最終更新日:2024.01.09

蛋白尿 – 尿が泡立つ原因は?尿蛋白陽性の基準値と尿蛋白の正常値を解説

蛋白尿 – 尿が泡立つ原因は?尿蛋白陽性の基準値と尿蛋白の正常値を解説

蛋白尿(たんぱく尿)とは、尿に正常範囲をこえた量のたんぱく質がでている状態を指します。

わたしたちの体内で主に尿を作る役割を担うのは「腎臓」です。腎臓が健康であれば、基本的にはたんぱくが尿に漏れだすことはありません。つまり、蛋白尿が出るということは、腎臓になんらかの異常が起きている可能性を疑います。

本記事では腎臓内科の医師に監修していただき、尿検査で尿たんぱく陽性になる基準値と原因を解説しています。

蛋白尿(たんぱく尿)とは?

尿中に基準値以上のたんぱくが排泄されている状態を、蛋白尿(たんぱく尿)といいます。

たんぱく質は、わたしたちの体にとって重要な栄養素です。そのため、健康な状態ではほとんどろ過されずに体内にとどまります。 尿に含まれるたんぱく質は、ほんのわずかな量に過ぎないのですが、腎臓や泌尿器に機能障害などの異常があると、必要以上にたんぱくが漏れ出てきて、蛋白尿(たんぱく尿)になります。

腎臓は血液中に含まれる老廃物や不要な水分・塩分を独自のフィルターかけてろ過し、尿と一緒に体の外へ排出するはたらきがあります。 このフィルターは糸球体とよばれる毛細血管の集合体です。1つの腎臓には数十万から100万個ほど存在するといわれています。腎臓に流れ込んできた血液が、この糸球体を通ると、老廃物は尿として尿管の方へ、また赤血球やたんぱく質など体に必要なものは血管の中に残る仕組みになっています。

そのため、本来は腎臓が健康であれば、基本的にたんぱくが尿に漏れ出ることはありません。蛋白尿が認められた場合は、糸球体をはじめとする腎臓、もしくは泌尿器になんらかの異常が起きている可能性を疑います。

※ 尿に含まれるたんぱく、尿蛋白(にょうたんぱく)といいます。

尿が泡立つ原因

尿中に含まれるたんぱくの量や糖の量が多くなると、尿が泡立つようになります。

  • 尿に細かい泡がたくさんできる
  • 尿の泡が1分程度経過しても消えない
  • 尿の色がクリーム色のように白っぽい

など、このように尿が泡立つ方は、蛋白尿や高血糖が疑われます。

※ 脱水気味である場合、尿が濃くなり、泡立ちやすくなることもあります。

蛋白尿に伴う症状 – 受診の目安(2+以上)

  • 排尿時、尿が泡立つ。
  • 脚にむくみの症状がある。
  • ひどい貧血がある。
  • だるさを感じる。
  • 日中、眠気に襲われる。

以上のような方は、自己判断で放置することなく、早めに受診してください。

腎臓に異常があっても、なかには初期症状に乏しい病気も多く、とくにむくみなどの症状が現れたときには透析治療が必要な状態の手前まで病態が進行していることもあります。

「健康診断などで、蛋白尿を指摘された」という方も同様です。とくに蛋白尿(2+)以上の方は、迷わず医療機関へ。医療機関では、1日あたりの蛋白尿が何グラム出ているのかを検査することができます。

蛋白尿は何科を受診する?

蛋白尿が出ている原因(尿蛋白陽性)によっても異なりますが、腎臓のトラブルは腎臓内科が専門となりますので、すでに健康診断等で指摘を受けている方は腎臓内科を受診して下さい。

また、尿蛋白の測定については、一般的な内科でも尿検査によって調べることができます。蛋白尿が認められた場合は、総合病院などのより専門の医療機関を紹介してくれますので、かかりつけ医を受診していただいて問題ありません。

尿蛋白が出やすい人

腎臓や泌尿器に障害がある方

腎臓や泌尿器になんらかの異常が起きている方は、蛋白尿が出やすくなります。このような蛋白尿を「病的蛋白尿」といいます。

原因となる病気が治ると、尿蛋白もなくなります。

生活習慣病を患っている方

  • 高血圧
  • 肥満、メタボリック症候群
  • 糖尿病(高血糖)

