湿疹とは?皮膚炎の原因と種類、ストレスからくる症状を写真で解説
湿疹(しっしん)は、皮膚の表面で炎症が起こる病気の総称で、皮膚炎(ひふえん)ともよばれます。
湿疹(皮膚炎)は、皮膚が赤くなったり、ブツブツや水ぶくれができることもあり、強いかゆみを伴うのが特徴です。湿疹にはいくつかの種類があり、それぞれ症状や原因が異なるため、それぞれの病態に合わせた適切な治療(対処)とセルフケア(予防)が重要です。
本記事では皮膚科専門医に監修していただき、湿疹(皮膚炎)とストレスとの関係、原因と種類を写真で解説しています。
目次
湿疹(しっしん)とは?
私たちの皮膚は、外側から
- 表皮
- 真皮
- 皮下組織
の3層構造で成り立っています。
湿疹(しっしん)は、この皮膚の表層となる表皮と真皮上層に炎症が起こる病態です。
湿疹は皮膚の症状として幅広い意味合いで使われることが多いですが、実際は疾患名や皮膚に起こっている病態を表すものです。
皮膚のもっとも外側にある表皮は薄くて丈夫な層で、細菌やウイルスなどの刺激物質や紫外線などが内部へ侵入しないように防護する役割があります。それらがなんらかの要因で破られ、異物が侵入してしまうと、皮膚免疫がはたらいて異物を攻撃します。その防御反応が皮膚の炎症(湿疹)という形であらわれます。
皮膚炎と湿疹の違い
皮膚炎と湿疹は同じ意味合いで使用されることも多いですが、医療の現場では「原因がある程度特定できるもの」を「●●皮膚炎」などという疾患名でよび、それ以外の「原因がわからないもの」を「湿疹」という病態としてよぶのが一般的です。
湿疹が出たときの受診の目安
湿疹はある日突然かゆみが出て、そのまま長引き慢性化することがあります。
- 湿疹の症状が治らずに長引く
- 湿疹が治っては再発をくり返す
- 市販薬やスキンケアの成果が出ない
などの状況であれば、早めに皮膚科を受診することが大切です。
慢性化し、その間に不適切な処置・ケアをしてしまうと、治りも悪くなってしまうため注意が必要です。
湿疹(皮膚炎)の症状・病態の進行
湿疹(皮膚炎)があらわれてすぐ、もしくは数日程度経過したものを急性湿疹といいます。そして、湿疹があらわれてから1週間以上経過した状態を慢性湿疹といいます。
それぞれの湿疹の特徴を解説します。
急性湿疹の症状と特徴
急性湿疹の主な症状は、
- かゆみ
- 赤み
- 細かいブツブツ
です。
皮膚に赤み(紅斑:こうはん)がみられ、やがて皮膚にブツブツした発疹(丘疹:きゅうしん)が現れます。
細かいブツブツが小さな水ぶくれ(小水疱)になると、膿をもった水ぶくれ(膿疱:のうほう)へと病態が進行していきます。その後、皮膚はジュクジュクとただれた状態(びらん)になります。
細かいブツブツした発疹や小さな水ぶくれが、かさぶた(痂皮:かひ)になると、うろこ状のゴワゴワとした皮膚は徐々にはがれ落ちて(落屑:らくせつ)、最終的にはきれいな肌へと自然に治癒していきます。
また、必ずしもこの経過をたどるというわけではなく、実際には上記の図の通り、途中で自然治癒することもあります。
慢性湿疹の症状と特徴
湿疹の治りが悪く、症状が長引き慢性化してしまうことがあります。
慢性湿疹の主な症状は、
- 皮膚が分厚く固くなる
- 皮膚に潤いがなくなり乾燥する
- 色素沈着が起こる
- ゴワゴワとした肌触り
です。
慢性化すると皮膚は次第に分厚くなり、ザラザラ・ゴワゴワしていくことがあります(苔癬化:たいせんか)。
