最終更新日:2023.11.13

統合失調症とは?症状と特徴、なりやすい人・してはいけないことを解説

統合失調症とは?症状と特徴、なりやすい人・してはいけないことを解説

これまで「精神分裂病」という病名で診断されてきた病気に対して、「統合失調症」という病名に変更されました。 (2002年6月)

その病名変更の目的としては、精神分裂という名前のイメージから生まれる偏見や誤解を払拭すること、そして患者さんが社会で過ごしやすくするために、という思いが込められています。しかしながら、患者さんご自身やご家族ですら、この病気に対して誤った認識をもってしまっているケースも多いようです。

本記事は統合失調症の診療にあたる医師に監修していただき、精神分裂病と診断されてきた病気の特徴と原因、ステージ別の症状を解説しています。

統合失調症とは

統合失調症という病名で使用される「統合」とは、思考や行動、そして感情などをひとつの目的にまとめていく能力のことを意味します。統合失調症とは、この脳の統合機能が一次的に調和がとれなくなる(失調)病気です。それによって、幻覚・幻聴や妄想などをはじめとする特徴的な症状が現れます。

統合失調症は100人〜120人に1人程度は発症する可能性があり、あらゆる病気の中で入院患者数がもっとも多い病気です。決して珍しい病気ではありません。この病気で一番問題なのが、治療後も意欲の低下や感情表現の乏しさといった症状や、認知機能障害が長く残る可能性があるという点です。それによって、日常生活・社会生活がスムーズに営むことが困難になります。社会復帰を目指すために、この生きづらさをどう改善するかがとても重要となります。

また精神疾患はとくに、病気のことを隠して生活している患者さんやご家族が少なくないという現状があります。それらを理由に、治療を受けるのが遅れてしまったり、治療自体を諦めてしまっている方がいらっしゃるのであれば、それはとても深刻な問題です。

近年、統合失調症の治療はめざましく進歩し、症状をコントロールしながら健康な方と同様に暮らしていくことは十分に可能となっています。統合失調症は、早い段階で治療をはじめれば、十分に回復が望める病気です。病気を治すには、患者さんご本人の努力がもちろん大切ですが、ご家族をはじめとする周囲の方の協力と理解も必要不可欠です。家族が患者さんにどのように接していくかによって、病気が悪化してしまうことさえあります。

そのため、過度に神経質になったり犠牲的になったりせず、患者さんと適度な距離を保ちながら、同じ方向を見てあたたかく側で見守るという姿勢を忘れてはいけません。まずは統合失調症という病気がどのようなものなのか、正しく理解することが大切です。

統合失調症になりやすい人

精神疾患にはさまざまな種類がありますが、病気になる前に「特有の性格傾向がある」という考えがあります。これを医学用語で「病前性格」といいます。この統合失調症でも、一定の性格傾向があると考えられています。

  • 内気で控えめ、おとなしい
  • 神経質、もしくは無頓着
  • 自己主張が苦手
  • 些細なことで傷つきやすい
  • 人と関わるのが苦手、独りを好む

などががげられます。

もちろんこれらはすべての患者さんに該当する訳ではありません。一方で、病気の発症や病態の進行に、なんらかの影響を与えているとされています。

統合失調症の発症年齢はどれくらい?

統合失調症の平均発症年齢は、男性で20代後半、女性が30歳前後と比較的若年層にみられます。

10代半ばから、40歳くらいまでで起こることが多い病気です。

統合失調症の前兆となるサイン

統合失調症は、本格的に発症する前に、病気の前兆ともいえる症状が見られることがあります。ご家族など周囲の方はその変化・サインを見逃さず、早く気付いて早期の治療につなげることがとても重要です。

ただし、統合失調症は個人差がとても大きい病気なので、自己判断せずに、医師に相談しながら病気の例外をよく理解しておくことも大切です。

統合失調症による生活や行動面での異変

  • 夜、目が覚めて眠れなくなる。
  • 理由もなく、学校や仕事を休むことが多くなる。
  • 学校の成績が下がる、仕事がうまくいかない。
  • ものごとに集中できない。
  • 注意力が散漫になり、落ち着きがない。
  • 何もしないで、長い時間、ぼんやりしている。
  • 身だしなみに気を使わなくなる。
  • 部屋の中など身の回りが乱雑になる。
  • 外に出たがらず、引きこもりがちになる。
  • 独り言や独り笑いなど、奇妙な行動・言動が目立つ。

