眼科を受診しましょう。
まぶたにかゆみ・痛み・腫れ、あるいはできものができた場合、「眼科と皮膚科のどちらに受診すべきか?」という疑問を持たれる方は多いのではないでしょうか。
まぶたは両方の診療科が対応可能ですが、眼科を受診することをお勧めします。なぜなら、まぶたの症状は単に皮膚のトラブルではなく、目のトラブルで起こっている可能性が考えられるためです。
特に炎症が起こる急性霰粒腫の場合は、ものもらいとの区別が難しい場合もあります。そのため、目の状態を確認できる眼科を受診することが望ましいです。
まぶたに出来物ができて、腫れたり痛みを感じたりする原因でもっと多いのが「ものもらい」です。ものもらいには、霰粒腫(さんりゅうしゅ)とよばれるタイプと、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)とよばれるタイプがあります。
この霰粒腫と麦粒腫は原因も治療法も異なるため、気になる症状がでたら早めに眼科を受診することが大切です。
本記事は、まぶたの出来物(ものもらい)の診察をしている眼科医に監修していただき、霰粒腫・麦粒腫の原因と治し方について解説しています。
目次
まぶたは異物の侵入を防ぎ、目の表面を涙で潤して乾燥を防ぐなど、主に眼を守るためにはたらいています。
まぶたの出来物といえば「ものもらい」をイメージされる方は多いと思いますが、この名前は俗称であり、医学的に別の名前があります。
それが
この2つです。
一般的に「ものもらい」というと、麦粒腫をさすことが多いです。地域によっては「めばちこ」や「めいぼ」とよばれることもあるようです。
霰粒腫と麦粒腫はともに眼瞼(まぶた)が腫れる疾患ですが、原因が異なります。
まぶたのつけ根には、目の潤いを保つために涙の成分を分泌する「マイボーム腺」とよばれる分泌腺があります。

このマイボーム腺の出口に脂肪などがつまると、その中に粥状の分泌物がたまって肉芽腫(にくげしゅ)という小さな硬いしこり(腫瘤)が形成されることがあります。これが霰粒腫という病気です。まぶたの中にコロコロとした小さな「いぼ」のようなものができるため、霰粒腫は「めいぼ」ともよばれています。
一方、麦粒腫はマイボーム腺に脂肪が溜まって、細菌感染を起こすことで発症します。上まぶたが腫れたり、まばたきをすると痛みを感じるようになります。
いずれも乳幼児から高齢者まで幅広い年代に発症する可能性のある病気です。感染を伴うとどちらの疾患も痛みを伴うため、両者の区別ができないことも少なくありません。
目の疾患で気になるのは、人にうつす(もしくはうつされる)可能性はあるのかという点です。霰粒腫と麦粒腫は、主に目の周りを不衛生にしてしまうことで起こる病態です。そのため、人にうつることはありません。
しかし「ものもらいは、うつってしまうのでは?」と誤解を受けてしまうことが多いです。その理由のひとつが「結膜炎」という病気です。
結膜炎は、結膜と呼ばれる目の表面を覆っている薄い膜(白目の部分)に起こる炎症です。結膜炎にはウイルス性の感染力がとても強い病態があります。その感染力の強さから「はやり目:流行性角結膜炎」とよばれます。その他、細菌性のものやアレルギー性のものがありますが、これらの結膜炎はうつることはありません。
一方で、前述した通りものもらいは主にマイボーム腺のつまりやその細菌感染によって発症するため、他の人にうつることはありません。ものもらい(麦粒腫と霰粒腫)と結膜炎を混在させないようにしましょう。
しかしながら、どちらも目の周りの症状を引き起こす病気であり、区別が難しい場合もあります。自己判断はせず眼科医に相談して適切な診断と治療することをお勧めします。
霰粒腫は初期症状として
など、違和感や不快感を覚えることがあります。
霰粒腫は一般的に自然に消失することがあります。
一方で、長期間にわたって症状が続いたり、腫れが大きくなってきたりすることも少なくありません。そのような兆候がみられたら、日常生活に支障をきたす前に、なるべく早めに眼科を受診することをお勧めします。
小さなしこり・腫れ物が大きくなり、さらにまぶたが腫れて目に異物感を感じます。
症状が進行すると、まぶたの内側や外側を破って、まぶた皮膚がただれることがあります。痕が残ってしまうこともありますので注意が必要です。霰粒腫が大きくなると、まぶたが閉じやすくなるため、視力に影響を与えることがあります。
しこりの部分に細菌感染を起こしてしまうこともあります。この状態を「急性霰粒腫」といいます。急性霰粒腫になると、炎症によって痛みや赤みの症状がでます。
とくに痛みや視力の影響がある場合は、早めに診察を受けることが必要です。
麦粒腫は初期症状として
など、霰粒腫と比べると痛みが出やすい傾向があります。
健康な状態では影響を受けませんが、疲れや寝不足などで身体の抵抗力が弱くなっている方は、細菌感染が起こりやすくなります。また不衛生な手で目を触るなどといった行為が、菌を増殖させるきっかけとなるため注意が必要です。
麦粒腫は自然治癒することもありますが、数日で腫れがひかない場合や日に日にひどくなる場合は受診してください。
とくに、
など、他の症状を伴う場合はなるべく早めに受診しましょう。
