最終更新日:2023.09.13
心配いらない血尿とは?血が混じった尿の受診目安、原因を男女・高齢者別に解説

血が混じった尿を血尿といいます。健康診断や病院での尿検査で「おしっこに血が混じっています」と指摘を受ける方は決して少なくありません。
尿は腎臓という臓器で生成されます。そして一連の通り道(尿路)を通過して体外へ排出されます。血尿が認められた場合は、これらのどこかに何らかのトラブルが起こっている可能性が考えられます。
本記事では、腎臓内科の専門医に監修していただき、心配いらない血尿はあるのか?原因の違い(男性、女性、子ども、高齢者 別)や血が混じった尿に隠れた病気を解説しています。
目次
血尿とは?- 血尿の種類
血尿とは「血が混じった尿」を指し、そのレベルによって2つのタイプがあります。
- 肉眼的血尿
- 顕微鏡的血尿
まずはそれぞれの特徴を簡単に説明します。
肉眼的血尿は「目で見ておしっこが赤いのがわかるもの」と表現できます。尿に血が混じっているのが目で見て判断できるほどなので、ピンク色から鮮やかな赤などの明るい色の血尿や、尿が濃い場合は赤みがかったオレンジ色の血尿にもなります。
一方、顕微鏡的血尿は「顕微鏡で観察すると血が混じっているのがわかるもの」です。つまり、目で見ての判断は難しいけれど、病院で検査をしたときに血尿と診断された場合は、このタイプの血尿に分類されます。検診で尿潜血陽性となった場合も同様です。
心配いらない血尿とは? – 特発性腎出血
医療機関を受診して適切な検査診察を受けても、原因が分からない血尿と診断されることがあります。これを特発性腎出血(読み方:とくはつせいじんしゅっけつ)といいます。この血尿はそれほど心配はいりません。病気ではないと診断された場合は、基本的に経過観察となります。
たとえば、激しい運動後や性活動後、抗凝固薬使用中の方、また女性であれば生理前後など、血尿のような赤みのある尿がみられます。これらは一時的なものなので、特別な検査や治療は行われないことが多いです。
また、通常の尿検査で陽性反応があっても、顕微鏡で赤血球が確認できない場合は、血尿ではないと診断されます。また検診で微量の血尿が確認されても、再度の検査で血尿が確認されない場合、また膀胱がんなどのがんリスク(年齢、喫煙歴、性別など)が低い方も、追加の再検査は不要と判断されることが多いです。
以上のように、「心配いらない血尿」はあくまでも適切な検査をした上で判断されます。
肉眼的血尿の場合はとくに何らかの病態が隠れていう可能性が非常に高いため、自己判断で放っておくことのないように注意しましょう。
血尿スケール – 血尿の色
血尿の色味の認識は人それぞれであり、その表現もまた異なります。「淡血性・鮮血色・暗褐色」などとよばれたり、「コーラ色、紅茶色、トマト色」など、かなり主観的な表現を使われることも少なくありません。
そのため、医療の現場では血尿スケールと呼ばれる指標を使って、色の統一基準を用いながら識別されることがあります。血尿スケールで、リスクを伴う血尿の色(血尿色)を把握しましょう。
Ht / ヘマトクリット値 / Hematocrit / 血液に占める赤血球の割合、またはその検査を表します。
- Ht 0.1%
- Ht 0.3%
- Ht 1.0%
- Ht 3.0%
- Ht 10%
- Ht 30%
一般的には、1リットルの尿に対して血液が1ml(Ht 0.1%)ほど混じると、肉眼的におしっこの色が赤いと判別できるといわれています。しかし、実際に色の異変を認識できるのは、血液量が3~5ml(Ht 0.3%〜Ht 0.5%)以上の場合であると考えます。
また体内の水分が多い時は尿の色は薄くなり、脱水気味の場合は尿の色は濃くなります。それによって血尿の色合いも異なるため、肉眼的に血尿と判断するのが難しい場合もあります。
血尿の受診の目安 – 何科を受診する?

