はい。現在、最も有効な予防法は帯状疱疹ワクチンの接種です。
特に50歳以上になると免疫力が低下しやすく、発症率が高まるため、ワクチンでの予防が推奨されています。また、すでに帯状疱疹を経験した方も再発予防として有効です。
帯状疱疹の発症を予防する選択肢のひとつとなるのが、帯状疱疹ワクチンです。現在、帯状疱疹の発症を予防するもっとも有効な手段とされています。
どのようなワクチンにも、程度は人それぞれですが、発熱などの副反応(副作用)が起こるリスクがあります。そのため、感染予防効果(重症化阻止効果)のベネフィットと副反応等のリスクを天秤にかけて、帯状疱疹ワクチンを受けるかどうかを決定することが大切です。
本記事では、皮膚科専門医に監修していただき、帯状疱疹の予防となる「帯状疱疹ワクチン」の効果と副作用、費用を解説しています。
目次
帯状疱疹は、過去に水ぼうそうにかかった経験のある方であれば、誰でも発症する可能性があります。発症の原因となるウイルスは免疫力が低下した際に再活化しやすいため、日々、生活改善をはかりながら免疫力を維持することが大切です。もちろん、生活改善だけで帯状疱疹の発症が防げるかというと、そうは言えません。
そこで、帯状疱疹の発症リスクを軽減させる手立てとなるのが、帯状疱疹ワクチンの接種です。今、水ぼうそうにかかる子どもが減少している状況にあります。そのため、免疫機能(ブースター効果)を得るためには予防ワクチンの接種が必要とされています。
帯状疱疹ワクチンを接種することで、帯状疱疹を発症するリスクを軽減させることができるだけではなく、発症した場合でも重症化しにくいことがわかっています。
帯状疱疹は60歳以降の方に発症するケースが多く、発症時に適切な治療を受けないと、帯状疱疹後神経痛とよばれる後遺症に悩まされる可能性が高くなります。帯状疱疹の予防ワクチンには、この帯状疱疹後神経痛に移行しにくいといった効果も期待されています。
帯状疱疹の予防ワクチンには、
この2つの種類があります。
水痘ワクチンとシングリックス®️の違い
水痘ワクチンは、弱毒化したウイルスを用いる生ワクチンとよばれるものです。水ぼうそうの予防を目的として乳幼児の定期接種で使用されています。一方、シングリックス®️はウイルスの成分を利用した不活化ワクチンとよばれます。いずれも低下している免疫力を高める効果が得られます。
水痘ワクチンは、水ぼうそうの経験がない人には安全なかたちで水ぼうそうのウイルスに対する免疫力をつけ、水ぼうそうにかからないようにすることができます。そのため、これまで水ぼうそうにかかったことがないという方は、水痘ワクチンが推奨されます。
また、過去に水ぼうそうにかかったことがある人でも、すでにある程度備わっている水ぼうそうのウイルスに対する免疫力を、高める効果が期待できます。水痘ワクチンを接種することで、帯状疱疹の発症リスクは半減するといわれています。
もう一方のシングリックス®️は、帯状疱疹予防を専門とするワクチンです。そのため、水ぼうそうの予防効果はありません。しかし、帯状疱疹を予防する効果はとても高いとされています。
それぞれ、接種できる対象者や効果も異なります。自分の健康状態を含めて主治医とよく相談しながら選ぶことが大切です。
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZウイルス)に対する免疫力は、水ぼうそうが治ったあとや水ぼうそうの予防ワクチンを接種して間もない時期がピークとなります。(そのあとは徐々に効果が低下していきます。)
成人になって近年、水ぼうそうにかかったという方、また5年以内に帯状疱疹にかかった方は、発症前よりも免疫力は高まっていると考えられます。そのため再発を防ぐ等の目的でワクチン接種を行う必要は、基本的にはありません。(ただし、免疫の状態によっては接種を検討する必要があります。)
若くても帯状疱疹を発症するリスクはありますが、比較的若い世代では帯状疱疹を発症しても重症化しにくいです。また、子どもの場合、水痘ワクチンを接種したかもしくは水ぼうそうにかかった経験のある方は、ワクチン接種は不要です。
高齢になると、帯状疱疹は重症化しやすくなります。そのため、成人後、水痘ワクチン接種や水ぼうそうを経験していても罹患から10年以上経過している場合は、ワクチン接種を受けておくことをお勧めします。
とくに基礎疾患のある方は、接種しておくと安心です。がん治療などで免疫力が下がると、帯状疱疹の発症リスクも高まります。治療開始する前に、主治医と相談して、ワクチン接種を検討しましょう。
そのほかにも、帯状疱疹の再発を繰り返している方は、ワクチン接種が推奨されます。
まだ水ぼうそうにかかった経験がなく、水痘ワクチンも接種していない場合は、早めに水痘ワクチンを受けることをお勧めします。水ぼうそうのウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZウイルス)が妊婦さんに感染した場合、感染した時期によっては、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。
