最終更新日:2025.07.10 | 投稿日:2025.07.10

親指の付け根が痛い原因は?右手・左手の症状と治し方を解説

親指の付け根が痛い原因は?右手・左手の症状と治し方を解説

この記事は「右手・左手の親指の付け根が痛い、痛くなることが多い」という方に向けて書いています。

普段の生活で手指を使う機会は非常に多いです。とくにスマホやパソコンなどの普及によって、知らず知らずのうちに手指に負担をかけてしまっているという方が増えています。

本記事では、整形外科の専門医監修のもと、親指の付け根が痛い原因と考えられる疾患、痛みの治し方について解説しています。

親指の付け根が痛い原因

私たちの手は非常に複雑な構造をしており、骨、筋肉、腱、靭帯、神経、血管が組み合わさって様々な動作を可能にしています。そのため、どこかに何らかの支障をきたしてしまうと、痛みやしびれ、動作不良などが起こりやすくなります。

親指には、親指の第一関節にあたるIP関節(指節間関節)と、第二関節にあたるMP関節(中手指節関節)、そして親指の付け根にある関節であるCM関節(手根中手関節)があります。親指の付け根が痛いという場合は、これら関節の付近を通る腱や腱鞘、そしてCM関節に障害が起きている可能性が高いです。

  • 腱と腱鞘に炎症が起こっている。
  • 関節の軟骨のすり減りによって負担がかかっている。
  • 捻挫・脱臼などのケガをしている。

など、痛みには様々な原因が考えられます。

親指の付け根が痛い場合の通院の目安

痛みの原因には様々な疾患が考えられます。そのままにしておくと日常生活に支障をきたすだけでなく、治りにくくなることもあるため我慢は禁物です。

  • 1ヶ月以上、痛みが続いている
  • 痛みが次第に強くなってきた
  • 付け根部分が腫れている
  • 手指が動かしにくくて不便を感じている
  • 痛みを我慢して湿布で対処している。

このような場合は、なるべく早めに整形外科を受診し、一度検査をしましょう。

腱鞘炎によって起こる親指の付け根の痛み

手指にはたくさんの小さな骨があり、細い腱によって筋肉とつながっています。これらの細い腱は、指に沿うような形で滑らかに動くように、トンネル状の構造をした腱鞘(骨と筋肉を結合している腱を包む組織)によって支えられています。

腱鞘炎とは、腱と腱鞘の炎症によって、腫れや痛みの症状が起こる疾患です。手首や手指には、腱や腱鞘が多く集まっており、腱鞘炎を起こしやすい構造となっています。

手首の腱鞘炎は、

  • ばね指
  • ドケルバン病

炎症が起こる位置によって大きくこの2つのタイプに分かれます。

ばね指とは

ひとさし指から小指までの第三関節と、親指の第二関節に当たるMP関節の手のひら側には、靭帯性腱鞘と呼ばれる部分があります。ばね指はこの腱通過障害によって起こります。

指の腱周辺に炎症が起こると、腱が引っかかって指をスムーズに伸ばせなくなります。なかなか動かず、伸ばそうとするとバネのように急に「カクン」と跳ねるような状態になることから、「ばね指」という名前がついています。ばね指はどの指でも起こりますが、中でも親指、そして中指・薬指に多く見られます。

ドケルバン病とは

ドケルバン病は手首の親指側にある腱鞘(手首母指側の腱:短母指伸筋腱、長母指外転筋腱)で炎症が起こる腱鞘炎です。腱鞘部に炎症が起こると、親指を動かすたびに痛みが出るのが特徴です。スマホの操作など、なめらかな動きが困難になります。

また、親指の他にも中指や薬指にも多く見られ、押すと痛みを感じます。

関節軟骨のすり減りによって起こる腫れや痛み

関節の表面は、関節の動きを滑らかにする「関節軟骨」に覆われています。この関節軟骨がすり減ってしまい、関節の炎症や腫れ、痛みを引き起こします。

とくに手指の関節軟骨でこの症状が起こる疾患としてあげられるのが「母指CM関節症」です。

母指CM関節症とは

母指CM関節症は、親指の付け根にあるCM関節(手根中手関節)で起こる疾患です。主な原因は、加齢に伴う自然な摩耗と関節の劣化があげられます。

その他、手指の酷使やケガ、また関節リウマチなどの炎症性疾患が原因で発生することもあります。

母指CM関節症になると、物を握る動作や物をつかむ動作などが困難となります。

  • 物を握る、つかむ動作をした際に、痛みを感じる。
  • 親指の付け根付近に腫れがみられる。
  • 朝のこわばりが見られる。
  • 親指が痛くて、力が入らない。

このような症状がみられる場合は、母指CM関節症の可能性が疑われます。

ケガによる親指の付け根の痛み

親指の付け根に痛みや腫れなどが生じた場合、骨折や脱臼などのケガの可能性も考えられます。

転倒して手をついた際に、手首に負担がかかって骨折をしてしまうことがあります。また、交通事故やコンタクトスポーツなどの衝突によって、親指に強い衝撃が加わり、ケガをしてしまうケースも少なくありません。スポーツのケガについては、同じ動作の繰り返しによって関節に負担がかかり、痛みが出ることもあります。これをスポーツ障害といいます。

ケガの場合は安静にすることで自然治癒することもありますが、適切な処置をしないと治りが悪くなってしまったり、復帰に時間がかかってしまうこともあります。

安静にした後は、指の状態や経過によっては徐々に動かした方がいい場合もあります。まずはなるべく早めに整形外科を受診し、画像診断によって骨や筋肉・腱の状態を確認しましょう。

親指の付け根の痛みに関する、よくあるご質問

腱鞘炎が起こりやすい人は?

