最終更新日:2023.03.15
手足口病とは?子どもから大人にもうつる感染経路と症状を解説

子どもの「三大夏風邪」とよばれている感染症の1つが「手足口病」です。
病名のとおり、手のひらや足の裏に赤い発疹ができたり、口の中に水疱ができたりします。
本記事では、手足口病の診療をしている小児科の医師に監修していただき、手足口病の感染経路と症状について解説しています。
手足口病の流行のピークをはじめ、病気の特徴や注意点を確認し、事前の感染対策に備えましょう。
目次
手足口病とは
手足口病とは、ウイルス感染によって発症する病気です。
生後、6ヶ月くらいから4〜5歳の乳幼児が夏にかかりやすい感染症です。この病気の特徴は、その名前の通り、手足や口の中、舌などに米粒大の赤いブツブツ(水疱)ができることです。
原因ウイルスは数種類存在し、それぞれ感染力が強いため、一度だけではなく複数回かかることもあるため注意が必要です。ウイルスによる病気なので、基本的には特に治療をしなくとも、自然に治癒していきます。しかし、時には痛みや痒さを訴えるお子さんも多く、そのほかの症状を併発する場合も少なくありません。その際は、早めに受診するようにしましょう。
手足口病の感染経路
咳やくしゃみの際に出る、しぶき(飛沫)によって感染する「飛沫感染」と、たとえば感染者である子どもが舐めて唾液や鼻水がついたおもちゃを別の子どもが触れて感染するといった「接触感染」が主な感染経路です。
感染力は強く、とくに集団生活を送る幼稚園や保育園などでの感染が多く報告されています。
また、病態が回復した後でも、口(呼吸器)から1〜2週間、そして便からは2〜4週間にわたってウイルスが排泄されると考えられています。お子さんのおむつを替える際に、便と一緒に排泄されたウイルスが手について、そこから感染してしまうケースもありますので注意が必要です。
手足口病の潜伏期間
ウイルスの潜伏期間は3〜6日ほどです。
家庭内で感染を防ぐ方法
飛沫感染を防ぐために、咳やくしゃみが出ている間はマスクなどで感染を防ぎましょう。
接触感染を防ぐためには、こまめな手洗いと手指消毒がとても大切です。
とくにトイレ後やおむつ交換後は、十分に手洗いと消毒をして感染予防を徹底しましょう。
手足口病の症状
手のひら、足の裏や甲、口の中などに、米粒大のブツブツとした水疱が出ます。水疱は周囲が赤く、真ん中が白いのが特徴です。手足にできる水疱については、痛みがでない場合も多いですが、中には痛みや痒みを訴えるお子さんもいらっしゃいます。
水疱は、手・足・口に出ることが多いですが、原因となるウイルスの型によっては、肘やお尻、性器の周辺など、他の部位に出ることもあります。
一方で、口の中の水疱は破れて口内炎(口の中の粘膜がただれている状態)によって強い痛みを感じます。つばを飲み込むのが辛く、不機嫌になったり、食欲が落ちてしまうお子さんも多いです。この場合は、脱水症状を起こすこともあるため注意が必要です。
その他の併発症状としては、発熱や下痢、嘔吐があげられます。熱は出ても1〜2日で下がることが多く、熱が出ないお子さんも多いです。
また、1〜2ヶ月後に手足の爪がはがれるお子さんもいらっしゃいます。しかし、ほとんどの場合は大事にはいたらず、すぐに新しい爪が生えてきますので案s人してください。
髄膜炎の併発に要注意
手足口病は比較的、後遺症や合併症の心配はない病気です。
しかし、ごくまれに無菌性髄膜炎や脳炎を併発することがあるため、注意が必要です。
- 高熱が出る
- 頭痛の症状が続いている
- ひきつけを起こす
- 嘔吐を繰り返す
以上のような症状がある場合は、速やかに受診しましょう。
手足口病の原因
手足口病の主な原因ウイルスは、
- コクサッキーウイルスA6、A16
- エンテロウイルス71(EV71)
- コクサッキーウイルスA10
などがあげられます。
以上のように、手足口病にはさまざまなウイルスが存在するため、たとえ一度感染して免疫ができたとしても、感染したことがないウイルスに触れると、何度も発症することになります。
手足口病は大人がかかると重症化する?
