最終更新日:2023.08.22 | 投稿日:2023.08.21

子宮筋腫とは?原因と症状、子宮筋腫核出術・子宮全摘術を解説

子宮筋腫とは?原因と症状、子宮筋腫核出術・子宮全摘術を解説

子宮筋腫とは、子宮の筋肉組織にこぶのようなものが増殖した病態です。月経、妊娠、出産などに直接関与する子宮は、女性の生殖機能にとって中心的な役割を果たします。そのため、子宮筋腫は時に女性のライフステージにとって悪影響を及ぼす場合があります。

医療の進歩によって子宮筋腫の治療法は増え、さまざまな選択肢の中から選べるようになりました。ご自身の生活スタイルや今後の人生を考えて、自分にあったベストな治療法を選択できるようにしましょう。

本記事では、子宮筋腫の診療をしている婦人科医に監修いただき、子宮筋腫の症状と治療方法の選択肢を解説しています。

子宮筋腫とは

子宮は、精子を膣から卵管へ運び、体内で胎児を育てるための部屋の役割を担います。子宮は厚さ1〜2cmほどの平滑筋でできており、上下左右に大きく伸び縮みできるというのが最大の特徴です。

出産の直前には長さが約35cm、幅は約25cmまで伸びることができ、出産するときは収縮して、赤ちゃんを外へ押し出そうとしたり、産後には元の大きさに縮んだりする仕組みがあります。

子宮筋腫とは、この子宮筋層にできる良性の腫瘍(しゅよう)です。

腫瘍と聞くと、何か悪いものなのか、がんではないのか?と不安になられる女性は少なくありません。子宮筋腫は、がんではありません。がんのように、健康なほかの細胞をおびやかすことはないので、「直接、命にかかわるのでは?」といった心配は無用です。

一方で、子宮筋腫ができる場所によっては、日常生活に支障をきたすような症状があらわれたり、腫瘍が大きくなると流産や早産の原因となったりすることもあるため、決して軽視はできません。

検診などで子宮筋腫が目立ち始めるのは30代前半くらいからで、一番多く発見されるのは40〜50代といわれています。そして、閉経後は少しずつ小さくなります。

子宮筋腫は、発見時に比べて、大きさがそのままだったり、小さくなることもあります。閉経より前に子宮筋腫が見つかっても、すべての子宮筋腫が大きくなるとは限りません。

「どんどん大きくなったらどうしよう」と、必要以上に心配したり、手術を焦ってしまう方もいらっしゃいますが、まずは適切な検査をして、ご自身がどのタイプの子宮筋腫かを知ることが大切です。

子宮筋腫の種類

子宮筋腫は発生する場所によって、大きく3つの種類にわかれます。

1つ目は、筋層内筋腫です。もっとも発生頻度が高いとされ、子宮筋腫の約70%を占めます。小さいうちは症状も痛みもほとんどありませんが、大きくなると不正出血をはじめ、流産や早産の原因となるため注意が必要です。

2つ目は、粘膜下筋腫です。もっとも症状が現れやすく、1cm程度の大きさでも生理時の出血が多くなり、不正出血なども起こりやすいです。不妊症などの原因になることもあります。

3つ目は、漿膜(しょうまく)下筋腫です。腫瘍が大きくなっても自覚症状として現れにくいため、検診等で偶然見つかるケースがほとんどてす。一方で、大きくなった場合には他の臓器を圧迫することがあります。膀胱や尿道が圧迫されることで頻尿になったり、尿が出にくくなったり(尿閉)、直腸を圧迫すれば便秘にもなりやすいです。

以上のように、それぞれのタイプによって特徴や出てくる症状、治療法も異なります。

子宮筋腫の症状

子宮筋腫がある方すべてに自覚症状があるわけではなく、過半数以上の方は無症状であるといわれています。そのため、子宮筋腫ができても初期の段階では気付かない方がたくさんいらっしゃいます。

