生活習慣病の一つとして注目されています。
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで引き起こされる病気です。かつては欧米人に多い病気といわれてきましたが、ライフスタイルの欧米化によって日本でも増えています。また、逆流性食道炎は高齢者にも多くみられるため、超高齢化社会である日本で増加傾向にある理由の1つとして考えられます。
以前は比較的少なかった病気ということもあり、不快な症状に悩まされても病気に気付いていない患者さんも少なくありません。
本記事では、消化器の専門医に監修していただき、逆流性食道炎によって起こる症状のセルフチェックと原因別の治療法について解説しています。
目次
食道は、私たちが食べた物をのどから胃へと運び込んでくれる器官です。直径は約2cm程度の管で、壁の厚さは4mm程度しかなく、他の臓器と比べても決して丈夫な器官ではありません。
通常、食道の下部にある筋肉(下部食道括約筋:かぶしょくどうかつやくきん)は食べたものを胃に送るときだけ緩むようにできています。この筋肉の働きによって、胃からの逆流を防いでいます。
逆流性食道炎という病気は、この筋肉が何らかの原因で飲食時以外でも緩んで開いてしまうことで起こる病気です。胃酸や未消化物が胃から食道へと逆流してしまうことで、食道は炎症を起こしてしまいます。
逆流性食道炎は命にかかわるほどの疾患ではないものの、症状によっては日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。また、直接的な影響はなくとも、命の危険につながる誤嚥性肺炎を誘発することもあるため、決して軽視はできません。
逆流性食道炎は正しく対処すれば、治る病気です。病気のことを理解することで、病気の発症を未然に防ぐことができます。また、現在症状にお困りの方でも適切な治療をすれば症状は軽減し、再発を防ぐことができます。
自己判断で軽視せず、ご自身の体としっかり向き合いましょう。
主に胃酸の逆流により、胸焼けや呑酸などの不快症状がみられたり、食道粘膜のただれ(食道炎)が内視鏡検査によって確認できる病気の総称を、胃食道逆流症といいます。英語では「Gastro Esophageal Reflux Disease」と表記され、医療の現場ではその頭文字をとってGERD(ガード)とも呼ばれます。
胃食道逆流症は、食道に
また、
など、いくつかに分類されます。
逆流性食道炎も、この胃食道逆流症の1つです。正式には、びらん性胃食道逆流症(びらん性GERD)といいます。この「びらん」は、「ただれ」という意味です。食道に炎症が起こるタイプなので、「びらん性」と表記します。この場合、自覚症状の有無は関係ありません。
また、逆に検査で食道粘膜にただれがみられなくても、胸やけや呑酸などの自覚症状がある場合もあります。このタイプは、非びらん性胃食道逆流症といいます。
逆流性食道炎そのものは、命に関わる病気ではありません。また、軽症であれば自然に治ることもあります。実際、約3割は自然治癒していると考えられています。そのため、むやみに心配する必要はありません。
しかし、胸焼けなどの不快な症状が続けば、日常生活への影響も軽視できません。
といったような状態が続けば、生活の質は低下していきます。
逆流性食道炎を治療しないまま重症化すると、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。
炎症による傷が食道壁の深くまで及ぶと食道潰瘍が起こります。食道壁の血管が傷ついて出血が起こると、口から血を吐いたり(吐血)、黒っぽい便が出たりすることもあります。
また、まれに食道壁に孔があいてしまうこと(穿孔)があります。潰瘍を繰り返すと、傷痕がひきつれを起こして、食道の内腔が狭くなる(狭窄)こともあります。
逆流性食道炎が持続すると、食道の下部の粘膜が胃の粘膜のような組織に変化することがあります。その状態が「バレット食道」と呼ばれる病態です。食道がんの一種が起こりやすいといます。
逆流性食道炎が見つかったら、そのままにしないことが大切です。
逆流性食道炎の代表的な症状は、
です。
そのほか、さまざまな自覚症状があらわれる場合がありますので、早めに受診しましょう。
とくに胸を締めつけられるような痛みが出たら要注意です。胸を締めつける症状は逆流性食道炎以外にも、狭心症・心筋梗塞をはじめとする心臓病や、血管の病気などの可能性も考えられます。
そのほか、起こりやすい症状については、下記で解説します。
胃酸が食道に逆流すると、食道の粘膜が刺激されて
などの代表的な症状が出ます。
食べすぎ・飲み過ぎなどで一時的に胸焼けや呑酸の症状を経験される方は多いと思いますが、胃酸が食道に逆流しやすい状況がある方は、このような不快症状が繰り返し起こります。
