最終更新日:2024.03.05

帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹の後遺症)とは?症状の違い、いつまで続くのかを解説

帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹の後遺症)とは?症状の違い、いつまで続くのかを解説

近年、帯状疱疹にかかる人が増え続けています。帯状疱疹になって皮膚の状態は戻ってもなお、痛みだけが続くことがあります。この行為症が、帯状疱疹後神経痛です。

帯状疱疹をしっかりと治し、後遺症が残らないようにするためには、できる限り早い段階で医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

本記事では皮膚科専門医に監修していただき、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛とハント症候群について解説しています。

帯状疱疹後神経痛とは? – 長引く後遺症

帯状疱疹は子どもの頃にかかった水ぼうそうの原因である「水痘・帯状疱疹ウイルス」が体の中の神経細胞の塊(神経節)の中に潜伏し、加齢や糖尿病、がんなどで体が弱ったときに再び勢いを増すことで発症します。帯状疱疹という名前の通り、神経の走行に帯状に沿って皮膚に発疹や痛みを起こす病気です。

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の後遺症です。帯状疱疹の治療を終えた後でも、数ヶ月や数年に渡って痛みが消えない後遺症に悩まされることがあります。帯状疱疹のときに炎症が長引き、神経が傷ついて変性してしまうと、たとえ炎症が治まって皮膚症状は治っても、神経そのものにダメージが残り、それが痛みのもとになるのです。

炎症は比較的、治りやすい傾向にありますが、損傷した神経は簡単には回復しません。帯状疱疹後神経痛が長引いてしまうのはそのためです。患者さんによっては、痛み止めを使っても効き目がなく、ブロック注射や塗り薬を試みている方もいらっしゃいます。

帯状疱疹後神経痛を未然に防ぐためには、帯状疱疹のサインを見逃さずに、早期に受診することが大切です。また、痛みを放置してしまったり、見逃してしまったという方でも、まずは医師に経過をしっかりと見てもらい、現状の症状に合わせた治療を検討していくことが重要です。

帯状疱疹後神経痛になりやすい人

帯状疱疹後神経痛を発症するほとんどが、60歳以上の方といわれています。若い年齢で帯状疱疹後神経痛へ移行する方はあまり多くはありません。

60歳以上になると帯状疱疹自体の治りも遅くなり、治療から1ヶ月経過しても、約半数近い方に痛みが残ります。高齢になればなるほど、そのリスクは高くなるため注意しましょう。

帯状疱疹後神経痛を発症するリスク要因は以下の通りです。

  • 高齢(60歳以上は注意)
  • 帯状疱疹時の皮膚症状が重い
    → 水ぶくれが大量にできる、広範囲に及ぶ、血の色をした水ぶくれがある など
  • 知覚異常がある
    → 刺激に対して敏感になる、もしくは鈍感になる

そのほか、

  • 糖尿病を患っている
  • 免疫不全の症状がある
  • 男性よりも、やや女性に多い
  • 喫煙者

などがあげられます。

帯状疱疹後神経痛(後遺症)はいつまで続く?

神経そのものがダメージを受けたことで生じる痛みを、神経障害性疼痛といいます。帯状疱疹に限らず、神経障害性疼痛は、治療に時間がかかることが多いです。また、帯状疱疹後神経痛の痛みに確実に効くという治療法も、残念ながら今のところは存在しません。

一方で、「帯状疱疹の後遺症は、一生治らないのか?」と不安になられる方も多いですが、神経にダメージが残っているからといって、一生治らないというわけではありません。症状が軽い方では、3ヶ月〜半年程度で、痛みが治まることもあります。なかには重度の症状に悩まされ、5〜10年と長きに渡って治療を続けなければいけない場合もありますが、それでも症状は徐々に軽減されていきます。

重要なのは、自分にあった治療法を見つけて、根気よくしっかりと治療を続けていくことです。幸いにも、帯状疱疹後神経痛があっても、それ自体がさらに悪化して深刻な病気を引き起こすことはありません。また、長い目で見れば、とくに治療しなくても、徐々に痛みが落ち着いていく場合も多いです。そのため、痛みとうまく付き合いながら、日常生活を楽しもうと意識を変えることが重要になります。

