突然の動悸や息苦しさは「パニック発作」の可能性がありますが、心臓や呼吸器の疾患でも同じような症状が出ることがあります。
まずは内科で検査を受け、異常がなければ心療内科や精神科での相談をおすすめします。
生きていく中で、不安はつきものです。たとえば大切な試験が合格できるか、大きな仕事が成功するか、など。人生において不安になることは誰しも経験する感情です。
このようなライフイベントや環境が変化するときは、不安が生じることが多くなります。そして不安を乗り越えることで、人生が充実して生き生きと過ごすことができるという方もいます。その側面を考えると、不安も必要な感情のひとつであり、一時的に不安があるからといって問題があるとは言い切れません。しかし一方で、不安が基盤となって発症してしまう病気が多いことも事実です。
本記事では医師監修のもと、不安を基盤とした疾患(不安障害)の種類や、それによって起こる症状、治し方を解説します。
目次
「急に不安感に襲われるのはなぜ?」と悩まれている方がたくさんいらっしゃいます。
誰しもが経験する通常の不安と、不安を基盤とした病気との違いはどこにあるのでしょうか。これは、端的にいえば「日常生活にどの程度の支障が生じているかどうか」で診断されることが多いです。
たとえば大切な試験に受かるか不安に思い、受けること自体を断念してしまった。あるいは、大きな仕事が舞い込んできたときに、成功するか不安を感じて、結果的には退職に至ってしまった、など。
一見、大げさな例にも思えるかもしれませんが、医療の現場では実際にそのような方がいらっしゃいます。
など、さまざまな不安に襲われることがあれば、一度受診しましょう。
単に不安を感じるだけでなく、不安の直面を次第に回避していくようになると、やがて自身の生活に大きな支障が出てくると考えられます。
日常生活にまで影響してしまうほどの不安は「不安障害」という病気と診断される場合があります。
以上を標榜している医療機関の受診をおすすめします。
精神科は、精神科医や公認心理師と呼ばれる医療従事者が、「心に問題を抱える人」などを対象に専門的な指導・援助をする医療機関です。カウンセリングなどを通して治療方針を立て、薬物療法などを検討していきます。
また心療内科は、ストレスや不安などの精神的な影響によって起こる身体の不調を診療できます。頭痛や吐き気、腹痛など体への影響が顕著な場合は、心療内科を受診しましょう。
目の前にある出来事に対して不安を感じることはよくあります。その一方で、これから先のこと、まだ何も起こっていないこと、未来のものや何かわからない出来事に対しても、強い不安感を覚えたり心配したり、緊張のようなよく分からない恐怖感を覚えることがあります。
このように一時的に不安があるからといって単に病気とは診断されませんが、不安が基盤となって起こる病気は決して珍しいものではありません。
不安障害としてあげられる
を解説します。
パニック障害は、予期しないときに動悸や息苦しさを憶える「パニック発作」を主症状とします。
など
これらはパニック障害の
という特性によって起こる症状です。
「パニック発作が起きるのではないか」と予想する不安(予期不安)が強くなります。そのため、強い不安に襲われたときに「すぐに逃げられない」と感じてしまう状況や場所に自分がいることでさらに恐怖や不安を抱いてしまい、結果的に日常生活に支障が出てくるのがパニック障害の特徴です。
社交不安障害は、社会的場面で強い不安に襲われるという特徴があります。
社会的場面とは、人前で話す・字を書くなど、他人から視線を集めるような状況があげられます。
など
失敗や恥を予想してしまい「自分がどう思われているか」が気になって必要以上に強い不安が生じます。
このように社交不安障害は、明確に強い不安が基盤となって起こります。
常に「何か悪いことが起きるのでは」という漠然とした不安に支配され、心が休まらない――そんな状態が半年以上続いている場合は、全般性不安症かもしれません。
心配の内容は、「家族の健康」「仕事の評価」「お金の不安」など日常的なものですが、それが現実的な範囲を超えており、頭から離れません。 不安によって眠れなかったり、集中できなかったりするほか、首こり・胃痛・肩こり・倦怠感といった身体症状が日常的にみられます。
「汚れている気がする」「鍵を閉めたか不安」「事故を起こしたかも」――そう思うと、不安が抑えられず、確認や行動を何度も繰り返してしまう病気です。
たとえば、ドアの鍵を10回以上確認しないと外出できない、トイレのあとに何十分も手を洗い続ける、という行動が生活に支障を及ぼします。 本人は「やりすぎだ」と分かっていても、不安が強すぎてやめられず、日常生活に大きな負担がかかります。
事故、暴力、災害などの強いショック体験のあと、その出来事を繰り返し思い出してしまう状態です。