腱鞘炎は手指の使いすぎによって起こることが多い疾患です。

  • 1日中、スマホを使っている。
  • パソコン(キーボード)をよく使う。
  • 楽器をよく弾く。

など

そのほかにも、家事やスポーツなどで同じ動作を何度も繰り返すように手指を酷使されている方は、腱と腱鞘に負担がかかり、腱鞘炎を起こしやすくなります。

腱鞘炎は女性に多い疾患とされています。女性ホルモンの分泌が乱れる更年期をはじめ、妊娠から出産にかけての時期は、女性ホルモンの乱れが影響して腱鞘炎になりやすい傾向にあります。

また、高齢者の場合も発症することが多く、これは腱鞘や腱の組織が硬くなりやすいためと考えられています。日頃から手指を使う機会がないという方も、加齢によって腱鞘に炎症が起こりやすくなり、腱鞘炎を発症してしまうケースは少なくありません。

親指の付け根がズキズキ痛むのは腱鞘炎ですか?

「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」の可能性があります。

親指の付け根にズキズキするような痛みがあり、物を握ると悪化する場合は「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」の可能性があります。ただし、関節炎や関節リウマチ、変形性関節症など他の疾患の可能性もあるため、痛みが続く場合は整形外科での診察が望ましいです。

腱鞘炎と関節炎の違いは何ですか?

腱鞘炎は腱や腱鞘が炎症を起こして痛むのに対し、関節炎は関節自体(軟骨や滑膜など)が炎症を起こして腫れや痛みが出ます。腱鞘炎は特定の動きで痛むのが特徴で、関節炎は動かさなくても痛むことがあります。

親指の痛みは放っておいても治りますか?

軽度であれば安静にすることで自然に回復することもあります。

軽度であれば安静にすることで自然に回復することもありますが、繰り返し使っていると悪化し、慢性化するリスクがあります。腫れや強い痛み、動かしづらさがある場合は、早めの受診と適切な治療が大切です。

どんなときに病院を受診した方がよいですか?

以下のような場合は受診をおすすめします

  • 痛みが1週間以上続く
  • 親指を動かすときに強い痛みや引っかかりがある
  • 腫れて熱を持っている
  • 安静にしても改善しない
整形外科や手外科、リハビリテーション科が適しています。

親指の付け根が痛いとき、湿布やテーピングは有効ですか?

痛みが強いときは、冷湿布や消炎鎮痛剤の入った湿布が効果的です。

また、テーピングやサポーターで親指を固定し、動きを制限することで症状の悪化を防ぐことができます。ただし、自己判断で長期間使用するのではなく、医師の指導を受けるのが安全です。

スマホやPCの使いすぎで親指が痛む場合、どう対処すればいいですか?

まずは手首や親指の負担を減らす工夫が必要です。

スマホを両手で操作する、長時間使用を避ける、キーボードやマウスの使い方を見直す、ストレッチを定期的に行うなどが効果的です。すでに痛みが出ている場合は、使用を控え、冷却や安静に努めましょう。

親指の付け根の痛みに関係する病気にはどんなものがありますか?

主な疾患には以下があります

  • ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)
  • 母指CM関節症(変形性関節症)
  • 関節リウマチ
  • ガングリオン(腫瘤)
  • 骨折や靭帯損傷(特にスポーツや転倒後)
症状や発症の背景により原因は異なるため、的確な診断が必要です。

痛みがあるときにストレッチやマッサージをしても大丈夫?

炎症が強い急性期(熱感・腫れ・強い痛みがある時期)は、マッサージやストレッチは逆効果になることがあります。

慢性期や痛みが軽くなってきた時期であれば、医師や理学療法士の指導のもとで、関節の可動域を保つストレッチを行うことは効果的です。

親指の痛みを予防するにはどうすればいいですか?

親指や手首に負担をかけすぎないよう、日常的に以下を心がけましょう。

  • 長時間のスマホ・パソコン使用を避ける
  • 親指の使いすぎに気づいたら早めに休む
  • 作業中は手を温めて血行を促す
  • 手首や指を動かす軽いストレッチを定期的に行う
また、体に合った道具(マウスや包丁、文房具など)を選ぶことも大切です。

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こちらの記事の監修医師

小林 義尊

こばやし整形外科クリニック小林 義尊 先生

宮城県名取市「こばやし整形外科クリニック」、院長の小林です。

大学卒業後12年間福島にて、その後8年間仙南地区と仙台市内において整形外科およびサブスペシャリティである手外科診療を行ってまいりました。

医師を前にすると、話しにくかったり聞きづらかったりした経験がおありの方が少なからずいらっしゃるかと思います。話しやすい環境を整え、できる限り患者様のご期待にお応えしたいと考えています。

また、得意とする手外科診療だけでなく、リハビリテーションなども含めた総合的な整形外科診療を行ってまいります。

宮城県内で手外科をお探しの方は、当院へご相談ください。何卒よろしくお願い申し上げます。

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