症状の持続時間や出方は病型や状態によって異なります。
安静にしても改善しない胸部症状、悪化する症状、冷汗や息苦しさを伴う症状がある場合は、心筋梗塞などの可能性もあるため119番を検討してください。
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の血流が一時的に不足し、心筋が酸素不足(心筋虚血)になることで、胸の痛みや圧迫感などが起こる病気です。
動脈硬化による狭窄が背景にある場合のほか、冠動脈が一時的に強く収縮する冠攣縮によって起こる場合があります。症状の出方や緊急度は病型によって異なり、不安定狭心症が疑われる場合は速やかな医療機関での評価が必要です。
本記事では循環器専門の医師監修のもと、狭心症の症状・原因・種類・検査・治療と、救急受診を検討すべき目安について解説します。
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目次

心臓の筋肉に血液を送っているのは冠動脈とよばれる血管です。この冠動脈に何らかの障害が起こると、血管の内腔が狭くなり、心臓に送られる血液が不足します。狭心症は、このように心筋が酸素不足(心筋虚血)に陥る病態です。
狭心症の背景には、加齢や動脈硬化(血管が硬くなり弾力性が失われた状態)が関わっていることが多く、循環器疾患の中でも注意が必要な病気の一つです。若い世代でも発症することがあり、年齢だけで判断せず、症状がある場合は循環器内科への相談を検討してください。
治療により症状の軽減や再発・心筋梗塞リスクの低減を目指しますが、治療方針や経過には個人差があります。病気の悪化や再発を防ぐためには、生活習慣の改善も重要な要素の一つです。
狭心症は冠動脈の血流が一時的に不足して心筋が酸素不足になる状態です。一部では、不安定狭心症のように冠動脈内のプラークが破綻して血栓ができ、血流が急激に悪化することがあります。血管が完全に閉塞すると、心筋梗塞に至るおそれがあります。
心筋梗塞は心筋の組織が壊死してしまう状態で、緊急治療が必要な病気です。狭心症のすべてが心筋梗塞に進むわけではありませんが、病型によっては急性冠症候群につながることがあるため、症状の変化には注意が必要です[10]。

狭心症の代表的な症状は、胸の痛み・圧迫感・締め付け感、および息切れです。動悸を伴うこともありますが、動悸自体は狭心症以外の原因でも起こる非特異的な症状であり、動悸だけで狭心症と判断することはできません。
動脈硬化などにより冠動脈が狭くなると、運動時に必要となる血流を十分に増やせず、心筋が酸素不足になることで症状が現れることがあります。運動後や興奮したときに胸の締め付けを感じるケースは、こうした仕組みによるものです。
一方、睡眠中や安静時にもかかわらず、胸の痛みや締め付けるような圧迫感を覚える方もいます。しばらくすると症状が落ち着くことが多いため、そのまま放置してしまう方も少なくありませんが、自己判断せず医療機関に相談することが大切です。
狭心症では、胸の症状よりも先に、肩・腕・あご・背中の痛みや、肩こり、のどの詰まり感、胸焼け・胃痛、歯痛といった形で症状が現れることもあります(放散痛)。
そのため、心臓の異常だと気づかず、整形外科や歯科を受診する方もいます。胸部の症状に加えてこうした痛みや不快感がある場合は、循環器内科への相談も検討してください。
心臓の血管が狭くなったり詰まったりして実際に血流不足が起こっているにもかかわらず、自覚症状がないケースもあります。これを「無症候性心筋虚血」といいます。
無症候性心筋虚血は、もともと狭心症のある方や心筋梗塞の治療後の方に起こりやすいと考えられています。また、これまで発作を起こしたことがない方でも、糖尿病のある方や高齢の方に多いことがわかっています。
自覚症状の有無にかかわらず、健康診断や特定健康診査などの定期検診を受け、定期的に自身の体と向き合うことが大切です。