帯状疱疹予防ワクチンの比較
水痘ワクチン (生ワクチン) |
シングリックス®️ (不活化ワクチン) |
||
---|---|---|---|
接種回数(※) | 1回 | 2回 | |
接種方法 | 皮下注射 | 筋肉注射 | |
接種時の痛み | やや少ない | 強い | |
接種後の副反応 | 軽い疼痛 | 疼痛、発赤、腫れ、発熱、筋肉痛など | |
ワクチンの |
帯状疱疹の |
51%減少 *1 | 97%減少 *2 |
帯状疱疹後神経痛 |
67%減少 *1 | 89%減少 *3 | |
効果時の持続時間 | 3〜11年程度 | 9年以上 | |
そのほか | 妊婦、免疫不全の方は不可 | ー |
※ 接種回数
水痘ワクチンは基本的に1回ですが、抗体値の上がり方によっては、追加する場合もあります。
シングリックス®️は、1回目の接種から2ヶ月後に2回目を打ちます。
帯状疱疹ワクチンの費用は、水痘ワクチン(生ワクチン)とシングリックス®️(不活化ワクチン)で金額が異なります。
発症予防効果としてはシングリックス®️の方が高いですが、二回の接種が必要です。一方、水痘ワクチンは帯状疱疹予防を目的として接種する場合、基本的には一回の接種となります。
それぞれの金額は以下の通りです。
シングリックス®️ | 水痘ワクチン |
---|---|
5万円程度 (2回分合計) |
1万円程度 |
帯状疱疹ワクチンは接種費用を助成している自治体も多いです。検討される方は、一度、お住まいの地域の情報を調べてみることをお勧めいたします。
はい。現在、最も有効な予防法は帯状疱疹ワクチンの接種です。
特に50歳以上になると免疫力が低下しやすく、発症率が高まるため、ワクチンでの予防が推奨されています。また、すでに帯状疱疹を経験した方も再発予防として有効です。
日本で承認されているワクチンは2種類あります。
乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケン):1回接種で済みますが、免疫力の低い人には使用できません。
組換え帯状疱疹ワクチン(シングリックス):2回接種が必要ですが、高齢者や免疫抑制状態にある人にも使える不活化ワクチンです。現在、医療現場ではシングリックスが主流になっています。
シングリックスは臨床試験により、50歳以上で約97%、70歳以上でも約90%の発症予防効果が報告されています。
さらに、帯状疱疹後神経痛(PHN)などの後遺症の予防効果も高く、接種のメリットは非常に大きいとされています。
推奨されるのは50歳以上の成人です。
特に60代〜70代は発症率と重症化リスクが最も高いため、接種の意義が大きい世代です。がん治療中や免疫低下のある方でも、シングリックスであれば接種可能な場合があります。
はい。
帯状疱疹は一度かかっても再発する可能性があり、特に加齢とともに再発率が上がります。過去に発症経験がある方も、一定期間(半年〜1年)を空けてからのワクチン接種が推奨されます。
副作用としては、接種部位の痛み、腫れ、赤み、筋肉痛、発熱、倦怠感などが見られます。
これらは接種後24〜72時間以内に出ることが多く、通常は数日以内に自然におさまります。まれにアナフィラキシーなどの重い副反応もあるため、接種後15〜30分は医療機関で経過観察を受けることが推奨されています。
現時点では、帯状疱疹ワクチンは自費診療(任意接種)であり、健康保険の適用外です。
シングリックス:1回約20,000〜25,000円 × 2回(合計で約4〜5万円)
ビケン:1回約8,000〜10,000円程度
ただし、一部の自治体では助成制度を設けているため、接種前に住んでいる市区町村に確認することをおすすめします。
以下の違いがあります。
生ワクチン(ビケン):弱毒化されたウイルスを使用するため、免疫力が低下している人や高齢者には使えないことがあります。ただし、1回接種で済むという利点があります。
不活化ワクチン(シングリックス):ウイルスを含まないため安全性が高く、幅広い年齢層・疾患を持つ人に対応可能です。副反応はやや出やすい傾向にありますが、予防効果は非常に高いです。
100%発症を防げるわけではありません。
100%発症を防げるわけではありませんが、発症しても症状が軽く済む、後遺症が残りにくくなるといった効果が期待されます。「かからない」よりも「重くならないこと」に価値があるワクチンと考えられています。
内科、皮膚科、予防接種に対応している医療機関で受けられます。
ワクチンは在庫に限りがあることが多く、予約制としている医療機関が大半です。また、2回目のスケジュールも重要なため、事前に計画的な予約をおすすめします。
前田皮膚科クリニック前田 文彦 先生
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