最終更新日:2023.08.29

敗血症とは?原因と症状、死亡率の高い敗血症性ショックを解説

敗血症とは?原因と症状、死亡率の高い敗血症性ショックを解説

病原体が体内に侵入し、増殖し、炎症などの症状を引き起こすことを「感染症」といいます。この感染症による炎症が全身に及び、命に危険が及ぶ状態となったものが敗血症です。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって、その重篤化が不安視されていますが、その病態悪化にはこの敗血症が関与していると考えられています。

本記事では、敗血症の診察をしている医師に監修していただき、その原因と症状、死亡率の高い敗血症性ショックを解説しています。

敗血症とは?定義と診断基準

私たちの体には「免疫機能」とよばれる防衛システムが備わっています。ウイルスや細菌などの侵入によって感染症が発生すると、このシステムが作動し、免疫細胞が細菌やウイルスと戦います。

これは正常な反応ですが、ときにその免疫細胞が過剰反応となって制御不能になり、自身の臓器を攻撃してしまうことがあります。これが敗血症(読み方:はいけつしょう)とよばれる状態です。

敗血症は特定の疾患の名前のように聞こえますが、実際にはこのような生命を脅かすほどの臓器障害が引き起こされる状態を指すものです。

敗血症には、定義・診断基準があります。

下記の2項目以上に当てはまる場合、敗血症と診断されます。

因 子 数 値
体温 <36℃ もしくは >38℃
心拍数 > 90回/分
呼吸数 > 20回/分
白血球数 > 12,000/μL または < 4,000/μL

 

敗血症は人にうつる?

敗血症は、人にうつる病気ではありません。

敗血症は、何らかのウイルスや細菌によって感染症を引き起こしたものが重篤化する病気です。敗血症自体が、人から人へと感染するわけではありません。

敗血症の原因となる感染症および微生物

敗血症の原因となる感染症は、

  • 肺炎(肺の急性感染症)
  • 尿路感染症

が多い傾向にあります。

男性は肺炎をはじめとした呼吸器系の感染症が多く、女性は尿路感染症などの泌尿生殖系が多く認められます。

そのほかにも、

  • 腹膜炎(腹膜の感染症)
  • 腸管感染症
  • 血流感染症

など、敗血症を引き起こす感染症はたくさんあります。

感染する微生物は

  • 細菌
  • ウイルス
  • カビ

など多様ですが、細菌(バクテリア)による感染が多く認められています。

敗血症を起こすリスクが高い方(疾患と状態)

下記のケースでは、感染と重篤化のリスクが高いと考えられています。

中には人体に常在し、本来は体に害を及ぼさない「常在細菌」によって感染症に至ることもあります。

血液の病気と敗血症

  • 造血器腫瘍
  • 再生不良性貧血

など、血液細胞が正常につくられない病態によって免疫機能が著しく低下し、敗血症の発症リスクが高まります。

また、造血幹細胞移植後も同様の状態です。

呼吸器・心臓の病気と敗血症

  • 気管支喘息
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

などをはじめとする慢性呼吸器疾患や、

  • 虚血性心疾患
  • 心不全

などの慢性心疾患があると、敗血症のリスクが高まると考えられています。

糖尿病と敗血症

血糖値が十分にコントロールされていないと、白血球の正常な機能が妨げられて感染症に陥りやすいです。

とくに腎疾患などの合併症がある場合は、重篤化しやすいため注意が必要です。

慢性腎疾患・肝硬変と敗血症

透析患者の方や腎移植例では、食細胞が十分に機能しない状態にあり、感染リスクが高いと考えられています。

また、肝硬変の場合は感染症を機に、意識障害などを起こすことがあります。

神経や神経筋の病気と敗血症

  • 多発性硬化症(神経系に慢性的な炎症が起きる病態)
  • 重症筋無力症(脳神経と筋肉の接続部が破壊される病態)