以下のような症状がある場合は、心筋梗塞など緊急性の高い病気の可能性があります。自分で運転して受診しようとせず、ためらわずに119番へ連絡してください。
症状が軽くなっても、初めての胸部症状や繰り返す症状がある場合は、早めに循環器内科へ相談してください。なお、ニトログリセリンなどの発作時の薬は、処方を受けている方に限り、担当医・薬剤師からの個別の指示に従って使用してください。
狭心症は、発症の仕組みによって次の3つに大別されます。
このうち不安定狭心症は急性冠症候群に分類され、安定狭心症・冠攣縮性狭心症とは緊急度が異なります。安定狭心症は動脈硬化を背景として労作時に症状が出やすく、冠攣縮性狭心症は血管の一時的な収縮(攣縮)によって、動脈硬化がなくても発症することがあります。
安定狭心症は、動脈硬化による冠動脈の狭窄を背景として起こる代表的な病型の一つです。
冠動脈の壁にプラーク(血管内膜にコレステロールなどが蓄積してできた血管のこぶ)ができ、内腔が狭くなっている点は不安定狭心症と共通しますが、プラーク内の脂質成分が少なく、表面を覆う被膜が厚く破れにくいため、比較的安定した状態とされています。
運動時や興奮時など、心筋がより多くの酸素を必要とする場面で血流を十分に増やせず、症状が現れやすいことから、労作性狭心症ともよばれます。安静にすると症状が落ち着く例がよくみられますが、自己判断せず医師の指示に沿って行動してください。
不安定狭心症の主な背景には動脈硬化があります。冠動脈の壁にできたプラークの被膜が薄く不安定な場合、何らかのきっかけでプラークが破綻し、急速に血栓が形成されることがあります。血栓は溶けてはできるのを繰り返すため、症状の現れ方は一定ではありません。
プラークの状態や血栓形成によっては、狭窄の程度だけではリスクを十分に判断できないことがあり、プラークが安定しているかどうかを評価することが診断上重要とされています[10]。不安定狭心症と診断された場合は、速やかな医療機関での評価・治療が必要です。
冠攣縮性狭心症は、冠動脈が一時的に強く収縮(攣縮)して血流が低下することで起こります。動脈硬化が関与する場合もありますが、プラークの有無にかかわらず攣縮は起こり得ます。自律神経の働きの乱れや血管内皮細胞の機能低下との関連が考えられていますが、詳しい機序は解明されていません。
夜間から早朝にかけて、安静時に症状が出ることがあります。ただし、症状の時間帯だけで診断できるわけではなく、発作時の心電図変化、症状の経過、ホルター心電図(24時間心電図)、必要に応じたカテーテル検査中の薬剤負荷試験などを組み合わせて評価します[5][6]。
発作の誘因として、喫煙、飲酒、寒冷刺激、過労やストレスなどが関与することがあります[5]。禁煙や生活リズムの調整を含め、個別の誘因については担当医と相談してください。
狭心症の多くは動脈硬化を背景として起こります。動脈硬化を進行させる主な危険因子として、次のようなものが挙げられます。
狭心症そのものが直接遺伝するわけではありませんが、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの体質は遺伝的な影響を受けることがあるとされています。血縁者に心臓病の既往がある方は、定期的な検診を心がけるとよいでしょう。危険因子に心当たりがある場合は、自己判断で様子をみるのではなく、かかりつけ医と相談しながら管理を進めることが大切です。
CCS分類は、カナダ心臓血管協会(Canadian Cardiovascular Society)が定めた重症度の指標です。自覚症状に基づいて分類されており、狭心症の患者を対象としています。
CCS分類では、軽度の【Ⅰ度】から重度の【Ⅳ度】まで4段階に分けられます。重症度が高いほど日常生活に支障をきたしやすくなります。
| Ⅰ度 | 日常生活では症状が起こらないが、仕事やレクリエーションなどを激しく・急に・長時間行ったときなどに発作が起こる。 |
|---|---|
| Ⅱ度 | 日常生活にやや支障が出る。急いで歩いたり階段や坂道を登ったりしたとき、食後・ストレスを感じた日・気温が低い日・風が強い日・起床後2時間以内のいずれかのタイミングで歩いたり階段を登ったりしたとき、普段と変わらないペースで100〜200m以上歩いたり階段を2段分以上登ったりしたときなどに発作が起こる。 |
| Ⅲ度 | 日常生活が制限される。普段と変わらないペースで100〜200m歩いたり、階段を2段まで登ったりしたときなどに発作が起こる。 |
| Ⅳ度 | 日常活動すべてにおいて支障が出てしまい、安静にしていても発作が起こる。 |

