はい。子どもほど多くはありませんが、大人も感染することがあります。
大人がかかると喉の痛みや高熱、全身のだるさが強く出ることがあり、子どもより重症化するケースもあります。
ヘルパンギーナは子どもの「三大夏風邪」とよばれている感染症の1つです。東京都では2019年以来、4年ぶりに「流行警報」を出し、注意を呼びかけています。(2023年6月現在)
ヘルパンギーナはとても強い感染力をもち、子どもだけでなく大人にも感染する病気です。
本記事では、ヘルパンギーナの診療をしている医師に監修していただき、夏風邪のウイルスによって起こるこの病気の原因菌や症状、治療方法について解説しています。
目次
ヘルパンギーナは夏風邪のウイルスによって起きる感染症です。とくに小さなお子さん(6ヶ月以降の乳幼児)がかかることが多い病気です。
ヘルパンギーナの発症原因となるウイルスは複数の型があるため、一度感染しても再びヘルパンギーナに感染することがあります。
ヘルパンギーナは、人から人へとうつる病気です。
主な感染経路は、のどの分泌物に含まれるウイルスが咳やくしゃみなどの飛沫によって感染したり、便に排泄されたウイルスが空気中に舞って口から感染したりするケースが考えられます。
ウイルスの潜伏期間は、3〜5日程度と考えられています。
突然、39度前後の高熱が出て、のどの奥(のどちんこの根本付近)に小さな水疱がたくさんできます。
のどは腫れて、唾液を飲み込むのすら辛くなるほどの痛みがでます。2〜3日して水疱が破れると、さらに痛みが強くなります。のどが痛いと食べるのが辛くなるため、食欲が低下したり、吐いたりすることもあります。
咳や鼻水・くしゃみなどの症状はでません。また、水疱は口の中だけにでき、手足口病のように手や脚に発疹が出ることはありません。(口以外にも水疱ができれば、手足口病と診断されます。)
発熱は2〜3日程度で下がり、水疱は1週間以内に治ることがほとんどです。
発熱初期に、熱性けいれんを引き起こすことがあります。また、ごくまれに髄膜炎を合併することがあるため、何度も繰り返す嘔吐や頭痛があった場合は注意が必要です。
ヘルパンギーナは主に、コクサッキーウイルスA群(Coxsackie virus GroupA)を原因とします。そのほか、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスで発症する場合もあります。
コクサッキーウイルスはヘルパンギーナのほか、同じく「三大夏風邪」とよばれている感染症の1つ「手足口病」の原因病原体でもあります。
通常ウイルスに一度感染した場合、体には免疫ができます。しかし、ヘルパンギーナのウイルスにはさまざまな型があるため、毎年のように何度もかかることがあります。
基本的に経過は良いことが多いですが、
など
これらの症状がみられる場合は、早めに受診するようにしましょう。
ヘルパンギーナは、インフルエンザのようなその場でできる迅速検査はありません。体の診察で、のどの状態を確認し、ヘルパンギーナと診断することができます。
また、ウイルスに対する特効薬もないため、対症療法が主体となります。基本的には安静にしていれば自然に治りますので、心配のいらないことが多いです。
高熱でぐったりしていたり、のどの痛みがひどくて辛そうな場合は、解熱鎮痛坐薬など症状を和らげる薬が処方される場合もあります。
のどが痛くて、十分な水分・食事がとれない場合は、脱水症状にならないように注意する必要があります。もし脱水症状がみられた場合は、入院をして点滴治療をすることがあります。
ヘルパンギーナは子供だけでなく、大人も感染する可能性があります。
夏に流行するヘルパンギーナは、高温のために大人も体力を消耗しやすい時期です。免疫力が低下しているときに、お子さんからヘルパンギーナに感染することがあります。
大人が感染すると、乳幼児よりも症状が重くなり、また長引く傾向があります。
発熱は39〜40度の高熱となり、頭痛、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの症状も伴います。さらに、口の中の粘膜にできる発疹がのどの痛みを引き起こし、痛みのために食事や水分摂取が困難になることがあります。