胸やけ・呑酸は、人によって症状の感じ方や表現がさまざまなので、そのほかの症状と合わせて下記で詳しく解説します。
胸やけの感じ方は人それぞれですが、
など、このような症状を訴える方が多いです。
胸やけは食後に起こることが多く、姿勢を変えたときに症状が強まることがあります。
このように人によってその症状が微妙に異なりますので、受診した際は感じている症状をできるだけ具体的に医師へ伝えるようにしましょう。
呑酸は何かの拍子に酸っぱいものが胸からのどの方へ上がってくるものです。
など、このような症状を訴える方が多いです。
食後に起こりやすく、胸やけと呑酸の両方の症状が出ている場合は、胃酸の逆流が起こっている可能性が高いです。
また、同様に
など、不快なげっぷの症状が起こることがあります。
げっぷは胃のなかのガスが口から排出される現象です。
食べ物と一緒に飲み込んだ空気を、吐き出そうとしてげっぷが起こることもありますが、このげっぷは問題はありません。一方、胃の上の方にたまった胃液が一緒に逆流して起こる場合があるため、注意が必要です。
胃の病気と区別がつきにくい症状が起こる場合もあります。
など、食道炎による「胸やけ」の状態は、これらの胃の症状にも似ているため、受診時に胃の不快感を訴える方も多いです。
そのため、
などの「胃の病気」との区別もとても重要です。
食道の下端は、胸の一番下とお腹の上の境目あたりに位置します。
この境目が胃酸によって傷つけられると、胸だけではなくお腹の上の部分(上腹部)に痛みを感じる方もいらっしゃいます。
といった症状は、胃酸の分泌量が多くなって胃より下の十二指腸にまで流入し、上腹部の痛みやもたれ感が現れている可能性があります。
「激しい胸痛が起こり、心臓の病気ではないかと受診したら、逆流性食道炎だった」というケースがあります。
など、特に高齢者の方は、逆流性食道炎の典型的な症状(胸やけ・呑酸)が現れにくくなり、これらのような胸の痛みを感じる傾向があります。中には「背中の痛み」と感じる方もいらっしゃいます。
一見、食道や胃とは関係なさそうな症状が、実は胃酸の逆流によって起こっていることは珍しくありません。自覚症状だけで区別するのは困難なので、医療機関を受診して見極めてもらう必要があります。
胃酸が食道の上部まで逆流すると、のどの咽頭(いんとう)という部分に炎症が起こることがあります。
など、のどに何らかの症状が現れます。
また、
といった場合は、胃酸がのどの方まで流れて、声帯が障害されている可能性もあります。
慢性的に「声がかすれる」という方は、胃酸の逆流を疑って一度検査することをお勧めします。
さらに、これらののどの違和感や声がれは、
でもみられる場合があります。決して自己判断で軽視せずに、気になる症状は早めに医療機関を受診しましょう。
逆流性食道炎の症状が、呼吸器の病気と思われているケースもあります。
など
逆流した胃酸を気管に吸い込んでしまったり、気管の入り口となる咽頭(いんとう)に炎症が起こってしまったりすることで咳がでることがあります。また、神経への刺激などが考えられます。
食道への刺激が、時に耳の痛みとして感じられることがあります。
などを訴える方がいらっしゃいます。
また、中耳炎などの耳の病気にも、胃酸の逆流が関与している場合があります。
睡眠障害は、逆流性食道炎でよくみられる合併症の一つです。
など、横になると胃液が逆流しやすくなるため、不快な症状が現れると寝つきが悪くなります。
また強い症状が出ておらず、自覚症状がない場合でも、胃酸が逆流するたびにのみ下そうという反応が起こってしまうため、眠りが浅くなります。
しゃっくりは横隔膜がけいれんしている状態です。
一時的なものは健康の人にも起こるため心配入りませんが、
など、逆流性食道炎をはじめ何らかの病気の症状として起こることがあります。
胃酸の逆流が関連する症状についての問診票として、逆流性食道炎などの診断や治療後の効果を確認する場合に用いられる『Fスケール問診票』があります。胃食道逆流症(GERD)の症状に関する12の質問に回答し、その頻度を点数化することで、診断の参考になります。
あなたは以下にあげる症状がありますか? もし該当する項目がありましたら、その程度に合わせたチェック欄を押してお答えください。
引用文献
Kusano M. et al.: J Gastroenterol., 39,888(2004)
※ 上記文献の内容をもとに、表現を一部改変しています。
総合計点数が【8点以上】なら、胃酸の逆流が原因で症状が起こっている可能性が考えられます。不快な症状が続いている方は、かかりつけ医や消化器内科などを受診して相談してください。
食道が炎症を起こす原因は、逆流する胃液に含まれる強い酸(胃酸)です。では、なぜ胃酸が逆流してしまうのでしょうか?