トラウマとなった記憶が、夢に出たり、似た場面でフラッシュバックとして蘇ったりします。たとえば、交通事故のあと車の音でパニックになる、暴力被害のあと男性の声を聞くだけで恐怖を感じる、など。 こうした症状により、外出や仕事、対人関係が難しくなるケースもあります。
引っ越し、転職、いじめ、離婚、病気――こうした「生活の変化」にうまく対応できず、不安や気分の落ち込みが出る状態です。
ストレスとなる出来事から1〜3か月以内に症状が出始め、涙が止まらない、眠れない、イライラが続くなどの反応が見られます。 原因が明確なので「そのうち慣れるはず」と思われがちですが、本人にとっては深刻で、放置するとうつ状態に進展することもあります。
女性のライフステージにおいて、ホルモンバランスの変化が引き金となって不安感が強くなることがあります。
こうした症状は、周囲から「甘え」と受け取られがちですが、れっきとした身体の変化が関与しており、専門的なサポートが必要です。
原因がはっきりとはわからないけれど、なんとなく体調がすぐれないという状態を不定愁訴(ふていしゅうそ)といいます。
この状態が長く続いたり、症状の悪化を繰り返したりする場合、自律神経失調症と診断される場合があります。
など、体のあらゆる部分を司る自律神経にトラブルが起こるため、さまざまな症状がみられます。
医療機関を受診しても「原因不明」と診断されてしまうことが多く、さらに不安や心配が募り、症状がひどくなると外出や会社に行くのを控えてしまうなど、行動制限が生じてしまう方もいらっしゃいます。
不安感は、誰にでも起こりうる自然な感情です。しかし、不安が強くなると、日常生活や人間関係に支障をきたすこともあります。症状が軽いうちであれば、自分でできるセルフケアによって、不安を緩和できることもあります。ここでは、実践しやすい対処法をご紹介します。
不安を感じたときは、呼吸が浅く早くなりがちです。そんなときにおすすめなのが「ゆっくりとした深呼吸」。特に「腹式呼吸(お腹を膨らませながら息を吸う)」は、自律神経のバランスを整え、心拍を落ち着かせる効果があります。
また、最近注目されているのが「マインドフルネス」と呼ばれる方法です。これは「今、この瞬間」に意識を集中するトレーニングで、雑念を鎮め、不安感を和らげる効果が期待できます。スマートフォンの無料アプリなどでも簡単に始めることができます。
不規則な生活習慣は、自律神経の乱れにつながり、不安感を悪化させる原因になります。次の3つの基本を見直すことが、心身の安定につながります。
特に「日光を浴びながらの散歩」は、体内時計を整え、セロトニン(安心感を高める神経伝達物質)の分泌を促すのでおすすめです。
不安を感じやすい人には、物事を極端に悪く考えてしまう「思考のクセ(認知の歪み)」が見られることがあります。
こうした思考が重なると、不安や自信喪失につながりやすくなります。
こういったときは、「本当にそうだろうか?」「別の見方もできないか?」と、自分の考え方に“問い直し”をしてみましょう。これは「認知行動療法(CBT)」の基本であり、セルフケアとしても有効です。
一人で悩みを抱え込んでしまうと、不安はどんどん大きくなります。「話すこと」には、気持ちを整理し、安心感を得る力があります。
■ 無理せず、できることから始めてみましょう
不安を完全になくすことは難しいかもしれません。でも、不安と“うまくつきあう”ことは可能です。まずは、できることから少しずつ。生活を整え、自分自身の内側に目を向けることが、心の回復への第一歩になります。
不安感が長く続いたり、日常生活に支障をきたすようになってきた場合は、専門の医療機関での治療が必要です。不安症の治療には、「薬による治療」や「話を中心とした心理療法(カウンセリング)」など、さまざまな方法があります。自分に合った治療を選ぶためにも、まずは正しく理解することが大切です。
心療内科や精神科では、不安の症状や体調、生活背景を丁寧に聞き取りながら、症状に合わせた治療が行われます。主な治療は以下の2つです。
● 薬物療法
不安を和らげるために、抗不安薬や抗うつ薬(SSRIなど)が用いられることがあります。 これらの薬は、不安を引き起こす神経伝達物質のバランスを整える作用があります。副作用や依存が心配な方もいますが、医師の指示のもとで正しく使用すれば、安心して治療を進められます。
● 認知行動療法(CBT)などの心理療法
「考え方のクセ(認知)」や「行動パターン」を見直し、より生きやすくするための方法です。 たとえば、「人前で話すと必ず失敗する」という思い込みに対して、「うまくいった経験もあるのでは?」と視点を変えるトレーニングを行います。 対話を通じて不安と向き合う治療法として、近年注目されています。
「今すぐ薬には頼りたくない」「まずは話を聞いてほしい」という方には、カウンセリング(心理療法)がおすすめです。
● 臨床心理士と公認心理師の違い
どちらも心のケアのプロフェッショナルであり、不安やストレスへの対処をサポートしてくれます。
● どんな人がカウンセリングを受けている?
