最終更新日:2023.02.24

腎盂腎炎(じんうじんえん)とは?前触れとなる症状と原因を解説

腎盂腎炎(じんうじんえん)とは?前触れとなる症状と原因を解説

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腎臓は、血液中の不純物をろ過して尿を生成し、体外に排出する役割を担っています。

腎盂(じんう)とは、この腎臓の中で作られた尿が集まる漏斗(ろうと)状の部分です。その腎臓(腎盂)でばい菌が増殖して炎症を起こしてしまうと、体にさまざまな悪影響を及ぼします。

腎盂腎炎は、20〜30歳代の若い女性に多く発症する感染症です。

本記事では、腎臓の診察をしている医師に監修していただき、腎盂に炎症が起こる腎盂腎炎(じんうじんえん)という病気の前触れとなる症状と原因、女性に多く発症する理由を解説しています。

腎盂腎炎(じんうじんえん)とは

腎盂腎炎とは、尿道から侵入した細菌によって、腎臓にある腎盂(じんう)に炎症が起こる尿路感染症の1つです。腎臓は胃や腸と同じお腹にある臓器ですが、消化や吸収の働きをもつ消化器ではなく、泌尿器に分類されます。

腎臓は主に2つの構造でできています。

1つは腎実質(じんじっしつ)という中身が詰まったいわば「実」の部分です。腎実質は、皮質と髄質(腎錐体)によって成り立ちます。ここは血液を濾過してきれいにするところで、体に不要な水分と成分を含む原尿をつくります

もう1つは、腎実質で作られた原尿を一時的にためて溜めておく漏斗状(ろうと)の部分、これが腎盂(じんう)です。

腎盂腎炎は、この腎盂に炎症が起こる病気です。

泌尿器である腎臓には、尿を作る役割があるということは前述した通りです。腎臓内では血液がろ過されて、老廃物や過剰な水分・塩分などの不要となったものだけを取り除きます。それが尿となって、体外へと排出される仕組みです。

そのほか、血圧の調整や赤血球の生成、骨の成長に関係するホルモンの分泌まで、幅広い機能をもつのが特徴です。

腎盂で起こった炎症は、やがて尿を作る機能を担う腎実質までにも及びます。 病態が進行すると、やがて腎機能全体に支障をきたしてしまいます。

腎盂腎炎(じんうじんえん)の症状

腎盂腎炎は、急激に発症する急性腎盂腎炎と、何度も繰り返し発症する慢性腎盂腎炎の2種類があります。

ほとんどの場合が急性腎盂腎炎ですが、十分に治療をしなければ慢性腎盂腎炎に移行する可能性があるので注意が必要です。

それぞれ症状は異なりますので、2つに分けてその特徴を解説します。

急性腎盂腎炎とは

急性腎盂腎炎は、悪寒をともなう高熱が急激に発症します。

ガタガタと震えるような寒気を感じたり、冷や汗が出たりする場合は、単なる風邪の症状と自己判断せずに、この病気を疑いましょう。

また、感染を起こした側の背中や腰、肋骨の下あたりの脇腹を軽くたたくと、痛みを感じることもあります。

急性腎盂腎炎は、どちらか片方の腎臓だけに発症することが多いため、左右の脇腹を優しくたたいて、感覚の違いをチェックしましょう。

また、

  • 排尿時の痛み
  • 頻尿
  • 残尿感

    など

    いわゆる「おしっこのお悩み」を抱える方が多いです。

    そのほか、

    • 全身倦怠感
    • 悪心(胃のむかつき、吐き気)
    • 嘔吐

      など、さまざまな症状を伴う場合もあります。

      急激に発症する急性腎盂腎炎は、早期に適切な治療を受ければ比較的早く症状が改善します。

      急性腎盂腎炎と診断されたら、病態が慢性化しないように完全に治すようにしましょう。

      慢性腎盂腎炎とは

      慢性腎盂腎炎は目立った自覚症状がなく、徴候が曖昧で一貫しない場合が多いです。

      たとえ症状があっても軽い腰痛や微熱程度で、見逃してしまうことも少なくありません。食欲不振や倦怠感などが現れる程度の方もいらっしゃいます。

      一方で、慢性腎盂腎炎の原因が膀胱尿管逆流(膀胱にたまった尿が尿管や腎臓に逆戻りすること)である場合は、慢性的に腎盂腎炎をくり返すことで腎臓の機能が著しく低下してしまうことがあります。