胃酸の逆流を引き起こす原因は、
上記のように、大きく3つの要因があります。
主にいずれかの原因によって胃酸が食道に逆流しやすくなり、胸やけや呑酸などの症状が慢性的に起こることがあります。
食道と胃の境目には下部食道括約筋という筋肉があります。食事をすると胃酸が分泌されますが、本来はこの下部食道括約筋や横隔膜(ドーム状の薄い筋肉でできた膜)などがしっかりと締まり、閉じられているため、胃液が食道へ逆流することはありません。
しかし、食道の筋肉が衰えたり、横隔膜が緩んで胃がはみ出たりすると、食道と胃の境目が閉じずに胃酸が逆流しやすくなります。
胃酸は胃の中で分泌される胃液に含まれていますが、胃酸の分泌量が多くなると、逆流する胃酸の量も増えてしまいます。
胃酸の分泌量が多くなってしまう要因については、
などがあげられます。
ストレスを抱えると食道や胃の粘膜の感受性が強くなり、逆流性食道炎や胃炎・胃潰瘍など、胃腸の病気を引き起こす要因になります。
また、胃酸の分泌は自律神経でコントロールされているため、過度なストレスによって自律神経が乱れてしまうと、胃酸の分泌量や、胃酸の分泌のタイミングが崩れてしまい逆流性食道炎の発症の引き金となります。
以上、この3つの大きな要因に該当する方は、下記の「逆流性食道炎にかかりやすい人」の項でも詳しく解説します。
加齢によって筋力が衰えると、逆流性食道炎を起こしやすくなります。胃液の逆流を防止する下部食道括約筋も緩みやすくなり、のみ下す力など食道の運動機能も低下するため、特に胃酸が多くなくても逆流しやすく、食道に停滞しやすくなります。さらに、酸を中和させる唾液の分泌も減る傾向があります。
逆流性食道炎は高齢者に多い病態でしたが、若者や中高年にも増えています。その要因として大きいのが、食生活の乱れです。揚げ物などの脂っこいものを食べすぎると、胃での滞留時間が長くなり、胃酸の分泌量を増やします。夜遅くのドカ食いや早食いにも要注意です。
また、刺激物をはじめ、炭酸飲料、アルコール類、カフェインを含むコーヒーなども、胃酸の分泌を増やす要因となります。
過度なストレスを抱えると、食道粘膜の感受性が強くなり、逆流性食道炎の原因となります。
また、ストレスは暴飲暴食のきっかけになることも多く、人によっては辛い料理や甘いお菓子などの刺激物を欲したりすることも多く見受けられます。ストレスを食生活に持ち込むと、胃酸を増やす要因となるので注意が必要です。
肥満傾向のある方で特にお腹が出ている男性は、腹部の内臓脂肪によって胃が圧迫されて、胃液の逆流が起こりやすくなります。
一方、痩せすぎの方は胃下垂(胃が正常な位置より常に下がっている状態)が多く、食べたものを胃へと送り出すのが遅れることで、胃液の逆流や胸やけの症状を招きやすくなります。
腹部の大きい妊婦さんも、子宮の容積が増すことで腹圧が高まり、胃液の逆流が起こりやすくなります。
猫背や前かがみの姿勢は、腹圧がかかって胃が圧迫され、胃液の逆流が起こりやすくなります。
とくに高齢者では、骨粗鬆症があって背中が丸くなると、常にそうした姿勢が続くことになります。
ピロリ菌に感染していると、胃の粘膜が荒れて胃酸の分泌が減り、逆流が起こりにくくなっています。また、逆流したとしても酸度が低いので、炎症は起こりにくい状態です。このピロリ菌感染は胃潰瘍や胃がんの発症につながることから、近年では胃の病気を予防するためにピロリ菌の除菌治療をする方が増えています。
ところが、ピロリ菌の除菌治療によって菌がいなくなると、胃酸の分泌が活発になり、逆流性食道炎を発症しやすくなります。
食道裂孔ヘルニアは、胃の上部が胸部に入り込む症状(食道が通るために横隔膜に開いている孔が緩んで、胃が横隔膜の上にはみ出した状態)です。食道裂孔ヘルニアがあると、逆流を防ぐ下部食道括約筋が働かなくなります。
など、ほかの病気が原因で逆流性食道炎が起こりやすくなることがあります。