一方、子宮筋腫が大きくなるにつれて、あるいは発生場所によってさまざまな症状が現れます。

もっとも多い症状は、過多月経です。痛みの症状としては下腹部痛が多く、ときには腰痛に悩まされることもあります。その他、便秘や頻尿などにも要注意です。

子宮筋腫による過多月経

子宮筋腫でもっとも多い症状です。 子宮筋腫が子宮内膜を押し上げて子宮内膜の表面積が広くなり、はがれ落ちる内膜の量が増えると考えられています。

月経期間は普通でも、出血量が多い月経が、10日以上続く レバーのような大きな血のかたまりがたくさん出る という場合は、早めに受診しましょう。 また、出血量が多くなることで起こる貧血(鉄欠乏性貧血)にも注意が必要です。

子宮筋腫による不正出血

粘膜下筋腫によって表面から持続的に出血が起き、月経以外にも出血(不正出血)がみられることがあります。過多月経同様に、不正出血による貧血(鉄欠乏性貧血)にも注意が必要です。

子宮筋腫によるおりもの異常

粘膜下筋腫があると、その表面をおおっている子宮内膜にただれができることがあります。 そこから水のような分泌物が出るようになり、水っぽいおりものが増えます。

子宮筋腫による月経困難症・下腹部痛(腰痛)

子宮筋腫による痛みは、下腹部痛がほとんどです。ときに腰痛を発症することもあります。

月経の際に下腹部痛をはじめ、腰痛や頭痛、発熱な吐き気などの症状が現れ、日常生活に支障が起こるほど強くなることがあります。月経のときに痛みが強くなる方もいれば、月経以外の時期に下腹部痛に悩まされる方もいらっしゃいます。

痛みの強さは人それぞれで、陣痛のように激しい痛みを感じる方や、鈍い痛みが起こる方がいます。

子宮筋腫による便秘やおしっこのお悩み

子宮筋腫が直腸を圧迫すると、便の通過が妨げられ、便秘になります。また、膀胱を圧迫すれば膀胱の容量が小さくなり、尿の回数が多くなる頻尿になることがあります。尿道が引っ張られるように圧迫されると、尿失禁や尿が出ない尿閉になる場合もあります。

子宮筋腫と不妊

子宮筋腫があると、ない人よりも不妊率が高くなることがわかっています。粘膜下筋腫や筋層内筋腫のために、子宮の内膜がでこぼこしていると、受精卵が着床しにくく、うまく着床しても流産しやすくなります。ただし、子宮筋腫があっても妊娠する方はたくさんいらっしゃいます。

子宮筋腫による下腹部のしこり・性交痛

子宮筋腫がかなり大きくなると、仰向けの際に下腹部に固いしこりが分かることがあります。

また、性行為時に陰茎(ペニス)が挿入される際、子宮が動かされたときに痛みを感じることがあります。

子宮筋腫の原因

子宮筋腫の発生原因はわかっていません。しかし、腫瘍の成長には卵巣から分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の卵巣ホルモンが関係していることがわかっています。

子宮筋腫は、エストロゲンやプロゲステロンが大量に分泌される排卵後や妊娠中に大きく成長します。そのため、卵巣ホルモンが盛んに分泌される成熟期の女性に多く発生し、逆に成熟前の10代の女性にはあまりみられない病態です。また、更年期以降は子宮筋腫が縮小する傾向があります。

一方、卵巣ホルモンの影響をたくさん受けても、すべての腫瘍細胞が大きくなるとは限りません。成長せずに、本人も気付かないままという場合もあります。

とくに目立った症状がなく、日常生活に支障がないケースでは、子宮筋腫は経過観察で問題ありません。

子宮筋腫の検査

子宮を検査するとなると、何をされるのか不安に思う方は多いのではないでしょうか。実際、痛いのでは?と心配になる方もいらっしゃいます。まずは子宮筋腫の確定診断にいたるまでの流れを把握しておきましょう。

初診で行われる検査として

  • 問診・内診
  • 超音波検査

を実施します。

さらに、より詳しく調べる必要があると判断した際に

  • MRI検査
  • 子宮鏡検査
  • 子宮卵管造影検査
  • 血液検査
  • ソノヒステログラフィー(通水超音波検査)