おしっこをしたときに赤みがかった血尿がみられると「最近、疲れているからかな」「ストレスが溜まってるから…」「お酒を飲みすぎたから」などと、血尿の理由を色々と考える方もいらっしゃるようですが、それは間違った思考です。
血尿の症状がみられた場合、
- 腎臓で生成される段階で血が混入するケース
- 尿が生成された後に尿管や膀胱で問題が起きるケース
この2つの場合が考えられます。
前者の場合は腎臓内科、後者の場合は泌尿器科を受診するのが望ましいです。
腎臓疾患においても、5-6%は肉眼的血尿が出るケースがあります。多くは風邪や咽頭炎後に発生します。一方で下肢のむくみや高血圧、蛋白尿がある場合は、腎臓病の可能性を疑います。
血尿に隠れた病気
一般的に血尿は、腫瘍、結石、腎障害などの病気を示す可能性があります。
- 尿路結石(腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)
- 前立腺結石
- 膀胱炎
- 腎細胞がん
- 腎盂・尿管がん
- 前立腺がん
- 膀胱がん
- 腎炎
など、目で見てわかる血尿が出た場合、これらの疾患が存在する確率が大いに高くなります。
生殖器の違いから男性と女性でも血尿の原因は異なる場合があります。また、血尿が発見される頻度は加齢に伴い増加することから、子どもの血尿と高齢者の血尿を比べても、その原因や緊急度は異なります。
血尿によって疑われる病態についての詳細は、下記で解説します。
男性の血尿の原因で多い尿管結石
男性の場合、医療機関を受診して適切な検査診察を受けても、原因が分からない血尿(特発性腎出血)と診断されることがあります。この場合は、血尿の症状がみられてもそれほど心配はいりません。
一方で、血尿の検査をした際に、何らかの病気が見つかることがあります。男性の血尿の原因で多いのが、尿管結石という病態です。
尿が生成される腎臓から尿が排出されるまでの通り道(尿路)に結石とよばれる石ができる病態を尿路結石といいます。
結石のサイズは、できる場所によって数mmから数cmまで変わります。たとえば、結石が腎臓(腎盂)の内壁を摩擦すると、それが血尿を引き起こす原因となります。
尿路結石の中でも、血尿や激しい痛みを伴うのが尿管結石です。尿管は2-3mmの細さで、結石が腎臓(腎盂)から尿管へ移動する過程で、尿管内に引っ掛かってしまうことがあります。
尿管結石は男性に多い病態のされており、好発年齢は40歳代と考えられています。尿管結石は激痛を伴う病態としても有名で、患者さんはとても辛い思いをすることが多いです。さらに尿管に結石が詰まることで腎臓で作られた尿は腎臓内に溜まってしまい、腰や背中に痛みを引き起こすこともあります。
そのほかにも前立腺結石とよばれる病気は、血尿の症状がみられる男性特有の病態の1つです。とくに高齢者の方に発症が多い傾向があります。
女性の血尿の原因で多い膀胱炎
女性の場合、医療機関を受診して適切な検査診察を受けても、原因が分からない血尿(特発性腎出血)と診断されることがあります。この場合は、血尿の症状がみられてもそれほど心配はいりません。
一方で、血尿の検査をした際に、何らかの病気が見つかることがあります。女性の血尿の原因で多いのが、膀胱炎(ぼうこうえん)という病態です。
膀胱炎は、大腸菌などの微生物が尿道口から膀胱に侵入(上行性感染)し、その場で繁殖して炎症を引き起こすものです。膀胱の炎症によって突然症状がみられる場合、急性膀胱炎と診断されます。
女性の尿道は男性と比べて短いため、細菌が膀胱に侵入しやすいと考えられています。その結果、男性よりも急性膀胱炎に罹患する確率が高いです。過去のデータによれば、成人女性の中で約5人に1人がこの膀胱炎を体験しているほど、女性にとっては一般的な疾患です。
急性膀胱炎に罹ると、肉眼的血尿が出ることもあります。突然の血尿に驚かれて、泌尿器科を受診される方が多いです。
それ以外にも次のような兆候が出ます。
- 排尿が終わる頃に強くしみる痛みが生じる
- 頻繁に尿意を感じる(頻尿)
- 尿が残っている感じがする(残尿感)
- 下腹部に不快感がある
- 濁った尿が出る
など、さまざまな症状がみられます。
同じような症状が出る疾患として腎盂腎炎(じんうじんえん)があります。腎盂腎炎は発熱を伴うことが多いですが、膀胱炎は発熱症状はみられません。
もし血尿に加えて、排尿時の痛みや頻尿があり、熱がなければ、急性膀胱炎の可能性が高いと推測されます。
膀胱炎の治療
通常、炎症が軽度であれば抗菌薬で治ります。市販の薬で膀胱炎を治すことも可能です。しかし、肉眼で見えるほどの血尿があると、炎症が重度である可能性が高いです。
そのような場合は、できるだけ早めに泌尿器科を受診してください。
繰り返す膀胱炎、再発に注意
膀胱炎は治療後も、繰り返すことも少なくありません。そのため、生活習慣の見直しがとても重要です。
- 日頃から十分に水分を摂る