さらに、感情の起伏が激しくなるのもこの病気の特徴の一つです。

  • 感情が不安定になる。
  • 突然怒りっぽくなったり、乱暴になったりする。
  • 些細なことで怒ることが多くなる。(激しく動きまわる)
  • その場にそぐわない、感情表現・行動を取るようになる。

統合失調症による対人関係の問題

  • 会話があちこちに飛んで脱線する。
  • 会話が支離滅裂になり、会話が通じなくなる。
  • 人との付き合いに関心がなくなる。
  • 独りでいることを好むようになる。
  • 人と打ち解けるのが困難になる。
  • 他人を過度に怖がる。
  • 精神的に傷つきやすくなる。

など

このような異変の背景には、患者さん自身の中で

  • 頭の中の考えがまとまらない
  • 気分が落ち込む
  • 何もする気になれない、無気力になる
  • 漠然と不安を感じている
  • 焦燥感(異常に落ち着かない、緊張状態)がある

以上のように、不安や恐怖、自分が自分という感じがしないような自身でも理解できない感情が影響していると考えられます。

統合失調症の人にしてはいけないこと

統合失調症の発症直後は、ほとんどの患者さんに自分が病気であるという認識がありません。妄想や幻覚・幻聴などが激しいときは、患者さん自身は不安と恐怖に怯えていることが多いです。そのため、無理に病院へ連れて行くことが時に逆効果となってしまうことがあります。

統合失調症の人にしてはいけないことは、

  • 不安を仰ぐことを言う
  • 命令口調やきつい言い方をする
  • 嘘をつく

といった言動です。

患者さんがいつまでも受診を拒んでいると、周りの家族はなんとかして受診してもらおうと、ついついそのような言動を取りがちです。

はれものに触るように接したり、あいまいな言い方をすると、患者さんの不安をかきたててしまうリスクがあるため注意が必要です。とくに嘘をついて病院へ連れていったり、命令口調やきつい言い方で叱ったりすると、患者さんは反発を感じるだけで逆効果になります。

まずは、今、患者さんご自身に起こっている不調が病気によるものであること、そして治療をすれば必ず楽になるということを、丁寧に優しく落ち着いて、そして粘り強く伝えることが大切です。

統合失調症の原因

統合失調症の根本的な原因は未だ解明されておらず、いくつかのリスク要因が複合的に重なって発症すると考えられています。

現段階で考えられている要因としては、

  • 脳内で起こる変調
  • 心理的な問題・ストレス
  • 遺伝的な要因
  • 生活環境

などがあげられます。

脳内で起こる変調

脳内の異常については、まだ十分に解明されていませんが、ドーパミンの失調が統合失調症の発症に深く関わっているという説があります。

ドーパミンは、

  • 意欲
  • 感情
  • 学習
  • 運動調節

など、人間の大切な機能をつかさどる物質です。

そのドーパミンが過剰に分泌される、あるいは機能低下するといったことが、統合失調症の特有の症状を引き起こすと考えられています。

実際、統合失調症の治療では、このドーパミンの作用を阻害・減弱させる抗精神病薬(ドーパミン拮抗薬)が使われます。

心理的な問題・ストレス

ストレスはさまざまな病気を発症する引き金となりますが、統合失調症の方はストレスに対して過剰(過敏)に反応する傾向がみられ、それが発症リスクのひとつになると考えられています。合わせて、病気の再発にも、この心理的な問題が関わっているとされています。

遺伝的な要因

統合失調症は遺伝病ではありませんが、これまでの研究では、遺伝情報を50%共有する第一度近親の関係にあたる人(父母・きょうだい・子ども)は、一般の発症率よりも高いことがわかっています。

統合失調症の発症にある程度、遺伝が関わっている可能性は確かですが、あくまでも限定的なものと考えます。

生活環境

精神的・身体的ストレスの多い環境に置かれたり、重大なライフイベント(進学・就職・結婚・出産など)があったりすると、もともとストレス耐性が弱い方は、それらを経験する時にとても大きなストレスになります。それが統合失調症を発症する引き金になることがあります。