      腎性高血圧になったり、さらに進行すると慢性腎不全に移行することもあるため注意が必要です。

      腎盂腎炎(じんうじんえん)の原因

      腎盂腎炎は細菌感染によって起こります。感染のもっとも多い病原菌は大腸菌で、全体の約90%を占めます。

      腎盂腎炎のほとんどは、尿道の出口から侵入した細菌が尿路をさかのぼり、腎盂に達することで発症します。尿道から膀胱、膀胱から尿管、そして尿管から腎盂へという順番で、細菌がさかのぼっていくイメージです。これを上行性感染といいます。

      そのほか、血液を介して細菌感染が起こるの血行性感染、前立腺などの周囲にある病巣から感染が起こるのリンパ行性感染などがあります。

      本来は尿路に細菌が侵入しても、排尿によって体外へ洗い流されるようになっています。また、免疫力によって細菌は退治されるため、そう簡単には腎盂腎炎が起こることはありません。

      腎盂腎炎を発症する危険因子

      腎盂腎炎を発症する危険因子としては、以下のようなものが挙げられます。

      1. 女性であること
        女性は男性に比べて尿道が短く、膣や肛門に尿道が隣接して位置するため、細菌が侵入しやすくなっています。
      2. 尿路の閉塞
        前立腺肥大症や尿路結石、尿道狭窄症など、排尿障害がある場合は、尿路感染症が起こりやすくなっています。

      3. 免疫力の低下
        がんや糖尿病、その他免疫力を低下させる病気では、細菌感染を防ぐ役割を担う免疫機能が弱くなるため、腎盂腎炎を含む感染症を発症しやすくなります。また、臓器移植後やある種の免疫疾患の場合は、免疫抑制剤を内服しているため、免疫力が低下して腎盂腎炎を発症する確率が高くなります。
      4. 神経因性膀胱
        神経障害により膀胱の知覚(尿意)や排尿に障害が生じる神経因性膀胱の場合、残尿が多くなり膀胱が慢性感染にかかりやすくなります。その結果、腎盂腎炎を発症しやすくなります。
      5. 長期間の膀胱留置カテーテル
        膀胱に長期間カテーテルを留置することで、尿路感染のリスクが高まり、適切でない管理の場合は腎盂腎炎を引き起こす可能性があります。

      腎盂腎炎(じんうじんえん)はどうやってわかる?

      腎盂腎炎の診断には、主に尿検査・血液検査・画像診断(超音波検査、腹部造影CT)を実施します。

      1. 尿検査
        尿検査によって、尿中の白血球や細菌を確認します。白血球が一定数以上検出された場合、尿路感染症である可能性が高くなり、さらに発熱や腰背部痛など、腎盂腎炎に特徴的な症状が見られれば、急性腎盂腎炎と診断されます。過去に膀胱炎や急性腎盂腎炎にかかったことがある場合、発熱や腰背部痛がなくても、慢性腎盂腎炎が疑われます。また、尿検査と同時に、病原菌の種類を特定するために尿の細菌培養検査も行われます。この検査は、抗生物質の感受性を確認するために必要です。
      2. 血液検査
        血液検査では、白血球増多、核の左方偏移、CRPやプロカルシトニン(PCT)上昇、血沈亢進などの炎症所見が認められます。病態が白血球増多や呼吸数・脈拍数の増加を伴う場合は、菌血症が疑われますので、2セットの血液培養検査を行うことが必要です。血液培養検査で細菌が検出されれば敗血症の可能性が高く、時にはショック状態を引き起こすこともあるため、血行動態にも注意が必要です。
      3. 画像診断(腹部超音波検査、腹部造影CT検査)
        腹部超音波検査では、まず尿の流れに問題がないか確認します。腎臓の超音波検査では、腎臓が腫大しており、皮質・髄質境界部に浮腫や微小膿瘍を示す低エコー域が出現することがあります。また、腹部造影CTを用いることで腎膿瘍や腎周囲膿瘍、気腫性腎盂腎炎などを評価することができます。造影CT検査による所見では、腎臓の腫大に加え、周囲脂肪組織の濃度上昇、Gerota筋膜の肥厚、腎臓内に楔状~斑状の造影不良域が認められることがあります。特に、水腎症や膿瘍形成、ガス産生などを伴うような重篤で特殊な病態では、迅速かつ正確に診断を行い、必要に応じて泌尿器科的処置(ドレナージなど)を施すことが必要です。

