鼻を強くかみすぎないこと、鼻づまり用点鼻薬などを自己判断で長期間使用し続けないこと、症状が長引くのに受診を先延ばしにしないことが大切です。
薬の使用方法は、添付文書を確認し、薬剤師や医師に相談してください。
鼻づまりが何か月も治らない、黄色や緑色の鼻水が喉に流れてくる、鼻の奥から目の周りにかけて重だるい感じが続く――このような症状は、多くの人が一度は経験する身近な悩みです。
風邪をこじらせた程度で自然に治まるケースがある一方で、細菌感染やアレルギー、鼻茸(鼻ポリープ)などが背景にあり、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)として長引いていることもあります。
この記事では、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)の症状・原因から、緊急性の見分け方、自分でできる対処法、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を含む治療の選択肢までを、耳鼻咽喉科の医師が解説します。
この記事のポイント
目次
慢性副鼻腔炎とは、鼻の周囲にある空洞「副鼻腔」と鼻腔に炎症が続く病気です。一般に、鼻づまり、鼻水・後鼻漏、においの低下、顔面の痛みや圧迫感などのうち2つ以上の症状が12週間(約3か月)以上続き、鼻内視鏡検査やCT検査などで炎症所見が確認される場合に診断されます。症状だけで確定診断となるわけではなく、客観的な検査所見とあわせて医師が判断するものです。
一般に「蓄膿症」と呼ばれるのは、この慢性副鼻腔炎を指して使われる通称です。医学的には「慢性副鼻腔炎」や「慢性鼻副鼻腔炎」と表現されます。
主な症状としては、以下のようなものが挙げられます。
これらの症状は一つだけが単独で現れることもあれば、複数が同時に続くこともあります。症状の強さや組み合わせには個人差があり、発熱や顔面痛が目立たない場合もあります。
副鼻腔炎には「急性」と「慢性」の区別があります。急性副鼻腔炎は、風邪などの上気道感染をきっかけに起こることが多く、一般には4週間未満の経過を指します。症状が10日以上改善しない、いったん良くなった後に悪化する、あるいは強い症状がある場合には、細菌性副鼻腔炎なども考慮して医療機関での評価が必要になることがあります。
これに対して慢性副鼻腔炎は、同様の症状が12週間(約3か月)以上続いている状態を指します。急性副鼻腔炎を繰り返すことや、上気道感染後に症状が長引くことが、慢性副鼻腔炎の発症・増悪に関わる場合があります。ただし、急性副鼻腔炎が必ず慢性化するわけではなく、背景には複数の要因が関与すると考えられています。
「鼻炎」と「副鼻腔炎」は混同されやすい言葉ですが、炎症が起こっている場所に違いがあります。慢性鼻炎はアレルギー性鼻炎などに代表されるように、主に鼻腔(鼻の内部の空間)の粘膜に炎症が起こっている状態です。これに対して慢性副鼻腔炎は、鼻腔だけでなく、その奥にある副鼻腔にまで炎症が及んでいる状態を指します。
症状としては、鼻づまりやくしゃみ、鼻水など共通する部分も多く、症状だけから両者を正確に見分けることは難しいとされています。そのため自己判断で「これは鼻炎だから」「蓄膿症ではないはず」と決めつけるのではなく、耳鼻咽喉科での内視鏡検査や画像検査によって、実際にどこにどの程度の炎症が起きているのかを確認することが望ましいと考えられます。
慢性副鼻腔炎は、一つの原因だけで起こるとは限らない、慢性的な炎症性疾患です。鼻や副鼻腔の粘膜に続く炎症、鼻茸、アレルギー性鼻炎や喘息などの併存症、鼻の構造、急性炎症の反復など、複数の要因が関係することがあります。
急性の細菌性副鼻腔炎が長引く・繰り返すことが関与する場合もありますが、慢性副鼻腔炎のすべてが細菌感染の持続によって起こるわけではありません。抗菌薬による治療対象となる急性細菌性副鼻腔炎とは区別して考える必要があり、抗菌薬が検討されるのは、急性増悪や細菌感染の合併が疑われる一部のケースなど、状況によります。
原因によって適した対処法や治療の方向性が異なるため、気になる症状が続く場合は、自己判断せずに専門的な検査を受けることが勧められます。
慢性副鼻腔炎の中には、「好酸球性副鼻腔炎」と呼ばれるタイプが含まれることがあります。好酸球とは、アレルギー反応に関わる白血球の一種です。このタイプは、両側に鼻茸(鼻ポリープ)が生じやすく、嗅覚障害を伴いやすい難治性の慢性副鼻腔炎とされています。気管支喘息やアスピリン・NSAIDs不耐症を伴うこともあります。
診断は、症状、鼻内視鏡所見、CT所見、血液中の好酸球の割合に加え、必要に応じて鼻茸組織の病理検査などを総合して医師が判断します。症状や採血の結果だけで自己判断できるものではありません。