など、免疫異常のある神経疾患では、敗血症のリスクが高いと考えられています。

疾患や治療による免疫抑制状態

膠原病などの自己免疫疾患のほか、

  • 免疫抑制薬
  • 副腎皮質ステロイド薬

など、薬物治療を継続的に受けている場合も感染リスクが高まります。

敗血症の症状

敗血症では何か特徴的な症状や兆候が出るということではなく、障害が起きている臓器によって、さまざまな症状が起きます。

主な初期症状としては、発熱(とくに38℃以上の高熱になることが多い)、悪寒(発熱時に起きる寒気、体がゾクゾクし、ガタガタ震える)、発汗などが見られることがあります。

そのほかにも、

  • 36℃以下の低体温
  • 脈や呼吸が速い
  • 全身がむくむ
  • 手足が異常に冷たい
  • 意識がおかしい
  • 血圧がいつより低い

上記のような症状がみられることもあります。

これらの症状が該当し、いつもと様子がおかしいと感じたら、医療機関を受診しましょう。

敗血症による多臓器不全

敗血症を発症し、適切な治療が行われない場合は、低血圧による意識障害などを引き起こしてショック状態となります。

その結果、多数の臓器に障害が及びます。

敗血症によって起こる臓器障害には、

  • 敗血症性脳炎
  • 敗血症性ショック
  • 重症呼吸不全
  • 急性腎障害
  • 急性肝障害
  • 腸管機能不全
  • 全身の微小血管の障害

などがあげられます。

これらの臓器障害が複数重なった状態が多臓器不全です。

多臓器不全になると、数時間で死亡してしまう可能性が高くなります。

敗血症性ショックとは

感染症による全身の炎症によって血圧が危険なレベルまで低下し、脳や腎臓など全身の重要な臓器に十分な酸素を届けられなくなる重篤な状態を、敗血症性ショックといいます。

  • 熱が出る、低体温になる
  • 脈が早くなる
  • 呼吸が荒くなる
  • 注意力が低下する
  • 意識がぼんやりする
  • 手足が冷たくなる

などの症状があらわれます。

敗血症性ショックを起こしやすい人

  • 新生児
  • 高齢者
  • 妊婦
  • 免疫力が低下した方
    → 例:免疫抑制療法を行っている、がん・HIV感染症など免疫の病気がある
  • 人工の医療機器が体内と外部をつないでいる状態
    → 例:静脈カテーテル、尿道カテーテル、人工呼吸器 など
重症化して多臓器不全が起こると、治療による回復の可能性が極めて低くなり致命的となります。

敗血症の検査

まずは問診によって体の状況を把握確認し、続けて身体診察を行います。

  • バイタルサインの確認
  • 視診・聴診
  • 打診・触診

など、身体の診察を行うことで感染を起こしている場所を特定することができます。また、身体診察によって重症度の推測をします。

敗血症は命にかかわるとても危険な状態です。敗血症が疑われる場合は、これらの診察や検査によって迅速な診断を行い、適切な治療を早急に開始されることが重要です。

そのほか、専門的な検査を解説します。

細菌学的検査

血液検査(白血球・CRP)

画像検査(X線検査、CT検査、超音波検査)

敗血症の診断基準:SIRS、SOFAスコアなど

敗血症の治療

敗血症の予防

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こちらの記事の監修医師

野口 哲也

荒井駅前のぐち内科クリニック野口 哲也 先生

宮城県仙台市の「荒井駅前のぐち内科クリニック」 院長の野口です。

私は岩手県盛岡市で大学生活を送り、東北労災病院内科、東北大学消化器内科での消化器病学の修練、対がん協会での胃・大腸がん検診活動、そして、宮城県立がんセンターでの消化器癌に対するがん治療に従事してまいりました。消化器内科の専門家として診断から治療、特に内視鏡治療を行ってきました。最新の治療や全国的な治験や研究にも参加してきました。

これまで地域医療にも携わり、高血圧や糖尿病、肺炎や感冒、インフルエンザなど、様々な病で通院してくる患者さんの診療にも従事してまいりました。震災復興が進む、ここ荒井地区において、これまでの28年間の勤務医としての経験を活かし、地域の皆様の健康を支える医療、身近なかかりつけ医を目指し、少しでも貢献させて頂ければ思っております。どうぞ宜しくお願い申し上げます。

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