骨粗鬆症は、骨がスカスカになって骨折しやすくなる病気です。背骨が潰れて変形し、背中が丸まったように姿勢も悪くなります。それによって胃が圧迫されて胃酸の逆流を招きます。
糖尿病の合併症の1つである糖尿病性神経障害は、糖尿病によって神経障害が起こる病態です。末梢神経が障害されると、食道の蠕動(ぜんどう)運動機能が低下し、逆流したものを胃に戻すことが難しくなります。
膠原病(こうげんびょう)の1つである全身性強皮症でも同様に、食道の蠕動運動の低下がみられます。また、シューグレン症候群では唾液の分泌が減ることで食道炎が起こりやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群の場合は、睡眠時の呼吸が停止する際に胸部の圧が低下するため、胃液の逆流を起こしやすいといわれています。
自覚症状があって内科などを受診した場合、まずは問診で「どのような症状が、どんなときに起こるのか」を確認します。
例えば、
など、症状について詳しい問診が行われます。
問診の結果、胸焼けや酸っぱいものが込み上げてくる呑酸など、典型的な症状がみられたら、胃食道逆流症(逆流性食道炎、または非びらん性胃食道逆流症)として治療を始めることができます。
一方、咳やのどの異常、胸痛など、食道以外の症状が目立つ場合は、症状のみでの診断は難しくなります。
そのような場合は、胃酸の分泌を強力に抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)を試しに服用し、症状の変化を確認します。この薬を服用して症状が消えたら、胃酸の逆流が起きている(胃食道逆流症)と診断できます。
症状が消えない場合は、胃食道逆流症ではないと判断し、ほかの病気の可能性を疑います。
逆流性食道炎の治療をはじめるために必ず行うというわけではありませんが、食道がんや胃がんなどの病気がないことを確認すためにも、内視鏡検査(胃カメラ:上部消化器官内視鏡検査)が有用と考えられています。
逆流症状があり、内視鏡検査で食道の粘膜に炎症が確認されれば、逆流性食道炎と確定診断ができます。
内視鏡検査では食道の炎症の状態(粘膜の発赤、ただれ、潰瘍)や重症度だけでなく、逆流が起こりやすい原因となる食道裂孔ヘルニアや食道がんが発生しやすい状態といわれているバレット食道の有無も確認できます。
※ 非びらん性胃食道炎(食道粘膜にただれがみられないタイプ)は、内視鏡検査を行っても異常はみられません。
内視鏡検査で食道の炎症の程度(進行度)を調べる際は、6段階で分類されます。(改訂 ロサンゼルス分類)
以下の内視鏡グレードは、軽い方から順に【 N → M → A → B → C → D 】 の6段階で評価します。
グレードN | 症状があっても、内視鏡で見て特に変化を認めないもの |
---|---|
グレードM | 粘膜の障害はないが、色調が変化しているもの |
グレードA | 長径5mmを超えない粘膜障害、粘膜ひだに限られるもの |
グレードB | 最低1ヶ所の粘膜障害が長径5mm以上あるが、別の粘膜障害とは連続していないもの |
グレードC | 最低1ヶ所の粘膜障害が複数のひだに連続して広がっているが、全周性(内壁を1周)はしていないもの |
グレードD | 全周性の粘膜障害があるもの |
世界的には、A〜Dの4段階に分類していますが、欧米に比べて軽症の患者さんが多い日本では、N(ノーマル=正常)、M(ミニマル=最小限)というより軽度の分類を加えて、計6段階にしています。
逆流性食道炎の治療は、
この2つを中心に行われます。
ただし、大きな食道裂孔ヘルニアがあるためなどで、逆流が強くなり、お薬と生活習慣の改善だけでは十分な治療効果が得られない場合もあります。
このような重症の食道炎の場合は、手術が検討されることもあります。
薬物治療の目的は、逆流そのものを抑えるのではなく
など、逆流による食道へのダメージを減らすためにあります。患者さんそれぞれの症状に合わせて、適切な薬が処方されます。