ふと良くなったように見えてもまだ治ってはおらず、ふたたび症状を繰り返してしまうことも少なくありません。放っておくとさらに感染が拡大して、病態が悪化することがあります。悪化すると回復までも時間がかかります。
放置したり自然治癒を待ったりせずに、早めに眼科を受診してください。
ものもらいを発症する引き金となるのが「マイボーム腺のつまり」です。
マイボーム腺がつまる原因は、以下のようなものがあります。
過剰な化粧品の使用
アイメイクの残りや、アイメイク用品に含まれる油分や化学物質が、マイボーム腺を詰まらせることがあります。
結膜炎や角膜炎などの炎症性疾患によって、まぶたの周囲に炎症が起こることで、マイボーム腺が詰まりやすくなることがあります。
ストレス
ストレスによって、免疫力が低下し、炎症を起こしやすくなることで、マイボーム腺が詰まりやすくなることがあります。
その他の原因
ドライアイ症候群、睡眠不足、食生活の乱れなど、健康状態に関連する要因がマイボーム腺の詰まりを引き起こすことがあります。
ものもらいの主な治療方法は以下の2つです。
眼科を受診しましょう。
まぶたにかゆみ・痛み・腫れ、あるいはできものができた場合、「眼科と皮膚科のどちらに受診すべきか?」という疑問を持たれる方は多いのではないでしょうか。
まぶたは両方の診療科が対応可能ですが、眼科を受診することをお勧めします。なぜなら、まぶたの症状は単に皮膚のトラブルではなく、目のトラブルで起こっている可能性が考えられるためです。
特に炎症が起こる急性霰粒腫の場合は、ものもらいとの区別が難しい場合もあります。そのため、目の状態を確認できる眼科を受診することが望ましいです。
3割負担の方で5千円程度です。
霰粒腫の手術は保険が適用できます。3割負担の方で5千円程度です。ただし、霰粒腫が大きい場合は、1万円前後の金額になる場合があります。
約30~70%の割合で再発します。
霰粒腫は再発する病気です。約30~70%の方が再発するといわれています。一方で、再発の原因は、まだ解明されておりません。予防のためには、目の周りを清潔に保つことが重要です。汚れた手で目をこすったりしないよう注意しましょう。脂腺が詰まりやすくなるため、アイスクリームやバター、チョコレートなど油脂の多い食べ物は過剰に摂取しないように心がけましょう。また、暑い季節でも湯船に入ることは予防に効果的です。しっかり温めることで、マイボーム腺に油脂が詰まるのを防ぐことができます。
霰粒腫(さんりゅうしゅ)、麦粒腫(ばくりゅうしゅ、ものもらい)、脂肪腫、粉瘤、眼瞼母斑、悪性腫瘍など様々な種類があります。
良性・悪性の判別が難しい場合は受診が必要です。
ものもらい(麦粒腫)は細菌感染による炎症で、痛みや赤みがあります。
霰粒腫は感染を伴わない脂肪のかたまりで、痛みは少なく、しこりのような触感が特徴です。
長引く場合は受診をおすすめします。
ものもらいや一部の霰粒腫は自然に治癒する場合もありますが、化膿したり大きくなる場合は治療が必要です。長引く場合は受診をおすすめします。
眼科や皮膚科の受診をおすすめします。
痛みがなくても、しこりが長期間消えない・大きくなる・形がいびつな場合は悪性の可能性もあるため、眼科や皮膚科の受診をおすすめします。
子どもでも霰粒腫や粉瘤ができることがあります。
炎症が強い場合やしこりが残る場合には、麻酔下での処置や摘出手術が検討されます。
診断に基づいた治療が重要です。
治療は種類によって異なりますが、抗菌薬の点眼・内服、温罨法(あたため)、切開・排膿、外科的摘出などがあります。診断に基づいた治療が重要です。
体質や生活習慣の見直しも大切です。
まぶたの皮脂腺が詰まりやすい体質や、アイメイクの影響、まぶたを清潔に保てていないことが原因になることがあります。生活習慣の見直しも大切です。
炎症がある場合は一時的に中止することをおすすめします。
コンタクトの使用やメイクは、悪化や感染の原因になる可能性があります。
形成外科や美容皮膚科で対応している場合もあります。
良性の腫瘍やいぼ、ホクロなども、整容的・美容的な理由で除去することは可能です。形成外科や美容皮膚科で対応している場合もあります。
まれですが、基底細胞癌や脂腺癌などの悪性腫瘍も瞼に発生することがあります。
急に大きくなる・出血・ただれなどの症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。

長町よこくら眼科横倉 俊二 先生
宮城県仙台市太白区にある「長町よこくら眼科」、院長の横倉 俊二と申します。
私は東北大学病院に勤務し、角膜・結膜をはじめとする眼表面(オキュラ―サーフェス)疾患の治療・研究に長く携わって参りました。最先端の研究・治療に触れる機会が多く、充実した日々を過ごして参りましたが、病院の性質上、病気が進行した患者さんが紹介されてくるケースが非常に多く、病気の早期発見・早期治療の重要性を痛感させられる日々でもありました。
「自分がこれまで学んできた知識・技術を活かして、少しでも早く目の病気の発見・治療につなげることはできないだろうか。」と考えた結果、クリニック開院に至りました。
仙台で眼科のかかりつけ医をお探しの方は、ぜひ当院へご来院ください。何卒宜しくお願い申し上げます。
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