「仕事でうまくいかない」「人間関係に疲れた」「家族のことで悩んでいる」など、特別な病気でなくても相談する人が多いです。 話すことで、自分の気持ちが整理できたり、「どうすればいいか」が見えてくることもあります。
不安症は、適切な治療と生活改善を続けることで、多くの方が回復を実感しています。
● 治療にかかる期間の目安
個人差はありますが、数か月〜1年ほどで改善する方が多いです。 「すぐに効果が出ないから不安…」という方も多いですが、焦らず自分のペースで進めていくことが大切です。
● 寛解後の再発予防とセルフケア
不安が落ち着いてからも、生活習慣やストレスとのつき合い方を見直すことで再発を予防できます。 医師やカウンセラーと連携しながら、セルフケア(運動・睡眠・思考の整理)を続けることがポイントです。
突然の動悸や息苦しさは「パニック発作」の可能性がありますが、心臓や呼吸器の疾患でも同じような症状が出ることがあります。
まずは内科で検査を受け、異常がなければ心療内科や精神科での相談をおすすめします。
眠れないほどの不安が2週間以上続く場合は、心の不調のサインかもしれません。
日常生活に支障が出ているようであれば、心療内科や精神科での受診を検討してください。睡眠薬に頼らず、根本的な不安の原因にアプローチすることが大切です。
不安症には、抗不安薬や抗うつ薬などが用いられることがあります。
最近は依存性が少なく、副作用の少ない薬も増えてきています。医師が症状や体質に合わせて処方するため、自己判断での服用や中断は避けてください。
両者の診療内容に大きな違いはありませんが、心療内科は「身体の症状も伴う心の不調」、精神科は「精神症状が主な不調」を扱うことが多いです。
不安感に加えて動悸や胃腸症状がある場合は心療内科、気分の落ち込みや強い恐怖感がある場合は精神科を選ぶとよいでしょう。
必ずしも一生飲み続けるわけではありません。
多くの方が数か月〜1年程度の治療で症状が軽減し、薬を減らしたり中止したりしています。治療の終了時期は、医師と相談しながら決めていきます。
深呼吸や腹式呼吸、手を温める、五感を使ったリラクゼーション(音楽・香り・肌触り)などが効果的です。
軽度の不安なら、日々の生活習慣の見直しや、信頼できる人に話すだけでも緩和されることがあります。
不安症は「甘え」ではありません。脳の神経伝達物質のバランスが崩れて起こる「病気」です。
周囲の理解が得られないときでも、ご自身の体調やつらさを大切にして、医師に相談することが第一歩になります。
産後うつの一症状や、ホルモンバランスの変化による一時的な不安感かもしれません。
自然に改善することもありますが、つらさが続くようであれば早めに婦人科や心療内科で相談しましょう。子育て支援と連携して対応できることもあります。
更年期の不安感は、女性ホルモンの急激な変化により自律神経や感情のバランスが乱れることが原因です。
婦人科でホルモン補充療法を含めた相談ができるほか、必要に応じて心療内科との併診も有効です。
子どもにとっての不安も立派な“こころの症状”です。
無理に登校を促すのではなく、まずは話を聞いてあげてください。思春期外来やユースクリニック、小児精神科などで専門的な対応が受けられる場合もあります。
からだとこころのクリニックラポール佐竹 学 先生
宮城県仙台市の心療内科、からだとこころのクリニックラポールでは、身体疾患にも精神疾患にも対応しています。そのため、症状や原因別にそれぞれ違う病院に通って頂く必要はありません。
場合によっては、專門治療を行っている大学病院などにご紹介させて頂くこともございますが、まずは当クリニックにお越し頂ければ、適切な検査と診断を行い、患者さまにとって最も良いと思われる治療方針をご提案させて頂きます。
身体の症状にせよ、心の問題にせよ、患者さまがお持ちのお悩みは全て真正面から受け止めるようにしています。
職場や家庭についての不満、転職や転勤など環境変化による不安など、何でもお気軽にお話しください。
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