そして、そのまま黒ずんで痕が残ってしまう(色素沈着)ことも少なくありません。そうなると、半年〜1年ほど治るまでに時間を要します。
そのため、なるべく早めにその湿疹の状態に応じた適切な治療を受けることが大切です。
湿疹の種類・原因を写真で解説
アトピー性皮膚炎
接触皮膚炎(かぶれ)
名前の通り皮膚に直接ふれた(接触した)刺激物質やアレルゲンがきっかけで発症します。接触皮膚炎はかぶれともよばれます。原因物質が触れた部分を中心に、赤みのある腫れやかゆみなどの症状が起こります。
近年増加傾向にあるのが、金属(ニッケル、酸化クローム、コバルト)が原因となって発症する接触皮膚炎です。以前は皮膚炎を起こしにくいとよばれていた金も、最近では原因物質になることが多くなっています。
汗疹(あせも)
汗をかきやすい首や胸、わきの下、股などにできやすい湿疹です。汗のでる管がふさがって汗がたまり、汗管の外に漏れ出してしまうことで周りの組織に影響することで発症します。汗管のふさがる場所によっていくつかの種類に分かれます。いずれも汗をかいたらこまめに拭くなどして、肌を清潔に保つことが大切です。
汗疱(汗疱状湿疹、異汗性湿疹)
汗疱(かんぽう)とは、主に手のひら、足の裏、指の間に小さな水疱ができる皮膚疾患です。これらの部分に共有するのは、汗腺が非常に活発であるという点です。汗疱は、かゆみを伴うことが多く、破れると痛みを伴うことがあります。暑い季節やストレス、金属アレルギーなどが原因で起こることがありますが、正確な原因は人によって異なります。
手湿疹(主婦湿疹)
手の皮膚のバリア機能が低下して起こる皮膚炎を手湿疹といいます。水仕事をする主婦の方に多くみられることから、主婦湿疹ともよばれています。洗剤などの刺激やアレルギーなど、様々な原因によって発症することがあり、皮膚科で診察することの多い病気です。
外耳道湿疹
耳の外側である耳介、そして耳の穴の鼓膜の手前までの通り道を外耳道といい、この2つを合わせて「外耳」といいます。この外耳道に湿疹ができる病態を、外耳道湿疹とよびます。
外耳に炎症が起こる病態を外耳炎、外耳道に炎症が起こると外耳道炎とよばれますが、これらは細菌感染などが原因で起こります。一方、この外耳道湿疹は、細菌感染が原因とは限らず、様々な要因で発症します。
脂漏性皮膚炎
頭皮や額、小鼻のわき、わきの下など、皮脂分泌の多い部分に起こる湿疹性の皮膚炎です。ふけ症も脂漏性皮膚炎の一種です。乳児期と思春期以降に多く、大人の場合は放置していると症状が悪化しやすく、再発を繰り返してしまうことが少なくありません。
皮脂欠乏性湿疹
主に乾燥肌が原因で発症する皮膚炎です。加齢や洗いすぎによって発症することが多く、乾燥しやすい秋から冬の時期や乾燥する地域で多くみられます。高齢者が背中などにかゆみをうったえるときは、乾燥が原因であることが多いです。これは皮脂の分泌が減少することによるもので、老人性乾皮症状ともいいます。
貨幣状湿疹
赤い貨幣のような形状でかゆみの強い湿疹が特徴的です。湿り気をもつ赤いブツブツとした丘疹や小さな水ぶくれ(小水疱)が集まり、角質が剥がれたり、かさぶたを伴うことがあります。
貨幣状湿疹の原因はさまざまで、虫刺されの後の痒疹やニッケルなどの接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎などから移行して発症することがあります。原因物質がある場合は接触を避け、できるだけ原因への対処を行うことが大切です。
湿疹(皮膚炎)はストレスで悪化する?