などを実施する場合があります。

子宮筋腫の問診と内診

問診では、月経の様子を詳しく確認します。

  • 日頃、気になる症状
  • 月経歴、最終月経
  • 妊娠・出産歴
  • 流産・中絶の時期や回数
  • 家族歴
  • 薬の服用状況

など

また、子宮筋腫の疑いがある場合は

  • 過多月経かどうか
  • 貧血を指摘されたことがあるか
  • 便秘や頻尿の症状はないか
  • 月経痛やお腹の張りはないか

などを確認します。

内診では、子宮筋腫の位置や大きさなど、さまざまな情報を得ることができます。婦人科診察の基本となる重要な検査です。

子宮筋腫の超音波検査・MRI検査

超音波検査には、お腹の上から超音波をあてる「経腹法」と、プローブという器具を膣から挿入して子宮や卵巣を観察する「経膣法」があります。超音波検査は子宮筋腫の大きさ、数、位置をはじめ、子宮筋腫の種類を診断するのに役立ちます。また、痛みや副作用もなく安全に検査できるというのが超音波検査の強みです。

超音波検査では正確に診断できない場合は、MRI検査を受ける場合もあります。

MRI検査は、人間の体の断面図でとらえ、縦横斜めなどのさまざまな方向から体の詳細な映像を映し出すことができます。 放射線被曝などの心配もなく安全な検査法ではありますが、あくまでも子宮筋腫かどうか、また超音波検査で十分な診断を得られなかった場合に使われます。

粘膜下筋腫の疑いは子宮鏡検査

子宮鏡検査は、子宮鏡を膣から挿入し、子宮頸部を通して子宮内腔に入れて直接観察する検査です。粘膜下筋腫の有無を調べるのに有効な検査で、あくまでもその疑いがある方に勧められます。

そのほか、子宮内膜ポリープや子宮体がんの有無、子宮内の異常を調べるのに適しています。

ソノヒステログラフィー(SHG)

ソノヒステログラフィー(SHG)とは通水超音波検査ともよばれ、子宮の中に細い管を挿入して生理食塩水を注入し、経膣超音波によって子宮の中を観察する方法です。検査の痛みはほとんどなく、麻酔も必要のない検査です。

粘膜下筋腫などの子宮内腔の異常が疑われる場合や、不妊症・着床障害の有無を調べるためにも有効です。

    子宮筋腫の治療

    子宮筋腫があり、症状がひどかったり、日常生活に支障をきたしていたりする場合は、治療が必要です。

    子宮筋腫の治療法は大きく分けて

    • 薬物療法
    • 手術療法

    この2つに分かれます。

    一方、検査で子宮筋腫が見つかった場合でも、症状がない、または症状があっても日常生活に支障がないという場合は経過観察で様子をみます。子宮筋腫自体は、直接体に悪い影響を与えるものではありません。子宮筋腫によって起こる症状によって、日常生活に支障がでてしまうことが問題です。

    経過観察といっても、もちろん放置しておいて大丈夫というわけではありません。子宮筋腫は大きくなったり小さくなったり、予測がつきにくい病態です。6ヶ月〜1年ごとに定期検診を受けて、状態を確認していきましょう。

    子宮筋腫の薬物療法

    症状がある場合は、適切な薬で症状を緩和させます。

    • 各種薬剤の服用による対症療法
    • GnRHアナログ製剤

    主に2つの選択肢があります。

    対症療法は症状を抑えることを目的とした治療で、GnRHアナログ製剤は女性ホルモンの産生を低下させることで症状を改善させる方法です。

    子宮筋腫の手術

    子宮筋腫による症状が強く、日常生活が困難になるほどになったら、手術も視野にいれる必要があります。

    子宮筋腫の手術には、
    • 子宮筋腫核出術
    • 子宮全摘術
    大きく分けて2種類があります。

    子宮筋腫だけを切除するのが子宮筋腫核出術です。子宮は残るため、将来、妊娠出産が可能です。つまり、今後、赤ちゃんを希望するか否かが、手術法を選択する一つの決め手となります。

    子宮全体を切除し、子宮筋腫を根本的に治す唯一の方法が子宮全摘術です。将来的な妊娠の希望や、子宮を残したいという希望がない場合は、子宮全摘術が選択されます。

     

    子宮筋腫に関するよくあるご質問

    子宮筋腫の手術は、お腹を切りますか?

