腰が痛い原因は?内臓と脊椎の病気から起こる腰痛を、男性女性別に解説
腰痛は自然に治ることも多く、必ずしも急いで治療をするべき疾患ではありません。しかし、何日も何ヶ月も痛みが続いている場合は、一度しっかりと検査する必要があります。
なぜなら、腰の痛みはときに内臓や脊椎の病気から起こる場合があるためです。一般的に腰痛は、整形外科領域の疾患として位置付けられています。しかし、中には内科・外科系の疾患や婦人科系疾患によって腰が痛いと感じることもあるため油断できません。
本記事では、内科医に監修していただき、腰が痛い原因として考えられる内臓の病気を、男性・女性別に解説しています。
目次
腰が痛い原因は?
腰痛を起こす病気はさまざまなものがあります。
その代表格となるのは、
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
などの疾患です。
このように腰痛の誘因は、骨・椎間板・筋肉・神経などのトラブルによって起こるものが多いです。
一方で、
- 内科系領域の病気
- 婦人科系領域の病気
- ストレスや心の病気
など、何ヶ月も長期にわたって続くような腰痛の背景には、さまざまな病気が潜んでいる可能性が考えられます。
この場合、「湿布を貼って様子をみよう」などという対処ではもちろん、根本的な改善には至りません。
腰痛の陰に重大な病気が潜んでいるケースは、決して多くはありません。しかし、放置してしまうことでリスクが高まったり、ときに命の危険に及んでしまったりすることもゼロではないため、異変を感じたら早めに適切な検査をすることが推奨されます。
内臓の病気が潜んでいる腰痛
内臓疾患に起因する腰痛
脊椎に問題がなくても、内臓疾患により腰痛が発生する場合があります。以下のような症状が見られた場合は、早急に医療機関で診察を受けるべきです。
消化器疾患
胃や十二指腸の潰瘍、胆石、胆嚢炎、膵臓炎などが原因で腰痛が出ることがあります。これらは腹痛、血便、吐き気、嘔吐と共に発生します。
泌尿器疾患
尿路結石、腎結石、腎盂腎炎、前立腺がんなどが腰痛を引き起こす場合があり、これらは排尿障害や血尿が特徴です。
婦人科疾患
子宮内膜症や子宮がんも腰痛の原因となり、おりものの量が増えるや不正出血も伴います。
循環器疾患
心筋梗塞が発生したときや、解離性腹部大動脈瘤が存在する場合、突然の強い腰痛や背中の痛みが起こることがあります。
男性に多い内臓由来の腰痛
男性に多い内臓由来の腰痛として一番多いのは、尿管という場所に結石がつまる「尿管結石」です。
尿に含まれるカルシウムやシュウ酸などが結晶化して結石とよばれる石ができます。それが尿路をふさいでしまうことで起こる病態を尿路結石といいいます。
尿路とは、腎臓で尿が生成された後に体外へ排出されるまでの尿の通り道のこと。上から腎臓、尿管、膀胱、そして尿道を経由して、排尿されます。このいずれかの場所で結石ができます。
尿管結石を発症すると、突然、腰や脇腹に痛みを感じます。また、下腹部に激しい痛みが生じ、吐き気や嘔吐、冷や汗をともないます。
30〜40代の男性に多く、再発しやすいのが特徴です。
女性に多い婦人科系疾患由来の腰痛
月経ではない時期に、腰痛の症状が起きている場合、子宮に良性の腫瘍ができる「子宮筋腫」や、子宮の外に内膜が増える「子宮内膜症」といった子宮の病気の可能性もあります。
これらの病気は初期症状に乏しい場合もあり、痛み等の自覚症状が出たときにはすでに病態が進行していることも少なくありません。子宮がん検診や妊娠を機に発見されることも多いようです。
そのため、ライフステージに合わせて定期的に子宮がん検診を受けることが推奨されています。
各自治体で実施している場合も多いので、積極的に活用しましょう。
脊椎の病気が潜んでいる腰痛
脊椎腫瘍
多くのケースで、背骨の腫瘍は他の臓器で発生したがんが転移しているものですが、まれに脊椎自体が初発地となる悪性腫瘍も存在します。脊椎へのがんの転移が発生すると、厳しい痛みが日夜を問わず発生します。また、腫瘍の位置に応じて、下肢の麻痺や排尿・排便の障害も引き起こすことがあります。
脊髄腫瘍
脊髄に発生した腫瘍は通常、良性です。持続的な腰痛に加え、下肢にも麻痺が出現します。腫瘍が拡大すると、排尿や排便の問題も発生します。
脊椎カリエス
この疾患は結核菌が脊椎に感染する形で発生し、激しい腰痛や背中の痛みが現れます。さらに、感染部位に依存して、倦怠感、容易に疲れる、微熱などの結核特有の全身症状が出ることがあります。
ストレスや心の病気による腰痛
過度なストレスが原因となって腰痛が発生する場合もあります。これは心因性腰痛とよばれ、単なる「気のせい」で腰が痛くなるわけではありません。
痛みの位置や強さは日々変動し、不安が増すと痛みも増加する傾向があります。その発生原因には、ストレスが脳の痛み抑制機能を低下させる影響が考えられています。また、うつ病などの精神的疾患が腰痛の背後にある場合もあるため、注意が必要です。
このように、腰痛と一言でいってもその原因が筋肉・骨・神経だけにあるとは限りません。
腰痛以外の身体的な異変を感じていないか、日常生活で自身の体調の変化に注意を払うことが重要です。
腰痛の再検査・精密検査にはMRI
腰痛の検査では、X線(レントゲン検査)やCT検査が一般的に用いられます。
しかし、これらの検査では転移性脊椎腫瘍の早期発見には限界があります。そのため、MRI検査を受けることが推奨されています。MRIの精度は90%以上とも言われ、骨への転移を早く発見するには有効です。
しかし、MRI検査でも判別が難しい場合があります。溶骨性の腫瘍による骨折と骨粗鬆症による骨折は似ているため、誤診される可能性があります。転移性脊椎腫瘍の疑いが完全に晴れるまで、つまり症状が改善されるまで、継続的な検査が必要です。
検査で異常が見つからない、あるいは治療しても改善しないという理由で通院を中断する人もいますが、そのようなケースで後に骨転移が発見され、亡くなってしまったという例がしばしば見られます。
自己判断でやめることのないように注意が必要です。
こちらの記事の監修医師
LCクリニック仙台佐藤 俊裕 先生
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