など、生活習慣病を患っている方は、蛋白尿が出やすくなります。

妊娠中の方

妊娠中は、お母さんへの血液と胎児への血液が必要となるため、体全体、腎臓への血液循環量も多くなります。通常よりも腎臓に負担がかかりやすくなるため、尿蛋白が陽性になることが多いです。

妊娠20週以降、分娩12週までの間に高血圧となる疾患を「妊娠高血圧症候群」といいます。この疾患でも、蛋白尿が認められることがあります。

そのほか – 心配いらない蛋白尿

蛋白尿が異常値を示しても、とくに問題のないケースがあります。

  • 発熱の症状が出た後
  • 激しい運動をした後
  • 長時間、起立した後
  • 高たんぱくの食事を摂った後

このような状況の中では、蛋白尿がでることがあります。

これらを「生理蛋白尿」といい、とくに心配はいりません。

尿蛋白の基準値、1+や 2+とは?

尿蛋白は、尿検査によって測定します。その調べ方には、「定性検査」と「定量検査」の2つがあります。

いずれも腎臓の病気や尿路系疾患のふるい分け(スクリーニング検査)として有用です。

尿蛋白の定性検査(定性法, 尿試験紙法)

定性検査は定量法や尿試験紙法ともよばれ、尿中に試薬や試験紙を入れて色の変化を確認し、たんぱくの有無を調べるものです。尿蛋白定性は、幅広く異常があるかどうかを見つけることを目的としています。

定性検査では、( – )・(±)・(1+)・(2+)・(3+)・(4+) などの表記をします。
※ 尿の濃度や条件によっては偽陽性や偽陰性になることもあります。

定性検査では、

  • ( – )のみ異常なし → 陰性
  • (±)は要注意
  • (1+)を越えると尿蛋白陽性

と判断されます。

陽性となった場合は、より詳細な検査が推奨されます。

定性検査の判定基準値 蛋白濃度( g/dL )
(-) 0.015 g/dL未満
(±) 0.015-0.029
(1+) 0.03
(2+) 0.1
(3+) 0.3
(4+) 10

 

尿蛋白の定量検査(定量法)

定量検査は、たんぱくの量や濃度までを調べる測定法です。定性検査で異常が検出された場合や、1日の尿蛋白の量を確認する際には、この定量検査を行います。

定量の基準値は「g/日」という単位で、より詳細に蛋白尿の程度を数値化します。尿を24時間ためて、尿中に含まれるたんぱく量を測定します。

定量検査の判定基準値 蛋白濃度( g/dL )
正常 0.015 g/日 未満
軽度 0.015-0.5 g/日 未満
高度 0.5 g/日 以上

尿蛋白の正常値・異常値

慢性腎臓病(CKD)診療ガイド2018では、蛋白尿の基準値は、定量検査で「0.15g/日 未満」を正常値としています。一方で、0.5 g/日以上の場合は、なんらかの異常があると判断されます。 

以下に、定性検査(±)と定量検査(g / 日)の正常値と異常値をまとめます。

正常値
(陰性)
( – )陰性【定性】
0.15g/日 未満【定量】
軽度の増加
(陽性・異常値)
(1+) 〜 (2+)【定性】
0.15 〜 0.5 g/日 未満【定量】
増加
(陽性・異常値)
(2+) 〜 (3+)【定性】
0.5 〜 3.5 g/日【定量】
高度の増加
(陽性・異常値)
(3+) 〜 (4+)【定性】
3.5 g/日 以上【定量】

