最終更新日:2024.03.05

帯状疱疹の予防法は?ワクチンの効果と副作用、費用を解説

帯状疱疹の予防法は?ワクチンの効果と副作用、費用を解説

帯状疱疹の発症を予防する選択肢のひとつとなるのが、帯状疱疹ワクチンです。現在、帯状疱疹の発症を予防するもっとも有効な手段とされています。

どのようなワクチンにも、程度は人それぞれですが、発熱などの副反応(副作用)が起こるリスクがあります。そのため、感染予防効果(重症化阻止効果)のベネフィットと副反応等のリスクを天秤にかけて、帯状疱疹ワクチンを受けるかどうかを決定することが大切です。

本記事では、皮膚科専門医に監修していただき、帯状疱疹の予防となる「帯状疱疹ワクチン」の効果と副作用、費用を解説しています。

帯状疱疹の予防ワクチンとは?

帯状疱疹は、過去に水ぼうそうにかかった経験のある方であれば、誰でも発症する可能性があります。発症の原因となるウイルスは免疫力が低下した際に再活化しやすいため、日々、生活改善をはかりながら免疫力を維持することが大切です。もちろん、生活改善だけで帯状疱疹の発症が防げるかというと、そうは言えません。

そこで、帯状疱疹の発症リスクを軽減させる手立てとなるのが、帯状疱疹ワクチンの接種です。今、水ぼうそうにかかる子どもが減少している状況にあります。そのため、免疫機能(ブースター効果)を得るためには予防ワクチンの接種が必要とされています。

帯状疱疹ワクチンのメリット

帯状疱疹ワクチンを接種することで、帯状疱疹を発症するリスクを軽減させることができるだけではなく、発症した場合でも重症化しにくいことがわかっています。

帯状疱疹は60歳以降の方に発症するケースが多く、発症時に適切な治療を受けないと、帯状疱疹後神経痛とよばれる後遺症に悩まされる可能性が高くなります。帯状疱疹の予防ワクチンには、この帯状疱疹後神経痛に移行しにくいといった効果も期待されています。

2つの種類がある帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹の予防ワクチンには、

  1. 水痘ワクチン
  2. シングリックス®️

この2つの種類があります。

水痘ワクチンとシングリックス®️の違い

水痘ワクチンは、弱毒化したウイルスを用いる生ワクチンとよばれるものです。水ぼうそうの予防を目的として乳幼児の定期接種で使用されています。一方、シングリックス®️はウイルスの成分を利用した不活化ワクチンとよばれます。いずれも低下している免疫力を高める効果が得られます。

水痘ワクチンとシングリックス®️、どちらを受ければよい?

水痘ワクチンは、水ぼうそうの経験がない人には安全なかたちで水ぼうそうのウイルスに対する免疫力をつけ、水ぼうそうにかからないようにすることができます。そのため、これまで水ぼうそうにかかったことがないという方は、水痘ワクチンが推奨されます。

また、過去に水ぼうそうにかかったことがある人でも、すでにある程度備わっている水ぼうそうのウイルスに対する免疫力を、高める効果が期待できます。水痘ワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症リスクは半減するといわれています。

もう一方のシングリックス®️は、帯状疱疹予防を専門とするワクチンです。そのため、水ぼうそうの予防効果はありません。しかし、帯状疱疹を予防する効果はとても高いとされています。

それぞれ、接種できる対象者や効果も異なります。自分の健康状態を含めて主治医とよく相談しながら選ぶことが大切です。

帯状疱疹ワクチンを接種しなくてもよい人

水痘・帯状疱疹ウイルス(VZウイルス)に対する免疫力は、水ぼうそうが治ったあとや水ぼうそうの予防ワクチンを接種して間もない時期がピークとなります。(そのあとは徐々に効果が低下していきます。)

成人になって近年、水ぼうそうにかかったという方、また5年以内に帯状疱疹にかかった方は、発症前よりも免疫力は高まっていると考えられます。そのため再発を防ぐ等の目的でワクチン接種を行う必要は、基本的にはありません。(ただし、免疫の状態によっては接種を検討する必要があります。)

若くても帯状疱疹を発症するリスクはありますが、比較的若い世代では帯状疱疹を発症しても重症化しにくいです。また、子どもの場合、水痘ワクチンを接種したかもしくは水ぼうそうにかかった経験のある方は、ワクチン接種は不要です。

帯状疱疹ワクチンを接種した方がよい人

高齢になると、帯状疱疹は重症化しやすくなります。そのため、成人後、水痘ワクチン接種や水ぼうそうを経験していても罹患から10年以上経過している場合は、ワクチン接種を受けておくことをお勧めします。

とくに基礎疾患のある方は、接種しておくと安心です。がん治療などで免疫力が下がると、帯状疱疹の発症リスクも高まります。治療開始する前に、主治医と相談して、ワクチン接種を検討しましょう。

そのほかにも、帯状疱疹の再発を繰り返している方は、ワクチン接種が推奨されます。

妊娠・出産を考えている女性

まだ水ぼうそうにかかった経験がなく、水痘ワクチンも接種していない場合は、早めに水痘ワクチンを受けることをお勧めします。水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZウイルス)が妊婦さんに感染した場合、感染した時期によっては、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。

水痘ワクチンとシングリックス®️の違い – 一覧

帯状疱疹予防ワクチンの比較

水痘ワクチン
(生ワクチン)
シングリックス®️
(不活化ワクチン)
接種回数(※) 1回 2回
接種方法 皮下注射 筋肉注射
接種時の痛み やや少ない 強い
接種後の副反応 軽い疼痛 疼痛、発赤、腫れ、発熱、筋肉痛など

ワクチンの
効果

帯状疱疹の
発症

51%減少 *1 97%減少 *2

帯状疱疹後神経痛
への移行

67%減少 *1 89%減少 *3
効果時の持続時間 3〜11年程度 9年以上
そのほか 妊婦、免疫不全の方は不可
*1 国立感染症研究所-帯状疱疹ワクチン ファクトシート参照
*2 Lal H, et al., N Engl J Med, 2015 を参照
*3 Cunningham AL, et al., N Engl J Med, 2015 参照
*4 Cook SJ, et al., Clin Ther 37, 2015 を参照

※ 接種回数
水痘ワクチンは基本的に1回ですが、抗体値の上がり方によっては、追加する場合もあります。
シングリックス®️は、1回目の接種から2ヶ月後に2回目を打ちます。

帯状疱疹ワクチンの費用

帯状疱疹ワクチンの費用は、水痘ワクチン(生ワクチン)とシングリックス®️(不活化ワクチン)で金額が異なります。

発症予防効果としてはシングリックス®️の方が高いですが、二回の接種が必要です。一方、水痘ワクチンは帯状疱疹予防を目的として接種する場合、基本的には一回の接種となります。

それぞれの金額は以下の通りです。

シングリックス®️ 水痘ワクチン
5万円程度
(2回分合計)
1万円程度

帯状疱疹ワクチンの助成

帯状疱疹ワクチンは接種費用を助成している自治体も多いです。検討される方は、一度、お住まいの地域の情報を調べてみることをお勧めいたします。 

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こちらの記事の監修医師

前田 文彦

前田皮膚科クリニック前田 文彦 先生

地域の皆さまに信頼されるクリニックを目指し、今後もより一層努力して参る所存でございます。今までと同様の診療を行って参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

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