統合失調症の診断

統合失調症の診察は、患者さんご本人とそのご家族との問診を中心に進められます。

症状については、

  • どのような症状がみられるか
  • いつごろから始まったか
  • どのような経過をたどっているか
  • 日常生活・社会生活への影響の度合い

などを確認します。

そのほかにも、

  • 既往歴
    → ケガや手術経験の有無、薬を継続して使用する病気を経験したか
  • 生活歴
    → 生まれた土地/転居の経験/友達は多かったか/学校の成績
    → 職業歴/結婚歴・離婚歴/子どもの数、など
  • 家族歴
    → 精神疾患をはじめとする家族の病歴、自殺者の有無など

これらの情報も、統合失調症を診断する上でとても重要です。

統合失調症の診断基準「DSM – 5」

統合失調症に限らず、心の病気は検査の結果ですぐに分かるものではありません。そのため、臨床の場ではさまざまな指標を使って診断を進めていきます。

アメリカ精神医学会が発行した「DSM – 5(精神疾患の分類と診断の手引・改訂版第5版」は、世界各国で用いられており、日本でも主流となっている診断基準です。

「DSM – 5」では、

  1. 妄想
  2. 幻覚
  3. 解体した会話
  4. ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動
  5. 陰性症状

この5つのうち、2つ以上(このうち少なくとも1つは、①②③)が1ヶ月以上持続している場合、統合失調症が疑われるとしています。

ただし、この診断基準はあくまでも参考情報であり、基本的には問診の結果や各種検査結果を総合的に判断して確定診断を行い、治療計画を作ります。

統合失調症以外でも、幻覚や妄想のようなよく似た症状を示すことがあるため、それらの病気を除外することも重要です。

統合失調症の確定診断(精密検査)

統合失調症の疑いがある場合、確定・鑑別診断をするためにさまざまな検査を行います。

  • 画像検査(MRI検査、CT検査)
  • 血液検査
  • 脳波検査

などが行われます。

統合失調症自体は、画像検査などでは判断ができません。しかし、これらの検査をすることで、統合失調症以外の病気を除外する手立てとなります。

何か身体的な病気から精神症状が起こっている可能性や、薬物の使用から生じる精神症状ではないことを確認します。(処方薬によっても、精神症状が出ることがあります。)

以上の検査によって、いずれでもないと判断した場合、統合失調症の可能性が高いと診断されます。

統合失調症の治療

統合失調症の治療の基本は、

  • 薬物療法
  • リハビリテーション

この2つです。

薬物療法だけでは、病気によって障害された認知機能や社会生活機能まで回復させることが困難なため、統合失調症の特有の症状を和らげる薬物療法と合わせて、社会への適応能力を高めるためのリハビリテーションを実施します。リハビリを併用すると、統合失調症の再発率が大きく下がるという研究結果もあります。

統合失調症の治療は、現在、通院治療が主流となっています。その背景には、重症の患者さんが減ったことや、軽症の患者さんが多くなっていることがあげられます。さらに、薬の開発が進み、医療の質が向上しているという点も理由の一つです。その結果、たとえ入院しても、早期に退院できる患者さんが増えています。

入院によって24時間体制で患者さんの状態を観察することは、集中的に治療ができるという点でメリットがある一方、長期化すると入院自体が患者さんへのストレスとなってしまうリスクを伴います。さらに、患者さんの社会性や生活能力が低下してしまう側面もあるため、注意が必要です。

通院自体が社会に出るためのリハビリになるという方もいらっしゃいます。このような点を総合的に考え判断して、患者さんとそのご家族、医療機関が協力して在宅治療を続けられるように努力することがとても大切です。

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こちらの記事の監修医師

佐竹 学

からだとこころのクリニックラポール佐竹 学 先生

宮城県仙台市の心療内科、からだとこころのクリニックラポールでは、身体疾患にも精神疾患にも対応しています。そのため、症状や原因別にそれぞれ違う病院に通って頂く必要はありません。

場合によっては、專門治療を行っている大学病院などにご紹介させて頂くこともございますが、まずは当クリニックにお越し頂ければ、適切な検査と診断を行い、患者さまにとって最も良いと思われる治療方針をご提案させて頂きます。

身体の症状にせよ、心の問題にせよ、患者さまがお持ちのお悩みは全て真正面から受け止めるようにしています。
職場や家庭についての不満、転職や転勤など環境変化による不安など、何でもお気軽にお話しください。

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