最終更新日:2023.08.24

生理時の出血が多い原因は?過多月経のセルフチェック、経血量を解説

生理時の出血が多い原因は?過多月経のセルフチェック、経血量を解説

正常な月経の範囲外にある状態を月経異常(生理不順)といいます。月経異常の中でも、生理時の出血が多い状態を過多月経とよびます。

「少しくらい多くても仕方ない」「いつものことだから」と軽視していませんか? 過多月経の背景には、なんらかの病気が原因となっている場合もあるため、注意が必要です。

本記事では、婦人科医に監修していただき、生理時の出血が多い原因と過多月経のセルフチェック、経血量を解説しています。

生理時の出血が多い「過多月経」とは?

生理のお悩みを抱える女性は多いですが、月経周期や期間、痛みや量など、人と比較できなくてもどかしい思いをされている方は多いのではないでしょうか。

女性が抱える生理時のお悩みの中で、ご相談の多い症状の1つが「生理時の出血量が多い」というお悩みです。経血量が正常範囲を越えた状態を、過多月経とよびます。

生理の量が多いと、経血にレバーのようなかたまりが混ざることもあります。通常、生理の血はサラサラしていて、固まることはありません。これは経血が固まらないようにするため、酵素がまざっているためです。

一方、経血の量が多すぎると酵素の作用が追いつかなくなり、かたまりが出来やすくなります。

このように、経血の量が多すぎるのは、何らかの問題を抱えている可能性があります。

経血量の正常値・正常な生理の目安

実際に月経時の出血量を正確に計測することは困難であり、婦人科を受診しても、経血量で診断されることはほとんどありません。そのため、受診した際には経血量が多いという症状と貧血の有無を指標として判断されるのが一般的です。

鮮血が多かったり、レバーのような血のかたまりが大量にでたりするという方は、早めに受診しましょう。

わたしの生理は多い?症状セルフチェック

生理時の出血が多く、それが何日も続く方は、鉄欠乏症貧血になるケースが多いです。

鉄欠乏症貧血になると、

  • 立ちくらみ
  • 動機・息切れ
  • めまい
  • だるい、つかれやすい

など、日常生活に支障をきたすほどの症状がでることもあります。

健康診断で貧血を指摘された方

健康診断等で血液検査をした際に、貧血と指摘された方は、過多月経の可能性が高いです。

女性は毎月、生理があるため「多少の貧血は仕方ない」とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、それは思い込みです。 本来、正常範囲140mlの経血で済んでいれば、深刻なほどまでの貧血になりにくいと考えます。

食事改善で貧血症状が解消されることもありますが、なかなか良くならいという方は迷わず婦人科を受診してください。 貧血の背景にも、何らかの病気・トラブルが隠れている可能性があります。

経血量を増やしている原因となる病気を治すことで、貧血を予防することができます。

生理時の出血が多い(過多月経)原因

 

生理時の出血が多いときの検査

初診で行われる検査として

  • 問診・内診
  • 超音波検査

を実施し、子宮に何らかの異常がないかを確認します。

さらに、より詳しく調べる必要があると判断した際に

  • 血液検査
  • がん検診
  • 画像検索(MRIなど)
  • 病理組織検査

などを実施する場合があります。

血液検査は月経周期とタイミングを合わせて行い、ホルモンの異常や血を止める機能に異常がないかを確認します。

以上のような検査の結果をもとに、生理時の出血が多い(過多月経の)原因が、子宮や卵巣そのものにあるのか、もしくはそれ以外の要因が考えられるのか、また双方に問題があるのかを診断します。

 

過多月経の原因となる病気

女性特有の部位の疾患が原因で、過多月経を引き起こすことがあります。

過多月経の原因となる主な病気は、

  • 子宮筋腫
  • 子宮腺筋症
  • 子宮内膜ポリープ

などの良性腫瘍があげられます。

また、

などの悪性腫瘍が隠れている場合もあります。

その疑いがある場合は、より精密な検査を実施して、病気のサインではないかを確認します。

子宮筋腫による過多月経

子宮筋腫は子宮の筋肉にできる良性の腫瘍です。コブのようなかたまりが子宮内にでき、大きくなることもありますが、がんではないので転移などはしません。子宮筋腫は60〜70%の方が無症状といわれますが、もっとも問題になる症状の一つに過多月経があげられます。

子宮筋腫が子宮内腔を押し上げ子宮内膜の表面積が広くなり、はがれ落ちる内膜の量が増えるのが原因と考えられています。

子宮腺筋症による過多月経

子宮腺筋症は、本来なら子宮内膜にあるはずの組織が、子宮筋層に潜り込んで増殖し、月経周期に合わせてその部位で出血を繰り返す病気です。明確な原因は明らかになっていません。

子宮腺筋症の典型的な症状は強い月経痛です。また、内膜組織の増殖によって子宮全体が大きくなることで子宮内腔が拡張し、過多月経が起こることもあります。

月経時以外にも、強い下腹部痛を伴う過多月経があった場合、子宮腺筋腫である可能性が考えられます。一方で、まったく症状がでない方も珍しくありません。

子宮内膜ポリープによる過多月経

子宮がんによる過多月経

 

生理時の出血が多いときの検査

診察室での問診のあと、通常は内診や超音波検査、必要に応じてがん検診などを行います。また、月経周期とタイミングを合わせて血液検査でホルモンの異常や血を止める働きの異常がないかを調べます。

もう少し詳しい画像検査(MRIなど)や病理組織検査を行う場合もあります。検査結果を踏まえて、過多月経の原因が子宮や卵巣そのものにあるのか、それ以外の原因(とくに血液の異常など)によるものか、あるいは両者に原因があるのかを診断します。

生理時の出血が多いときの治療

過多月経とミレーナ

過多月経とピル

子宮に問題がある場合の治療

薬物療法

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)
ピルに含まれている黄体ホルモンの作用により。排卵を抑制し、卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑えます。また、子宮内膜の増殖を抑えたり、ホルモンバランスの異常を改善することで経血量を減少させます。
子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®)

GnRHアゴニスト・アンタゴニスト

子宮筋腫などがある場合に考慮されます。
閉経と同じくらいのレベルに女性ホルモンの分泌を抑え、月経そのものを止める効果があります(偽閉経療法と言います)。ただし、女性ホルモンの低下によって骨粗しょう症などが出る場合がありますので、そちらに対する検査も検討いたします。

手術療法

薬物療法が無効もしくは困難な場合には手術療法を検討します。
手術療法の術式は、原因疾患、挙児希望の有無によって決まります。

血を止める働きに異常がある場合の治療

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こちらの記事の監修医師

鈴木 吉也

まほろばレディースクリニック鈴木 吉也 先生

宮城県大和町「まほろばレディースクリニック」、院長の鈴木です。わたしは「女性特有の悩みをじっくり聞いて納得のいく治療法を一緒に探したい」という思いから、開院いたしました。

深刻な症状とまではいかないけれど、月経や生理周期に煩わされたり、振り回されている人は少なくありません。悩んでいるみなさまに少しでも快適な毎日を過ごせるよう方法をご提案いたします。

また、妊婦さんの健康状態と赤ちゃんの成長を見守るための健診を行い、安心してマタニティーライフを送れるようなサポートはもちろん、自分の健康を自分で管理する・子供を産むかどうか・いつ産むかなど妊娠出産に関することについてもご相談やお手伝いをいたします。

お一人おひとりのお気持ちやライフスタイルに寄り添った診療を行います。 どんなことでも大丈夫です。お体に不安を覚えたら、お気軽にご相談ください。

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