関節リウマチは「直接的な遺伝病」ではありません。
関節リウマチは「直接的な遺伝病」ではありませんが、家族に同じ病気の人がいる場合、発症リスクがやや高くなることが知られています。特定のHLA(ヒト白血球抗原)という遺伝子タイプが関与しているとされますが、必ずしも発症するわけではなく、喫煙や感染症などの環境要因も大きく関係しています。
リウマチという名前は、関節や筋肉が痛む病気の総称として使用されています。リウマチの種類は200種類以上も存在し、関節リウマチはリウマチの代表的疾患の1つです。
関節リウマチの医療は劇的に変化しています。治療効果の高い薬が次々と登場し、現在も新薬が開発中です。また検査方法も進歩して、早い段階で確実な診断が可能となっています。
本記事では関節リウマチの診察にあたる医師に監修していただき、関節リウマチの原因と症状の進行度を各ステージ別に解説しています。
目次
関節リウマチは免疫の働きの異常によって、関節内に炎症が起こる病気です。
そもそも免疫とは、私たちの体に侵入した病原体などの外敵を見分けて排除し、体を守るシステムです。しかし、そのシステムが誤作動を起こして自分の体の組織を敵と見なしてしまい、攻撃してしまうことがあります。
このように免疫機能の異常によって引き起こされる病気を自己免疫疾患といい、関節リウマチもその1つです。
関節リウマチはこれまでゆるやかに進行していく病気と考えられてきました。治療薬も豊富ではなかったために完治が難しく、一生付き合っていかなければならないともいわれていました。残念ながら現代の医学をもっても、関節リウマチは完治が難しい病気です。
一方で近年では、新薬が相次いで登場し目覚ましく治療が進歩しています。完治には至っていないものの、病気が落ち着いて安定した状態(寛解)に至るケースが増えています。
そのためには早期に医療機関を受診して病気を早い段階で発見し、治療を開始することが重要です。病気の進行を抑えて、関節を守ることができます。
全国で推定患者数は70~80万人といわれています。そして、その8割が女性です。
関節リウマチのは、30〜
関節リウマチの原因は、
一方で、
しかし、発症するリスク要因として
などの環境因子が関与していると考えられています。
家系で関節リウマチの発症者が多い場合や、一卵性双生児の一方が関節リウマチであると、もう一方も15-30%の確率で発症することが知られています。これにより、少なからず遺伝的な影響があるとされています。
さらに、リウマチ患者の遺伝子解析により、リウマチ発症を促す疾患感受性遺伝子が存在することが判明しています。
それでも、遺伝的な要素があるからといって、必ず関節リウマチになるわけではありません。環境も発症に影響を与えます。
もし血縁者に関節リウマチの患者がいる場合、関節の痛みが現れたら早めに医療機関で診断を受けることが、早期診断と治療につながります。
早く治療を始めれば、症状の進行を遅らせる可能性が高く、関節の痛みや骨破壊のリスクも低減することが期待されます。
関節リウマチは、突然激しい症状が出る病気ではありません。
ごく初期の症状は、
一方で、自覚症状として現れるのは、
この2つがあげられます。
関節リウマチは、関節を包んでいる関節包の内側にある滑膜が攻撃されて、炎症が起こり、痛みや腫れ、こわばりなどが生じます。
さらに病気が進行すると、関節の軟骨や骨などが徐々に破壊されて、やがて関節が変形していきます。
そうなると、関節を動かしにくくなるため、やがて日常生活の動作も不自由になり、支障をきたすようになります。仕事や家事がままならない状態になってしまう患者さんは少なくないのです。
適切な治療をしないまま炎症が進むと、さらに関節の骨が破壊されていき、関節の脱臼や変形などが起こることもあります。ひどい場合は膝関節や股関節などの機能にも影響が出て、歩くことすら難しくなるケースもあります。
残念ながら一度変形してしまった関節は、元に戻せません。
炎症が頸椎にまで及んだ場合は脊髄が圧迫されて手足のまひや脱力が起こり、緊急手術が必要になります。
関節リウマチでは、滑膜に炎症が起こってもいきなり関節が破壊されたり、変形したりするわけではありません。関節に傷がつくのは大体のところ発病後1〜2年ではじまるといわれています。それが積み重なって、5〜10年で変形が起こりますので、変形する前の段階で病気を見つけ、早期に治療することが大切です。
そのまま放っておくと、滑膜の炎症はじわじわと着実にまわりの組織を破壊し、そうなるともう元には戻せません。
滑膜炎が起こった関節の変化を4ステージで解説します。
ステージ1- 初期
炎症によって滑膜の細胞が増殖、表面が絨毛状になって関節液もたまりはじめます。
たまった関節液がカルシウム分を奪い、骨は鬆(す)が入ったようになり、関節炎の部位は骨粗鬆症になります。
ただし、軟骨や骨の破壊はまだありません。関節の紡錘状の腫れ、こわばりや痛み、熱っぽさを感じます。
ステージ2- 進行期
滑膜細胞の増殖によって肉芽が形成され、軟骨にとりつきます。
肉芽は軟骨を覆うように広がって、パンヌスという腹状の組織をつくり、やがて軟骨を破壊します。肉芽の一部は骨にまで侵入し、骨の組織を侵食して袋状のもの(嚢胞:のうほう)を形成します。
ただし、この段階でもまだ骨が変形するほどには至りません。
ステージ3- 高度期
軟骨が失われ、関節を動かすと骨と骨が直接擦れ合うようになります。 また、骨の表面が欠けること(骨びらん)もあります。骨の破壊がさらに進行すると、関節がうまくかみ合わなくなり、脱臼や亜脱臼が起こることもあります。関節の動きが悪くなり、まわりの腱や筋肉の伸縮も悪化して、関節を支えることができず、関節の変化が起こります。関節がきしむ音をたてたり、痛みのために曲げ伸ばしができなくなります。