この中でも、薬物治療の中心となるのは「胃酸の分泌を抑える薬」です。
逆流性食道炎の症状は、逆流した胃酸によって食道粘膜が傷ついて起こっているので、治療には逆流する胃酸を減らすために、胃酸の分泌を抑える薬が使われます。現在、標準的なお薬となっているのは、プロトンポンプ阻害薬です。
初期治療としてプロトンポンプ阻害薬を服用し、自覚症状がなくなったり粘膜の傷が治ったことが確認できたりしたら、その後の管理を検討していきます。一方で、治療効果が不十分だった場合は、お薬の量を増やしたり、補助的な作用のお薬を併用したりするなど見直しを図っていきます。
お薬は症状の抑制に大変効果的ですが、一度症状が治ってもお薬を飲まなくなるとほとんどの人は再発してしまいます。
食道粘膜の炎症が治るまで、一定期間はしっかりとお薬を飲み続けることが大切です。お薬を飲み始めて胸やけなどの自覚症状が消えても、自己判断ですぐにやめることのないようにしましょう。
逆流性食道炎の治療では薬物療法が行われますが、残念ながら今のところは飲めば逆流が起こらなくなるという薬はありません。そのため、薬の服用と合わせて、逆流を招いている生活習慣を改善することがとても重要です。治療効果を高め、症状の改善につながります。また、症状を引き起こしにくくするためにはストレス対策も大切です。
主な取り組みとしては
などがあげられます。
逆流性食道炎の症状改善、そして予防に効果的な生活習慣の見直しについては、以下の「逆流性食道炎の予防」の項で紹介します。
逆流性食道炎を予防するため、また治療後の再発を防ぐためには、薬物療法等の対処のみでは不十分です。
など、生活習慣の改善を図ります。
食道や胃に優しい食習慣を心がけることが何よりも大切です。
これらの食事・食品を控えるのが基本です。
胸やけを起こしやすい方は、脂肪分の多いものや刺激の強いものに注意してください。
とくにすでに炎症が見られる場合には、避けるようにします。
また、胃酸の逆流を防ぐためには、
この3つがとても大切です。
とくに、夜遅くお腹いっぱい食べて、食後すぐ寝るといった食生活を続けていると、胃腸に大きな負担をかけるので要注意です。
何を食べると症状が出るかは患者さんによっても異なりますので、自分が思い当たる食品を選別しながら、避けられるように心がけることも大切です。
アルコール飲料は、胃酸の分泌を盛んにします。分泌される胃酸が多すぎると食道に逆流しやすくなるため注意が必要です。また、お酒を大量に飲むと、食道と胃の境目が緩みやすくなり、これもまた逆流のリスクを高めます。多量の飲酒は食道がんなどの危険因子であるため、飲み過ぎは禁物です。
以上のことに注意しながら、調子の良いときにたしなむ程度で楽しみましょう。
ビールなどの含まれる炭酸ガスも、胃の内圧を高めて逆流を招きやすい状態を作ります。お酒に限らず、炭酸飲料も同様にげっぷが出やすくなり、胃酸の逆流を招く要因になるため飲み過ぎには要注意です。
タバコを吸っている人は吸っていない人に比べて胃酸の逆流を招きやすく、胸やけなどを起こしやすいと考えられています。
胃酸の分泌量が多くなり、食道の胃の境目の締まりがよくないといわれています。また、唾液の分泌量が減少しやすいのも胸やけを誘発する要因となります。
喫煙は逆流性食道炎に限らず、食道がん、肺がんをはじめ、さまざまな病気の発症リスクを高めます。
逆流性食道炎は、胃の中の胃酸や消化物が食道に逆流することで、食道の粘膜が炎症を起こす疾患です。
本来、胃酸は強い酸性で胃の中だけに存在するものですが、これが食道に上がってくることで胸焼けや咳などの不快な症状が現れます。日本でも近年患者数が増加しており、生活習慣病の一つとして注目されています。
代表的な症状は胸やけ、呑酸です。
代表的な症状は胸やけ(胸のあたりが焼けつくように熱くなる感覚)や、呑酸(口の中に酸っぱい液体が上がってくる感じ)です。そのほかにも、慢性的な咳、喉の違和感、食後の胃もたれ、声のかすれ、寝ているときの咳などがあり、風邪や喘息と間違われることもあります。
