おしりからの出血・血便というと痔(じ)をイメージされる方は多いのではないでしょうか。
確かに、下血(血便)の原因でもっとも多いのが痔の疾患です。一方、そのほかにも食あたり(食中毒)やさまざまな病気によって血便を引き起こすことがあります。
その中には重大な疾患の兆候である可能性もあるため、血便が認められた際には自己判断せずに医療機関での診察が必要です。
どこも痛くないのに血便 – 痔
など、痔にはいくつかの種類がありますが、それらが原因で血便が起こることがあります。
痔による血便の特徴として、
- 便の表面に少量の血が付着している
- 排便後に肛門からポタポタと血がしたたり落ちる
- トイレットペーパーに血が付いている
などがあげられます。
食あたりによる血便
細菌に汚染された食品を食べてしまうことで、腸内で炎症が発生し出血が起こり、その結果、血便が出ることがあります。高温多湿である梅雨や夏にかけての時期は、食あたりの原因となる細菌が育ちやすい環境にあります。
食あたりを起こすと、血便だけでなく
など、さまざまな症状を併発することがあります。
そのほかにも食あたりには、ノロウイルスをはじめ、ロタウイルス・アデノウイルスなど、ウイルスが寄生した食品や感染者を介して起こるウイルス性のものもあります。
食中毒菌のひとつ、カンピロバクターにも注意が必要です。近年、食中毒発生件数で非常に多くの割合を占めています。
胃・十二指腸潰瘍による血便
胃潰瘍とは、胃酸の影響で胃の粘膜が損傷し、部分的に欠損する病気です。鮮やかな赤い血ではなく、黒ずんだ血が混じった血便が出ることがあります。
血便のほか、
なども見られることがあります。
同様の病態が十二指腸に起こるものを、十二指腸潰瘍といいます。胃潰瘍と同様に、黒っぽい血が混じった血便が出ます。とくに空腹時や夜間に腹痛が生じることが多く、胃が活発で胃酸の分泌量の多い若い年代に多い傾向があります。
若い人に多い血便 – 潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜で慢性的な炎症が起こり、ひらん(ただれた状態)や潰瘍(粘膜の欠損)が生じる病気です。潰瘍性大腸炎の原因は明らかになっていません。 腸内細菌の関与や自己免疫反応の異常、食生活の変化(欧米型の食事)が考えられていますが原因は不明です。
潰瘍性大腸炎によって、下痢とともにベタベタとした血液がついている便(粘血便)が出ます。重症化すると発熱や腹痛も出ます。
大腸憩室出血による血便
大腸憩室とは、大腸の壁が5-10mmほどの大きさで袋状に突出した部分です。この袋の内部の血管が破裂して血が出る現象を大腸憩室出血と呼びます。特に腹痛などの前兆なく突然の出血が起こることが一般的です。
憩室があるだけで病気とは考えられません。出血を経験する大腸憩室保有者は少数で、特に男性、高齢者、肥満者、そしてNSAIDs(解熱鎮痛剤)やアスピリンを使用している人々に多いとされています。
虚血性腸炎による血便
虚血性腸炎は、大腸の血流が遮断されることで一部が虚血状態になり炎症が起こる病気で、腹痛を伴うことが多いです。血管が問題となるケースでは、通常は動脈硬化が原因とされます。
特に高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を持つ高齢者では、動脈硬化の進行が疑われます。一方、腸自体が問題の場合は、便秘が原因であるとされています。便が腸内で停滞することで圧力が上がり、それが虚血を引き起こすと考えられています。
大腸ポリープによる血便
大腸ポリープは大腸内にイボ状の腫瘍が見られる病態です。初期段階で症状はほとんど見られませんが、病気が進行すると出血し血便が出ることもあります。
大腸ポリープの一部はがん化のリスクがあるため、定期的な大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が推奨されます。
大腸がんによる血便
大腸がんは女性の部位別がん死亡率のトップ、男性でも肺がんに次いで2位となっています。(2021年統計)
早期の大腸がんは自覚症状はほとんどありませんが、大腸がんが進行すると、発生場所によっては血便をはじめ下痢・腹痛・便が細くなるなどの便通異常、体重減少がみられます。
大腸がんの前段階として大腸ポリープがみられるため、早期に大腸ポリープを切除することで予防できます。そのため、定期的な大腸内視鏡検査で早期発見と治療を行うことが重要です。