皮膚に現れる症状は、外部からの物理的な刺激や、アレルギー反応などの体の内部から起こる問題があげられます。そのため、皮膚疾患はその発症原因となる要因を特定し、それをできる限り回避することがとても重要となります。
一方で、なんらかの皮膚症状が出ているにもかかわらず、原因が特定できないケースも少なくありません。
たとえば、
- 肌の調子が悪くお化粧のりが悪い
- 寝不足になると肌が荒れやすい
- 忙しくなると、顔に吹きでものができやすい
など、日常生活で肌のトラブルを経験されたことのある方は多いと思います。
このように病気とは別に原因がはっきりとしない皮膚トラブルには、何らかのストレスが関係している可能性が考えられます。
皮膚症状に関係するストレス
ストレスには主に、
- 心理的ストレス
- 身体的ストレス
- 環境的ストレス
といった、いくつかの種類があります。
それぞれが単独で影響することもありますが、ほとんどの場合、複雑に絡み合って皮膚に悪影響を及ぼすことが多いと考えられています。
人はストレスを感じると、脳がそのストレスに打ち勝とうと体に指令を出し、抗ストレスホルモンを全身に伝えます。この反応は、私たちが生まれ持った生体防衛機能のひとつで、本来はストレスにうまく柔軟に対処するために発動する機能です。
一方で、ストレスが強すぎたり、ストレスが長引いてしまうと、自律神経や免疫系のはたらきが本来の機能を果たせなくなり、やがて全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがあります。皮膚も体の一部なので、無理をすれば支障をきたしてしまうのは当然の結果です。
「仕事が忙しい」「しっかりと睡眠時間をとれない」「規則正しい食事を摂れない」という状況は、身体にとっても心にとっても大きなストレスになります。これまでは何ともなかった食べ物やお薬、または暑さ・寒さといった気温変化などの外部刺激に対してとても敏感になり、皮膚の免疫細胞が過剰反応を起こしてしまうことがあります。それが、かゆみや赤みなどの炎症を誘発します。
吹き出物やニキビができやすくなるという方は、ストレス反応が続くことで、全身のホルモンのバランスが崩れて、その影響で皮脂分泌が過剰になってしまうことで起こる現象です。
それらを回避するには、ストレスと上手に付き合い、溜め込まないようにする工夫が必要です。
湿疹(皮膚炎)の治療・対処法
湿疹の発症原因がわかっている場合は、まずはその原因物質との接触を避けることが大切です。
原因が特定できないケースや、湿疹(皮膚炎)の症状が強く出ている、または長引いているような場合は、薬物療法によって症状改善を図っていきます。
湿疹はさまざまな種類に分けられますが、どの病態にも共通しているのは「皮膚の表面に起こる炎症」であるという点です。そのため、湿疹の基本治療では、この炎症に対するステロイドの外用薬が使われることが多いです。(抗アレルギー薬、保湿剤を使用することもあります。)
まずは診察で湿疹の状態や炎症の程度を確認し、患者さんのお身体に合わせて治療を進めていきます。湿疹が出ている場所、患者さんの体質や病態の程度によって、塗り方や回数は異なります。
お薬には病気やケガを治療するなどの効果・効能がある一方で、どのようなお薬にも副作用というリスクが伴います。主治医の指示に従って、治療を進めることが大切です。
自己判断で使用を中止してしまうと、症状が再発してしまう皮膚疾患もありますので、注意しましょう。
湿疹(皮膚炎)の予防・セルフケア
湿疹を予防するには、日々の生活の中で肌を清潔に保つことを意識し、肌のバリア機能を守ることが大切です。バリア機能を守るためには、紫外線を避けたり、小まめに保湿をしたりといったセフルケアが必要不可欠です。
また、ストレス等も肌トラブルの誘発・悪化要因になることを心に留めて、生活習慣を見直して体調を整えることが大切です。
こちらの記事の監修医師
佐々木皮膚科佐々木 豪 先生
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