    「お腹を切る方法」と「切らない方法」があります。

    子宮筋腫核出術、子宮全摘術、いずれの場合でも、「お腹を切る方法」と「切らない方法」があります。

    お腹を切る方法は、

    • 開腹手術

    お腹を切らない方法は、

    • 腟式手術
    • 腹腔鏡下手術
    • 子宮鏡下手術

    があります。

    開腹手術は体に与える影響が一番大きく、入院期間も長くなります。どのようなタイプの子宮筋腫にも対応できるのがメリットです。安全性も比較的、高い手術法です。

    一方、お腹を切らない手術法(腟式手術、腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)は、開腹しないため体への負担は少なく、入院期間も短くすむ場合が多いです。しかし、開腹手術と異なり視野がせまい中で手術を行うため、手術時間が長くこともあり、手術できる子宮筋腫の種類にも限りがあります。

    大切なことは、自分の症状をしっかり理解すること、そしてそれぞれの治療法にあったメリットとデメリットを理解し、自分の希望をはっきりと医師へ伝えることです。 家族とも十分な話し合いを重ね、自分にあった最善の治療法を選択してください。

    妊活と子宮筋腫核手術、どちらを先にすれば良いの?

    メリット・デメリットを理解した上で決めましょう。

    子宮筋腫があっても、症状もなく妊娠の予定がなければ経過観察で問題ない場合もありますが、これから妊娠を希望される場合は、子宮筋腫が不妊の要因になるのでは?妊娠しても、胎児発育の妨げになるのでは?と不安に思う方は多いと思います。

    先に妊娠が勧められる場合は、子宮筋腫が5センチ未満で、とくに症状で悩んでいないという方です。

    一方で、

    • 子宮筋腫が5センチ以上ある
    • 子宮筋腫による過多月経などの症状がある
    • 不妊や習慣流産があり、子宮筋腫がその要因の一つとして考えられる
    • 体外受精を予定しており、採卵や着床の障害の可能性がある

    など、このような状況にある方は、先に子宮筋腫核出術が勧められる場合があります。

    しかし、どの程度の大きさのものが、どの位置にあれば手術をしたほうがよいか、明確な基準や答えはありません。

    どちらが先でも何らかのリスクはありますので、妊娠が先か手術が先かはメリットとデメリットを十分に考慮し、主治医やパートナーとよく相談して決めてください。

    妊娠中に子宮筋腫が見つかったら?

    基本的には経過観察で大丈夫です。

    妊娠と診断されたときに、子宮筋腫が見つかることも少なくありません。しかし、ほとんどの場合は妊娠中に大きな問題が起こることはないため、処置はせずに、経過観察になります。原則として、妊娠中は子宮筋腫核手術はしません。 一方で、大きい子宮筋腫がある場合は、流産する頻度が通常よりも高くなるほか、一般的な早産率よりも高くなるというデータもあります。 検診はしっかり受けて、無理のない生活を送ることが大切です。

    術後、性生活への支障はありますか?

    術後の性生活は問題ありません。

    子宮筋腫の手術をしたことで、性生活に影響があるのでは?と不安に思われる方は多いですが、基本的にはありませんのでご安心ください。 本記事で紹介した開腹、腹腔鏡下、子宮鏡下によるすべての手術において、性生活のスタートは術後1ヶ月程度が目安です。 ただし、出血や性交痛などが生じる場合もあるため、慌てずに主治医に相談するようにしてください。 性生活の問題は、パートナーとの関わり方も大きく影響します。パートナーは、術後、不安の大きい女性への気遣いを大切にしてください。

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    こちらの記事の監修医師

    鈴木 吉也

    まほろばレディースクリニック鈴木 吉也 先生

    宮城県大和町「まほろばレディースクリニック」、院長の鈴木です。わたしは「女性特有の悩みをじっくり聞いて納得のいく治療法を一緒に探したい」という思いから、開院いたしました。

    深刻な症状とまではいかないけれど、月経や生理周期に煩わされたり、振り回されている人は少なくありません。悩んでいるみなさまに少しでも快適な毎日を過ごせるよう方法をご提案いたします。

    また、妊婦さんの健康状態と赤ちゃんの成長を見守るための健診を行い、安心してマタニティーライフを送れるようなサポートはもちろん、自分の健康を自分で管理する・子供を産むかどうか・いつ産むかなど妊娠出産に関することについてもご相談やお手伝いをいたします。

    お一人おひとりのお気持ちやライフスタイルに寄り添った診療を行います。 どんなことでも大丈夫です。お体に不安を覚えたら、お気軽にご相談ください。

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