- 尿意をがまんしない
- 下着や生理用品等を清潔に保つ
- ストレスや疲労を解消する
など、日々の生活の中で予防につとめましょう。
高齢者の血尿の原因で多い悪性の病気
高齢者では、「腎細胞がん」、「腎盂がん」、「尿管がん」、「膀胱がん」などの悪性の病気の可能性も出てきます。これらの場合は泌尿器科の受診が必要です。同時に「蛋白尿」も言われている場合は「腎炎」の可能性があります。
血尿の原因となる前立腺結石
前立腺結石とは、男性特有の器官である前立腺のなかに石や石灰化が生じた状態です。前立腺肥大症や尿道狭窄などによって前立腺液の流れが悪化し、炎症を引き起こして形成されるとされています。
前立腺結石となっても無症状であることが多いですが、前立腺炎を併発すると
- 発熱
- 排尿の痛み・違和感
- 下腹部の痛み
- 尿が濁る(膿尿や血尿など)
の症状があらわれます。
血尿の原因となる腎細胞がん
特に高齢者において血尿の原因として癌が挙がることが増えています。腎細胞がんは比較的若い人々にも発生するが、早期の段階では症状が少ないため、血尿の主要な原因とは言えません。
血尿の原因となる尿路上皮がん(腎盂尿管がん、膀胱がん)
腎盂がん、尿管がん、膀胱がんは主に50代以上の高齢者に多く、早期から血尿を引き起こすことがあります。特に高齢者で肉眼的血尿が確認された場合、これらの病気の可能性が高く、膀胱鏡検査が必要となる場合があります。早めの診察が推奨されます。
若年層の場合、「腎結石」、「尿管結石」、「膀胱炎」が大半を占めます。逆に高齢者においては、「腎細胞癌」、「腎盂癌」、「尿管癌」、「膀胱癌」など、悪性疾患の可能性も増えてきます。これらのケースでは泌尿器科の受診が必須です。さらに、「蛋白尿」の診断も受けている場合は、「腎炎」の疑いがあり、腎臓内科での診察が必要となるでしょう。
血尿の原因となる膀胱結石
膀胱結石は、特に前立腺肥大症や神経因性膀胱など、尿が完全に排出されない病状でよく見られます。結石が形成されると、血尿や排尿時の痛みが生じる可能性があります。特に、長期間寝たきりの状態や尿道カテーテルが挿入されている人にもよく発生します。
血尿の原因となる前立腺結石
前立腺結石は主に高齢者に見られ、治療が必須ではない場合が多いです。これは加齢に伴う現象とされ、時折、尿道に排出される際に血尿が出ることがあります。
血尿があった場合の検査
血尿の検査は通常、初期段階では尿検査から始まります。尿検査によって「+」や「2+」といった形で陽性反応が示される場合が多いです。その後、血尿が確認された場合には、更なる詳細な検査が行われます。これには超音波検査、CTスキャン、MRI、尿細胞診などがあります。
尿検査では「顕微鏡的血尿」と「肉眼的血尿」の二つに大きく分けられます。顕微鏡的血尿の場合、尿沈渣検査で赤血球が確認されますが、特に病気が見つからないこともあります。肉眼的血尿の場合は、何らかの病気が見つかる可能性が高くなるので、より詳細な検査が推奨されます。
診断が確定した場合、その原因に応じて泌尿器科または腎臓内科での治療が行われることが多いです。例えば、結石や腫瘍が原因であれば、その除去や治療が必要となります。血尿が確認された際には、専門医の診察を受けることが重要です。
健康診断で尿潜血陽性だった場合
健康検査で尿に潜血反応が陽性とされたら、まずは泌尿器科に足を運ぶことが推奨されます。一部の人々は内科に行くことを選びますが、詳細な尿の検査は泌尿器科でより綿密に行われることが多いです。結局、多くのケースで内科から泌尿器科へ紹介される流れになるため、尿潜血が陽性ならば泌尿器科が最適です。
目立って赤い尿(いわゆる肉眼的血尿)を発見したら、大半の人は自然と泌尿器科を受診するでしょう。だが、尿潜血が「1+」と指摘されたとき、多くは「1+ならば心配ない」と自分に言い聞かせ、医療施設に行かない方が多いとされます。健診での尿潜血陽性の発生率は、男性で3.5%、女性で12.3%と報告されており、特に女性においては頻繁に見られます。確かに、すべての人に重大な疾患があるわけではないですが、尿潜血陽性が指摘された際に泌尿器科で検査を受けると、初期段階の膀胱がんなどが見つかるケースも多いです。
尿潜血が陽性とされた場合、最初に進めるべき検査は尿沈渣とされています。この検査は泌尿器科でその場で可能であり、尿中に赤血球が存在するかどうかを確かめます。赤血球が確認されたら、血尿と診断されます。その後は、腎臓、膀胱、前立腺の超音波検査が続きます。この検査で何らかの異常が検出された場合、さらに詳しい検査が行われます。
要するに、尿潜血が陽性と判定されたら、それが1+であれ2+であれ、初めてのステップは泌尿器科での診察となります。
こちらの記事の監修医師

LCクリニック仙台佐藤 俊裕 先生
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