手足口病は、子どもよりも大人の方が重い症状を示しやすいという特徴があります。
まず、大人の方が発疹の痛みを強く感じることが多いです。足の裏などに発疹が出ると、激しい痛みで歩くことが困難になることがあります。
さらに、全身のだるさ、寒気、関節痛、筋肉痛などのインフルエンザに感染する前に似た症状が現れることもあります。
身近に子どもがいない場合はとくに、たとえ発疹が出ても手足口病だと気付かない方が多いです。「なぜこんな発疹が出ているのか?体がだるいし、何が原因だろう?」と疑問を抱いて医療機関を受診するケースがほとんどです。
手足口病による妊婦の胎児への影響
日本産婦人科医会によれば、妊娠中の女性が手足口病にかかるケースは比較的稀であると報告されています。
一部、流産や死産、胎児水腫などの報告はあるものの、現時点では手足口病と胎児の異常に因果関係があるということは証明されていません。
ただし、妊娠中の女性が出産直前に感染した場合、生まれた赤ちゃんに感染するリスクはあります。
通常は無症状または軽度の症状が見られることが多いですが、重篤な状態になることもあるため注意が必要です。
出産前後の母親や赤ちゃんに対しては、症状に応じた治療と注意深い経過観察が行われます。
手足口病の検査診断
基本的には症状の問診と診察だけで診断をします。
手・足・口を診察して赤いボツボツがみられた場合、手足口病と診断する場合がほとんどです。
ただし、髄膜炎をはじめとする合併症の疑いがある場合は、血液検査や便の検査、髄液検査など、より詳しい検査をすることもあります。
手足口病の治療
手足口病の原因ウイルスに対して、直接的に効果のある薬はありません。そのため、症状に合わせた対症療法によって「自然回復を待つ」というのが手足口病の治療方針となります。
手足の発疹・水疱は、1週間程度で自然にしぼんでいきます。発熱の症状については、解熱薬の使用も検討します。ほとんどの場合、3日以内に熱が下がることが一般的です。
口の中で潰瘍(ただれている状態)となった水疱も、一時はしみて痛みも見られますが、1週間ほどで治ります。
痛みで食欲がなくなるお子さんも多いですが、たいていの場合、食事ができないのは1〜2日程度です。痛みが強く、嫌がって食べない様子であれば、無理強いする必要はありません。 つるんとした口当たりの良い食べ物(プリンやゼリー、冷たいアイスなど)を選び、少しずつ与えるように心がけましょう。
お口の中の痛みが強い場合、水分を摂ることも嫌がる場合があります。脱水症状には十分に注意して、こまめに水分を与えてください。麦茶や白湯など、刺激のないもので水分補給をしてください。オレンジジュースなどの酸味のあるものはしみるので避けましょう。
手足口病にかかったときの幼稚園・保育園、学校への対応
手足口病の場合、休むべき日数に明確なルールはありませんが、一般的には発症から約5〜7日程度は休息をとるべきであると考えます。
熱がある場合や、喉の痛みが強くて食事が摂れない状態であれば、しばらくは休んだ方が良いでしょう。
熱が下がり、痛みが和らいで食事が摂れるようになったら、幼稚園・保育園・学校への登園を再開しても問題ありません。
感染症に罹患した際に保育園や学校へ提出する必要があるとされる治癒証明書(感染症治癒後登園〈登校〉許可証明書)ですが、手足口病の場合は、法律上は必須ではありません。
ただし、各自治体や園・学校の方針によっては登園許可証などの提出が求められることがあるので、事前に確認しておくことが望ましいです。
こちらの記事の監修医師

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