大人が発症するリスク要因としては、睡眠不足や疲労などによって体のコンディションが乱れているときがあげられます。また、ヘルパンギーナに感染したお子さんを看病している間に、家族全体が感染することがよくあります。「子供が回復したと思ったら、次に看病していた大人が発症した」というパターンです。
そのため、子供がヘルパンギーナに感染した場合は、感染予防対策を適切に行うと同時に、看病している大人も発症しないように十分な休息をとることが重要です。
夏に流行するウイルス性の感染症です。
ヘルパンギーナは主に夏に流行するウイルス性の感染症で、5歳以下の乳幼児を中心に多くみられます。コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスが原因で、のどの奥に水疱や潰瘍ができ、発熱や喉の痛みを引き起こします。
はい。子どもほど多くはありませんが、大人も感染することがあります。
大人がかかると喉の痛みや高熱、全身のだるさが強く出ることがあり、子どもより重症化するケースもあります。
感染経路は飛沫感染(くしゃみ・咳)、接触感染(手やおもちゃなど)、そしてウイルスが排出される便を介した経口感染です。
とくに乳幼児は口に物を入れる行動が多いため、感染が広がりやすいといわれています。
ヘルパンギーナは「高熱」と「のどの水疱」が主な症状です。
両者ともエンテロウイルスによる感染症で似ていますが、ヘルパンギーナは「高熱」と「のどの水疱」が主な症状です。一方、手足口病は発熱が比較的軽く、「口・手・足に発疹」が出るのが特徴です。
潜伏期間は2~5日程度です。
通常、感染してから症状が出るまでの潜伏期間は2~5日程度です。その後、発熱や喉の痛みが数日続きます。
特効薬や抗ウイルス薬はなく、症状を和らげる「対症療法」が基本です。
解熱剤や痛み止め、喉の痛みを和らげる飲み物などを用いて、自宅で安静に過ごすことが重要です。水分補給をしっかり行いましょう。
1週間ほどで回復します。
一般的には3〜5日程度で熱が下がり、1週間ほどで回復します。ただし、喉の痛みは長引くことがあるため、無理に固い食べ物を摂らず、やわらかい食事を心がけましょう。
ぐったりしている、水分がとれない、熱が4日以上続く、けいれんを起こした、などの症状がある場合は、早めに小児科や内科を受診してください。
大人の場合も、発熱が続くときは医療機関での確認が必要です。
解熱し、元気が戻ってからであれば登園・登校・出勤可能とされています。
ただし、ウイルスは解熱後も数週間、便中に排出されるため、引き続き手洗いや衛生管理には注意が必要です。
ワクチンや特効薬はないため、こまめな手洗い・うがい、タオルや食器の共有を避けることが基本です。
集団生活の場では、感染者との接触を避けることも大切です。
森田小児科森田 順 先生
岩手県盛岡市で「森田小児科」を開業しています、院長の森田 順です。
当院は「科学的根拠に基づいた医療(EBM: Evidence Based Medicine)の提供」を治療方針としてかかげ、闇雲に検査をするのではなく、病歴と身体診察を重視した診療を心がけています。
私は医大を卒業後、当時厳しいという評判のあった「沖縄県立中部病院」でスーパーローテート研修(内科・外科・産婦人科・麻酔科・精神科・救急科・小児科・NICU)を行いました。すぐに検査するのではなく、患者さんの病歴と身体診察を重視する病院で、私の医師としての基礎はそこで叩き込まれました。
日本各地を周り、今、自分の育った地域、岩手県で、健康面で皆様のお手伝いができることに、喜びを感じています。社会は絶えず目まぐるしく変化し、ニーズも変わってきましたが、その変化に対応しつつ、皆様のお役に立てるよう今後とも努力していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
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