      以上のように、症状や検査結果を総合的に判断し、腎盂腎炎の診断が行われます。

      早期の診断と治療が重要なため、症状が現れた場合は早めに医師に相談しましょう。

      腎盂腎炎(じんうじんえん)の治療

      腎盂腎炎は以下のような方法で治療を進めます。

      1. 抗生物質の投与
        腎盂腎炎の原因となる細菌感染を治療するため、抗生物質が使用されます。軽症の場合は、適切な抗菌薬治療によって比較的早期に症状が改善されます。投与される抗生物質の種類や期間は、患者の症状や病原体によって異なります。
      2. 経口補液療法
        腎盂腎炎で起こる高熱や嘔吐によって、体内の水分や電解質が失われることがあります。そのため、経口補液療法により、体内の水分や電解質のバランスを整えることが必要です。
      3. 疼痛の管理
        腎盂腎炎によって生じる疼痛には、鎮痛剤を用いて対処することもあります。
      4. 尿路基礎疾患の治療
        尿路基礎疾患を放置すると、腎盂腎炎が繰り返される可能性が高くなります。尿路基礎疾患が見つかった場合、炎症が収まった後に治療を開始します。

        腎盂腎炎は早期治療が重要です。治療が遅れると、敗血症や腎不全などの合併症が発生する可能性があります。

        症状が出た場合は、早めに医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。

        腎盂腎炎(じんうじんえん)の予防

        腎盂腎炎を予防するために、以下のようなことを心がけましょう。

        1. 十分な水分摂取
          水分を十分に摂取し、尿を十分に排出することで、腎盂腎炎の発症を予防することができます。一日に2リットル以上の水分を摂取することが推奨されます。

        2. 適切な排尿
          排尿を我慢しすぎないようにし、尿をこまめに排出するようにしましょう。また、トイレの後はきちんと拭き取るようにすることも大切です。

        3. 衛生管理
          日頃から清潔な下着をつけ、清潔な状態を保ちましょう。特に女性の場合は、膣から細菌が尿道に入り込むことで腎盂腎炎を引き起こすことがあります。そのため、衛生管理には注意しましょう。トイレの後はきちんと拭き取るようにすることも大切です。

        4. 免疫力の向上
          ストレスや睡眠不足などが原因で免疫力が低下すると、感染症を発症する可能性が高まります。適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠などを心がけ、免疫力を向上させることが大切です。

          腎盂腎炎は早期発見・早期治療が重要です。症状が出た場合は、適切な治療を受けるためにも早めに医師に相談しましょう。

          腎盂腎炎(じんうじんえん)に関するよくあるご質問

          腎盂腎炎は何科を受診する?

          腎盂腎炎の治療には、泌尿器科、内科、腎臓専門医などがいる医療機関を受診しましょう。

          一般的には、腰痛や発熱、尿の異常などの症状が現れた場合は、まず内科やかかりつけの医師に相談することが推奨されます。 その後、尿検査や血液検査、超音波検査などの検査を行い、腎盂腎炎かどうかを確認します。

           専門的な治療が必要となる場合は、泌尿器科や腎臓専門医の診療を受けることが推奨されます。最適な治療法を選択するために、医師の指示に従って適切な診療を受けるようにしましょう。

          腎盂腎炎はどのくらいで治る?

          一般的には2週間から4週間程度が必要です。

          腎盂腎炎の治療期間は、病気の進行具合や治療の方法によって異なりますが、急性腎盂腎炎の場合、抗生物質の投与によって細菌感染を治療し、発熱や腰痛などの症状が改善されるまで2週間から3週間程度の期間が必要となります。その後も、完全に治癒するまでには、さらに1週間から2週間程度かかることがあります。

          慢性腎盂腎炎の場合、症状は軽くなることが多いため、治療には長期的な投薬が必要となることがあります。また、慢性腎盂腎炎は腎機能の低下を招くことがあるため、定期的な尿検査や医師の指導の下で適切な治療を行うことが重要です。

           

          腎盂腎炎はうつりますか?

          腎盂腎炎は感染症の1つですが、周囲にうつるというタイプの病気ではありません。

           

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          こちらの記事の監修医師

          青木 聡

          富沢あおき内科クリニック青木 聡 先生

          宮城県仙台市にある富沢あおき内科クリニック、院長の青木です。

          私は東北大学を卒業後、県内の総合病院で内科診療に励んでまいりました。 専門である腎臓病のほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病、二次性高血圧症、電解質異常、甲状腺機能低下症、その他一般内科疾患の診療に携わっておりました。

          内科医の強みは、幅広い疾患に対応できることだと考えております。

          これからは地域の皆様の「かかりつけ医」として、病気の診断、治療だけでなく、発症予防、進行予防にも力を注いでまいります。

          風邪かもしれない、血圧が高い、健康診断で異常を指摘されたなど、何でも構いません。 お気軽にご相談いただけると幸いです。

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