尿蛋白陽性の原因

尿蛋白(1+〜2+)の原因

尿蛋白(1+ 〜 2+)は、

  • 慢性糸球体炎
  • 糖尿病性腎症
  • 高血圧性腎硬化症

以上のような病気で多く見られる数値です。

また、良性の蛋白尿として

  • 起立性蛋白尿
  • 熱性蛋白尿

これらが原因となっていることもあります。この場合は、1 g / 日 以下であることが多いです。

そのほか、

  • 重金属や薬剤性尿細管障害
  • 間質性腎炎
  • ファンコニー症候群

などの可能性もあります。

尿蛋白(2+〜3+)の原因

尿蛋白(2+ 〜 3+)は、

  • 慢性糸球体炎
  • 糖尿病性腎症
  • 巣状糸球体硬化症

以上のような病気で多く見られる数値です。

そのほか、

  • 腎アミロイドーシス
  • 糸球体微小病変(微小変化群)

などの可能性もあります。

尿蛋白(3+〜4+)の原因

尿蛋白(3+ 〜 4+)は、

  • 微小変化群(ネフローゼ症候群を生じる腎臓疾患;リポイドネフローゼ)
  • 糖尿病
  • 慢性糸球体腎炎
  • 巣状糸球体硬化症

以上のような病気で多く見られる数値です。

そのほか、

  • 腎アミロイドーシス
  • ループス腎炎
  • 紫斑病性腎炎

などの可能性もあります。

 

蛋白尿が異常値のときの対処法

尿蛋白が陽性だった場合、腎臓の病気や尿路系の疾患、あるいは糖尿病などの全身疾患を疑います。

腎臓病以外の原因でみられる蛋白尿は良性のものもあり、原因となる病態が治ると、尿蛋白もなくなります。

治療が必要な蛋白尿

なんらかの病気が原因で生じる蛋白尿を「病的蛋白尿」といいます。

病的蛋白尿は、

  • 腎前性
  • 腎性
  • 腎後性

の3つのタイプに分類されます。

腎前性 血中の増加蛋白が尿細管での再吸収量をこえて尿中に漏れ出したもの
→ 骨髄腫によるもの、ヘモグロビン尿、ミオグロビン尿
腎性 糸球体(血液を濾過するところ)の病気、尿細管の病気
→ 糸球体腎炎、糖尿病性腎症、腎硬化症など
腎後性 → 尿管や膀胱の感染、結石など

それぞれ、病態に応じた治療が必要です。

蛋白尿に関するよくあるご質問

蛋白尿は病気ですか?

病気ではありませんが、注意が必要な状態です。

蛋白尿だからといって、必ずしも病気が原因というわけではありません。健康な人でも、一時的に蛋白尿になることがあります。

一方で、尿蛋白が異常に多い場合は、腎臓病や泌尿器の病気の可能性が疑われます。腎臓病は自覚症状が出たときにはすでに病状が進行していることが多く、尿検査は病気を早期に発見するひとつの手立てとなります。

最近は肥満や高血圧・糖尿病などの生活習慣病において、早い段階から尿蛋白が出現することがわかってきました。尿蛋白を指摘されたら、早めに検査することが望ましいです。

尿蛋白の偽陽性・偽陰性とはなんですか?

尿の定性検査(試験紙でチェックする方法)で、誤った結果が出ることです。

試験紙でチェックする定性検査は、尿蛋白の「濃さ」で判断します。体内の水分が少なく、脱水気味の状態であれば尿は「濃く」なります。その状態で定性検査をすると尿蛋白も「濃く」なるため、実際には尿蛋白がほとんど出ていないという状態でも(1+)や(2+)という結果が出る場合があります。また、たくさん水を飲むと尿が「薄く」なるため、本来は尿蛋白がある程度出ていても、測定結果が(-)や(±)となってしまうことも少なくありません。このように、測定のタイミングはとても重要です。

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こちらの記事の監修医師

森本 玲

木町通クリニック森本 玲 先生

東北大学病院のすぐお隣に、木町通クリニックを開院させて頂くこととなりました。 私はこれまで、高血圧症を始めとした生活習慣病を患う多くの患者様の診療に携わると同時に、生活習慣病の多くで見い出される「隠れた原因」であるホルモン(内分泌)との関わりについてその理解を深め、今日まで、その研鑽を積んで参りました。 ご病気を抱えていながらも、何よりもほっとして頂ける「安心」をお届け出来るよう、スタッフ一同、努めて参りたいと存じます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

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