狭心症が疑われる場合は、症状の出方や危険因子を確認したうえで、安静時心電図、血液検査、心エコー検査などを行います。必要に応じて、運動負荷心電図、冠動脈CT、心筋血流SPECTなどの非侵襲的検査を検討します。
より詳しい評価や治療方針の決定が必要な場合には、カテーテルを用いる冠動脈造影検査を行うことがあります。検査の種類・順序は、症状、基礎疾患、運動能力、腎機能、検査前のリスク評価などによって異なります[1]。
まずは問診によって症状の特徴や誘因、危険因子を確認し、狭心症のタイプを見極めます。あわせて安静時心電図、血液検査、心エコー検査などで心臓の状態を評価します。
十分な運動が可能で、心電図による虚血評価が可能と判断された場合は、まず運動負荷心電図でリスク評価を行います。リスクが低い場合は経過観察となることがあります。
運動負荷心電図の結果が中等度リスクや判定不能の場合、あるいは十分な運動ができない・心電図での評価が難しいと判断された場合には、冠動脈CT検査や心筋血流SPECT検査などが検討されます。これらは主に体への負担が少ない非侵襲的検査です。
運動負荷心電図や冠動脈CT・心筋血流SPECTなどで高リスクや異常が示唆された場合は、冠動脈造影(CAG)検査が検討されます。冠動脈造影はカテーテルを用いる侵襲的検査であり、他の非侵襲的検査とは体への負担が異なります。検査の必要性やリスクについては、担当医から十分な説明を受けてください。
冠攣縮性狭心症は、安静時(もしくは安静時と労作時)に発作が起こることが特徴です。そのため、薬剤による誘発試験や、ホルター心電図(24時間心電図)による発作出現時の心電図計測などを組み合わせて診断します。
狭心症の種類や病態の進行度・重症度によって、薬物療法、カテーテル治療、外科治療などが検討されます。
治療の基本として、動脈硬化を進行させる危険因子の管理と生活習慣の改善が重視されます。
高血圧、脂質異常症、糖尿病などの基礎疾患がある方は、それらの治療・管理を継続することが動脈硬化の進行を防ぎ、狭心症の管理につながります。自己判断で生活を大きく変えるのではなく、かかりつけ医と相談しながら進めてください。
薬物療法は基本的な治療法の一つで、主に冠動脈の狭窄が深刻でない場合に用いられます。発作をコントロールし日常生活への支障を抑えることを目的に、発作を鎮める薬や予防する薬が処方されます。また、心筋梗塞の予防を目的として、血栓形成や動脈硬化の進展を防ぐ薬が使われることもあります。
薬物療法を行っても発作のコントロールが難しい場合や、心筋梗塞のリスクが高いと判断される場合は、カテーテル治療や外科治療を検討します。
カテーテル治療は、血管に細い管(カテーテル)を入れて内側から冠動脈の狭窄部分を広げ、血流を改善する治療です。
カテーテル治療後も再発を繰り返す場合や、カテーテル治療で狭窄の状態を十分に改善できない場合には、外科治療として冠動脈バイパス術が検討されます。狭窄部分をまたぐように、大動脈から冠動脈の遠位部へ別の血管をつなぎ、血液の通り道を作ることで血流を保つ手術です。
病変の部位・数・重症度、全身状態などを踏まえて、カテーテル治療または冠動脈バイパス術を検討します。どちらの治療が適しているかは個々の状態によって異なるため、担当医とよく相談してください。
狭心症の多くは動脈硬化が背景にあるため、動脈硬化を進行させないための生活習慣が、再発や悪化の予防につながります。すでに発症している方にとっても、危険因子の管理を続けることが重要です。
特に冠攣縮性狭心症では、喫煙、睡眠不足、ストレス、過度の飲酒、寒冷刺激などが発作の誘因として関与することがあります。生活習慣を見直すことは、発作の予防に役立つ対策の一つです。
健診で危険因子を把握・管理することは重要です。ただし、症状がある場合は健診結果を待たず受診してください。無症候性心筋虚血のように自覚症状がないまま進行するケースもあるため、症状の有無にかかわらず定期検診を受けることも大切です。
胸の痛み、圧迫感、締め付け感、息切れなどが代表的です。
肩・腕・あご・背中・みぞおちの痛みや不快感として現れることもあります。症状だけで診断はできないため、胸部症状がある場合は医療機関へ相談してください。
症状の持続時間や出方は病型や状態によって異なります。
安静にしても改善しない胸部症状、悪化する症状、冷汗や息苦しさを伴う症状がある場合は、心筋梗塞などの可能性もあるため119番を検討してください。
胸痛は狭心症以外の原因でも起こるため、症状だけで判断することはできません。
逆流性食道炎、筋骨格性の痛み、呼吸器疾患などでも胸痛は起こります。特に労作時の胸部圧迫感や、冷汗・息苦しさを伴う症状がある場合は注意が必要です。
狭心症は血流が一時的に不足する状態、心筋梗塞は血管が完全に閉塞し心筋が壊死する状態です。
心筋梗塞は緊急治療が必要な病気です。
基本は循環器内科です。
強い胸痛や圧迫感、冷汗、息苦しさ、意識が遠のく感じがある場合は、外来受診を待たず119番を検討してください。
問診、心電図、血液検査、心エコー検査などを基本に、必要に応じて運動負荷心電図、冠動脈CT、心筋血流検査、冠動脈造影検査を行います。
検査は症状やリスクに応じて選択されます。
病型・重症度・治療状況によって異なります。
自己判断で運動を始めたり中止したりせず、担当医に運動の可否や強度を確認してください。
ストレスや過労、睡眠不足なども発作の誘因として関与することがあります。
禁煙や生活リズムの調整を含め、個別の誘因について担当医と相談しましょう。

さいとう内科・循環器内科 はるかぜ医院齊藤 秀典 先生
私は北上市の総合病院に2009年に赴任し、最初の13年間は循環器内科、後半の2年半は緩和ケア科で勤務させていただきました。地元の病院で地域貢献できることは楽しく、このまま勤務医として医師人生を送っていこうと考えていましたが、50代半ばとなり考え方や体力面なども変わってきて、今までとは別の形での地域貢献を考えクリニック開院にいたりました。
私は、健康は自分への投資と考えています。今から自分の健康に気を配り、運動するなど時間を投入すれば、将来健康を維持できる可能性は高くなると思います。1年後、3年後、10年後にどんな生活を送っていたいかを考え、その目標を達成するためには健康が必要不可欠であることを認識しましょう。はるかぜ医院では一人一人の目標にむけて一緒に歩いていくように健康面をサポートしたいと考えています。
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