治療後も鼻茸や症状が再発しやすい傾向があり、手術を行った場合も継続的な通院・治療管理が重要とされています。難治例では、薬物治療・手術に加えて生物学的製剤による治療が検討される場合もありますが、適応や選択は個々の病状に応じて医師が判断するものです。
慢性副鼻腔炎の多くは緊急性の低い経過をたどりますが、まれに、炎症が目や脳の周囲へ広がり、重篤な状態につながる可能性が指摘されています。ここでは、注意しておきたい症状の目安を整理します。
以下のような症状がある場合は、単なる鼻づまりとして様子を見るのではなく、目や脳の周囲へ炎症が広がっている可能性も考え、通常の外来受診を待たずに対応することが望ましいと考えられます。
上記のような症状がある場合は、目や脳の周囲へ炎症が広がっている可能性もあるため、通常の外来受診を待たず、救急医療機関へ至急相談してください。呼びかけへの反応が悪い、意識がもうろうとしている、急激な視力低下や強い息苦しさなど、緊急性が高い場合は119番で救急要請を検討してください。
上記に当てはまらないものの、鼻づまりや鼻水などの症状が強い・長引いている場合は、当日中から数日以内を目安に、耳鼻咽喉科への相談を検討してください。
なお、「この症状なら大丈夫」「この程度なら病院に行かなくてよい」といった判断を、症状の記憶や体感だけで下すことは難しい場合があります。少しでも不安がある場合は、無理に自己判断をせず、医療機関に相談することが推奨されます。
鼻うがいは、鼻の中にたまった分泌物や汚れを洗い流す方法として広く行われています。行う場合は、市販の鼻洗浄用製品や、体液に近い濃度の食塩水を用います。水道水をそのまま使わず、滅菌水・蒸留水・精製水、または十分に煮沸して冷ました水を使用してください。濃度が適切でない液体や冷たすぎる液体は、鼻の粘膜にしみたり痛みを生じたりすることがあります。
鼻うがいを行って痛みや不快感が強まる場合は中止し、耳鼻咽喉科に相談しましょう。また、鼻の手術直後や強い鼻出血があるとき、耳の症状があるときなどは、自己判断で始めず、担当医に方法や時期を確認してください。
症状を悪化させないために、次のような点に注意することが勧められています。
薬剤の使用期間・用法用量は添付文書を確認し、薬剤師や医師に相談してください。
薬局で購入できる市販薬は、鼻づまりや鼻水といった症状を一時的に和らげる目的で使われることがあります。ただし、市販薬はあくまで症状の緩和を目的としたものであり、慢性副鼻腔炎そのものの原因を取り除く治療にはならない場合があります。
特に、鼻づまりを一時的に和らげる市販の点鼻薬の中には、連用によってかえって鼻づまりが悪化する成分を含むものがあります。使用期間や用法・用量を守り、長引く症状に対して自己判断で使い続けないようにしてください。
症状が長引いている場合や、繰り返し市販薬に頼らざるを得ない状態が続いている場合は、根本的な原因を確認するためにも、耳鼻咽喉科での診察を検討することが推奨されます。
鼻や副鼻腔の症状については、耳鼻咽喉科が基本的な受診先となります。長引く鼻づまりや後鼻漏、嗅覚の低下といった症状がある場合は、耳鼻咽喉科での相談が第一歩となります。
慢性副鼻腔炎は症状だけでは確定できないため、鼻内視鏡やCTなどで炎症の客観的な所見を確認し、治療方針を検討します。細いカメラを使った内視鏡検査で鼻の中の状態を直接観察したり、CT検査で副鼻腔の炎症の範囲や程度を画像として確認したりすることがあります。これらの検査によって、慢性副鼻腔炎かどうか、またどのタイプに近いかといった見極めが行われます。
治療では、鼻洗浄や点鼻薬などで鼻・副鼻腔の炎症や分泌物の排出を整えることが基本になります。症状や病型、急性の細菌感染の合併の有無などに応じて、抗菌薬、去痰薬、ステロイド薬などが選択されることがあります。薬の種類や使用期間は自己判断せず、医師の指示に従うことが大切です。
保存的治療によって症状が改善するケースも多くありますが、改善が不十分な場合や、症状を繰り返す場合には、次の段階として手術が選択肢に挙がることがあります。
内視鏡下副鼻腔手術(ESS:Endoscopic Sinus Surgery)は、鼻の穴から内視鏡と手術器具を入れて行う手術です。病変の程度に応じて、鼻茸、炎症で狭くなった副鼻腔の通路、たまった分泌物などを処置し、副鼻腔の換気と分泌物の排出を改善することを目指します。通常、顔の皮膚を切開しないため、外見上の手術痕は残りません。
ここで押さえておきたいのは、ESSの目的が「副鼻腔の粘膜を大きく削り取ること」ではないという点です。あくまで、換気や分泌物の排出を妨げている部分を改善し、副鼻腔が本来の状態に近づくよう手助けすることが目的とされています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期待できる効果 | 鼻づまり・後鼻漏・嗅覚障害などの症状改善が期待できるとされていますが、効果の程度には個人差があります |