内科や消化器内科が適しています。
診察では問診のほか、必要に応じて胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)を行い、食道の粘膜の状態を確認します。長引く症状や再発を繰り返す場合は、専門的な検査が早期発見につながります。
主な原因は、下部食道括約筋(LES)の機能低下によって胃酸の逆流が起こりやすくなることです。
さらに、過食、脂肪の多い食事、加齢、肥満、妊娠、猫背、便秘、タバコ、アルコール、ストレスなど、多くの生活習慣や身体的要因が関与します。
治療は、胃酸の分泌を抑える薬(PPIやH2ブロッカー)が中心で、これにより食道の炎症を鎮めます。
さらに、生活習慣の見直し(食後すぐに横にならない、規則正しい食生活、減量)が症状の軽減に重要です。症状や病変の程度により治療期間は異なりますが、再発予防を含めた継続的なケアが必要です。
はい、食事内容と食べ方の両方が大切です。
脂っこいものや甘いもの、炭酸飲料、チョコレート、カフェイン、アルコール、柑橘類、トマト、香辛料などは胃酸の分泌を促進しやすく、避けた方が良い食品です。ゆっくりよく噛んで食べる、腹八分目を守る、食後2〜3時間は横にならないことも重要です。
立っているときには重力によって胃酸が食道に戻りにくくなっていますが、横になると重力の影響がなくなるため胃酸が逆流しやすくなります。
特に食後すぐに横になると症状が強くなるため、就寝前の食事は控えめにし、枕を高くする、ベッドの上半身を少し起こすなどの工夫が効果的です。
はい。
ストレスや自律神経の乱れによって、胃の動きが悪くなったり、胃酸の分泌が過剰になったりすることがあります。過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアなど、他の胃腸障害と併発することも多いため、心身のバランスを保つことが大切です。ストレスをためない生活や、十分な睡眠も治療の一環と考えましょう。
非常に再発しやすい病気です。
薬をやめた直後に症状が戻ってしまう人も少なくありません。再発を防ぐには、生活習慣を根本から見直すことと、医師の指示に従って薬を適切に使用することが重要です。特に長期的に胃酸が逆流していると、食道がんのリスクが高まることもあるため注意が必要です。
合併症を引き起こす可能性があります。
軽度な炎症の段階であれば治療により改善しますが、長期間放置すると食道粘膜にびらんや潰瘍ができ、出血、狭窄、嚥下障害、バレット食道といった合併症を引き起こす可能性があります。特にバレット食道は、将来的に食道腺がんに進展するリスクもあり、適切な管理が不可欠です。
荒井駅前のぐち内科クリニック野口 哲也 先生
宮城県仙台市の「荒井駅前のぐち内科クリニック」 院長の野口です。
私は岩手県盛岡市で大学生活を送り、東北労災病院内科、東北大学消化器内科での消化器病学の修練、対がん協会での胃・大腸がん検診活動、そして、宮城県立がんセンターでの消化器癌に対するがん治療に従事してまいりました。消化器内科の専門家として診断から治療、特に内視鏡治療を行ってきました。最新の治療や全国的な治験や研究にも参加してきました。
これまで地域医療にも携わり、高血圧や糖尿病、肺炎や感冒、インフルエンザなど、様々な病で通院してくる患者さんの診療にも従事してまいりました。震災復興が進む、ここ荒井地区において、これまでの28年間の勤務医としての経験を活かし、地域の皆様の健康を支える医療、身近なかかりつけ医を目指し、少しでも貢献させて頂ければ思っております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
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