どのような治療が合うかは人それぞれですが、ある方法を試して効果がない場合でも決して諦めず、違う方法を試してみるなど積極的に取り組んでいくことが大切です。

帯状疱疹後神経痛の症状・痛みの特徴

帯状疱疹特有の皮膚症状がおさまってからも痛みの症状が続く場合は、後遺症のひとつである帯状疱疹後神経痛への以降が考えられます。

帯状疱疹の痛みと、帯状疱疹後神経痛が重なり、はっきりとは区別できない時期もありますが、帯状疱疹は眠っているときでさえ、強い痛みを感じることがありますが、帯状疱疹後神経痛は、就寝中や何かに集中しているときは痛みを感じにくいといわれています。

帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の痛みの違い

帯状疱疹の痛みは、「ヒリヒリ」「ズキズキ」といった痛みが特徴的です。発疹が出ている間は、神経の炎症も強く、強い痛みが生じがちです。皮膚に水ぶくれができると、ヒリヒリして寝返りをうつのが辛いほどの状態になることも少なくありません。水ぶくれがやぶれると、さらにズキズキとした痛みを感じる方が多いです。ピリピリと体をさくような痛みと表現される患者さんもいらっしゃいます。

一方、帯状疱疹後神経痛は、それまでの鋭い痛みは落ち着き、体の奥でなにかがうずくような痛みを感じることがあります。すでに発疹は落ち着いているため、見た目は普通なのにも関わらず、電気が走るような痛みを感じたり、痛みではなく肌に何かが張り付いているような違和感があると訴える患者さんが多いです。「痛みはないけれど、なんだか変な感じがする」といったような症状が目立ったら、帯状疱疹後神経痛である可能性を疑います。

風が吹くだけで激痛を感じる

帯状疱疹後神経痛の症状として、皮膚の感覚変化がでることもあります。痛みを感じているのに、その部分に触れても感覚がなかったり、皮膚がしびれていたりすることがあります。

また、本来は痛みを感じない適度の軽い刺激でも、激痛を感じるほどの状態になることもあります。これはアロディニア(異痛症)とよばれ、風が吹いただけでも痛んだり、服がこすれただけで激痛が走ることがあります。

さらに、痛みだけではなく、難聴や顔のゆがみ、極度のめまいに悩まされるケースもあります。

心理的な要因による帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹は、炎症や刺激による急性期の痛みから、やがて神経障害による痛み(帯状疱疹後神経痛)へと移行していきます。

帯状疱疹の急性期は、二度と経験したくないと思うほどの激痛に見舞われる方が多いです。その辛い痛みが記憶として鮮明に焼きついてしまいます。

脳に記憶されたその痛みを思い起こしたとき、実際に痛みを感じることがあると考えられています。

帯状疱疹の後遺症、ハント症候群とは

水ぼうそうにかかると、全身の神経組織にウイルスが潜伏します。そのため、帯状疱疹は身体のさまざまな場所で発症します。

顔面神経の一部である「耳の皮膚の知覚神経」でウイルスが再び勢いを増すと、この神経と同じ経路を通る表情筋の運動神経に麻痺が起こります。これを顔面神経麻痺といいます。

さらに、顔面神経の近くには聴覚をつかさどる蝸牛神経(かぎゅうしんけい)や、身体のバランスをつかさどる前庭神経(ぜんていしんけい)が存在します。ここにも同時にウイルスが再び活動をはじめると、難聴やめまいを合併します。

ハント症状群とは、

  • 顔面神経麻痺
  • 難聴
  • めまい
  • 耳の帯状疱疹(耳や耳の穴の中に発疹が出る)

などが生じたものを指す病態です。

これらの症状が同時に出る場合もあれば、間をおいて出る場合もあります。

ハント症候群の治療

発症後すぐに抗ウイルス薬と副腎皮質ステロイド薬を用いて、神経障害の悪化を食い止めることが優先されます。しかし、一旦強く前庭神経が障害されてしまうと、バランス機能が低下したままの状態になってしまい、これを改善する手立ては残念ながら今の所ありません。

リハビリテーションによって、健康な耳と機能が低下した側の耳のアンバランスを改善したり、耳以外の部位でバランス機能を肩代わりすることで、症状を軽減させることができます。

ハント症候群は何科を受診する?

ハント症候群の症状はさまざまなので、患者さんは症状に合わせて受診する科を選定することが推奨されます。

たとえば極度のめまいが残っている方は、めまいの専門外来のある耳鼻咽喉科を受診しましょう。そのほか、脳神経内科、皮膚科、内科でも受診はできます。

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こちらの記事の監修医師

前田 文彦

前田皮膚科クリニック前田 文彦 先生

地域の皆さまに信頼されるクリニックを目指し、今後もより一層努力して参る所存でございます。今までと同様の診療を行って参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

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