| 傷あと | 顔の皮膚を切開しないため、通常は外見上の手術痕は残りません |
| 麻酔・入院 | 病変の広さや患者の状態、施設の方針によって、全身麻酔・局所麻酔、日帰り・入院手術のいずれかが選択されます |
| 術後管理 | 手術後も通院での経過観察が必要です。好酸球性副鼻腔炎などのタイプでは、術後も継続的な治療管理が必要になる場合があります |
| 合併症の可能性 | 出血、感染、術後の癒着、症状や鼻茸の再発などが起こる可能性があります。また、副鼻腔は目や頭蓋底に近いため、まれではあるものの重大な合併症についても、手術前に担当医から十分な説明を受けることが重要です |
内視鏡下副鼻腔手術は、すべての慢性副鼻腔炎の方に一律に勧められるものではありません。一般には、次のような状況で選択肢の一つとして検討されることがあります。
手術を受けるかどうかは、症状の程度や生活への影響、検査結果などをふまえて、医師との相談を通じて個別に判断されるものです。「手術をすれば必ず治る」といった断定的な理解ではなく、あくまで治療の選択肢の一つとして、メリットとデメリットの両方を確認したうえで検討することが大切です。
慢性副鼻腔炎の治療期間は、病型、症状の程度、鼻茸の有無、治療への反応などによって大きく異なります。治療開始後の改善の時期や、手術後の回復・通院期間を一律に示すことはできません。
保存的治療によっていったん症状が落ち着いても、体調の変化などをきっかけに再び症状が出てくることもあり、長期的な視点でのケアが必要になる場合があります。手術を受けた場合も、術後すぐに症状がすべて解消するとは限らず、術後の通院や経過観察を通じて少しずつ状態を確認していくことになります。特に好酸球性副鼻腔炎など再発しやすい病型では、症状が落ち着いた後も継続的な管理が必要になることがあります。
実際の見通しは、医師による診察・検査を通じて個別に確認していく必要があります。
「蓄膿症」は、一般に慢性副鼻腔炎を指して使われる通称です。
医学的には「慢性副鼻腔炎」や「慢性鼻副鼻腔炎」と表現されます。
鼻を強くかみすぎないこと、鼻づまり用点鼻薬などを自己判断で長期間使用し続けないこと、症状が長引くのに受診を先延ばしにしないことが大切です。
薬の使用方法は、添付文書を確認し、薬剤師や医師に相談してください。
鼻うがいなどで鼻症状が和らぐことはありますが、慢性副鼻腔炎の診断や治療の代わりにはなりません。
症状が12週間以上続く、繰り返す、嗅覚低下や強い鼻づまりがある場合は、耳鼻咽喉科で原因を確認しましょう。
顔面や頭の重だるさ・痛みが副鼻腔炎の症状として現れることがあります。
ただし、強い頭痛、急に悪化する頭痛、発熱、目の腫れや見え方の異常、意識の変化を伴う場合は、通常の副鼻腔炎以外の可能性も含めて緊急の評価が必要です。
鼻うがいは症状や生活の質の改善に役立つことがありますが、それだけで完全に治るとは限りません。
症状に応じて医療機関での治療と併用することが検討されます。
病型や症状の程度、治療への反応によって幅があり、一律の期間を示すことはできません。
慢性化している場合は治療に時間がかかることがあります。
耳鼻咽喉科の受診が基本となります。
アレルギーの関与や、好酸球性副鼻腔炎など再発しやすいタイプが背景にある場合があります。
慢性鼻炎は主に鼻腔粘膜の炎症、慢性副鼻腔炎は副鼻腔まで炎症が及ぶ状態とされています。
症状だけでの判別は難しいため、医療機関での検査が推奨されます。
薬物治療で症状の改善が十分でない場合や、症状を繰り返す場合、鼻茸が大きい場合などに選択肢として検討されることがあります。

堀耳鼻咽喉科眼科医院堀 亨 先生
長年にわたり耳鼻咽喉科診療に携わり、地域の皆様とともに歩んでまいりました。大学病院や地域基幹病院で培った豊富な臨床経験をもとに、これからも幅広い症例に対応してまいります。
診療では、何よりも「丁寧な診察」を心がけています。治療内容や検査結果は、図や資料を用いながらわかりやすく説明いたします。専門医としての確かな根拠と、日常生活に寄り添った視点の両面から、最適な治療法をご提案いたします。
耳鼻咽喉科には、小児から高齢の方まで幅広い年齢層の患者様が来院されます。お子様には安心して受けられる診察環境を、ご高齢の方には誤嚥性肺炎や難聴予防など、加齢に伴う課題へのサポートを大切にしています。また、学校健診や地域のがん検診とも連携し、病気の早期発見・早期治療にも積極的に取り組んでまいります。
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