ステージ4- 末期・荒廃期
パンヌスが繊維化して硬くなり、骨と骨がくっついて1つの骨のようになることがあります。これが強直とよばれるもので、関節はまったく動かせなくなります。あるいは骨がとけて、骨と骨が離れ、ぶらぶらと不安定になることもあります。(ムチランス変形)
いずれにしても、関節としての機能は完全に果たせなくなります。ここまで進行すると、痛みはやわらいできます。
治療の中心となるのは薬物療法です。個々の患者さんに応じて薬が処方されます。一方、薬物治療を行なっても関節の症状や機能障害が残っている場合は、リハビリテーションなどの保存的治療を試みます。それでも効果が不十分な場合や、関節の機能障害や変形が重度の場合(関節の炎症が長期に渡っている状態で、関節の変形や破壊がかなり進んでいるケースなど)は、手術を検討することになります。
近年では多くの新薬が登場し、関節リウマチの治療は飛躍的に進歩しています。
関節リウマチの治療薬は主に
などが使用されます。
全身の薬物治療を行なっても特定の関節だけ痛みが残ってしまうことがあります。症状がつらいときには、ステロイド薬やヒアルロン酸などをその関節内に注射することがあります。
内服薬よりも、関節内に直接少量を注射するだけの方が、副作用も起こりにくくなります。
たとえ薬物治療で炎症が治ったとしても、この病気は解決しないケースが少なくありません。
関節が破壊されてしまったことで、痛みや動きの不自由さ、そして変形が気になるという見た目の問題も起こることがあります。
その場合は手術を検討します。手術もさまざまな方法がありますが、部位や体の状態によって選択していきます。
関節リウマチは「直接的な遺伝病」ではありません。
関節リウマチは「直接的な遺伝病」ではありませんが、家族に同じ病気の人がいる場合、発症リスクがやや高くなることが知られています。特定のHLA(ヒト白血球抗原)という遺伝子タイプが関与しているとされますが、必ずしも発症するわけではなく、喫煙や感染症などの環境要因も大きく関係しています。
関節リウマチは、国が定める難病(指定難病)には該当しません。
関節リウマチ自体は「指定難病」ではありませんが、症状が重度であり、厚生労働省が定めた一定の要件を満たす場合には、「特定疾患治療研究事業」などの医療費助成の対象になることがあります。詳細は、主治医や自治体の窓口に確認しましょう。
加齢による関節痛(変形性関節症)は、主に関節を使ったときに痛むのが特徴です。
加齢による関節痛(変形性関節症)は、主に関節を使ったときに痛むのが特徴ですが、関節リウマチでは朝のこわばり(30分以上続く)や、左右対称に複数の関節が腫れるなどの特徴があります。また、リウマチは関節の内部(滑膜)に炎症を起こす自己免疫疾患である点が大きな違いです。
最も多い初期症状は、「朝の手指のこわばり」と「関節の痛み・腫れ」です。
特に、指の第2・第3関節や手首など、細かい関節から症状が始まることが多く、全身倦怠感や微熱、体重減少などの全身症状を伴うこともあります。早期の診断・治療が関節の変形を防ぐ鍵となります。
現在の医学では、関節リウマチを完全に治す(完治する)ことは難しいとされています。
現在の医学では、関節リウマチを完全に治す(完治する)ことは難しいとされていますが、適切な治療によって炎症を抑え、症状のない「寛解(かんかい)」という状態を長期に保つことは可能です。特に近年は、生物学的製剤やJAK阻害薬などの新薬により、生活の質(QOL)を大きく改善できるケースも増えています。
妊娠や授乳中の治療は慎重な判断が必要ですが、使用できる薬剤もあります。
メトトレキサート(MTX)など一部の薬は胎児への影響があるため、妊娠を希望する際は医師と相談し、薬の中止や切り替えが必要です。妊娠前から計画的に治療を行うことで、妊娠・出産が可能なケースも少なくありません。
はい、抗リウマチ薬(DMARDs)や生物学的製剤などには副作用が存在します。
例としては、感染症のリスク増加、肝機能障害、消化器症状、骨髄抑制などが挙げられます。ただし、これらのリスクを最小限に抑えるために、定期的な血液検査や感染症スクリーニングが行われ、個々に合わせた治療計画が立てられます。
バランスの良い食事(抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸、野菜、魚中心)や、禁煙・適度な運動・睡眠・ストレス管理が推奨されます。
また、肥満は関節への負担を増やし、炎症も悪化させる可能性があるため、体重管理も重要です。食事療法のみでリウマチを治すことはできませんが、補助的な役割として有効です。
症状のコントロールができていれば、多くの方が仕事を継続できます。
関節に負担をかけない作業環境の工夫や、職場での理解を得ることがポイントです。就労支援制度や障害者雇用、労働時間の調整なども選択肢として検討できます。早期治療によって、日常生活・社会生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
関節リウマチの専門診療科は「リウマチ科」や「膠原病内科」ですが、地域によっては「整形外科」で初期診療が行われることもあります。
手指や関節の腫れ・痛みが長く続く場合や、朝のこわばりを感じるようであれば、早めに専門医に相談することが重要です。リウマチ専門医の在籍する医療機関を探すと安心です。
二宮内科クリニック二宮 一見 先生
当クリニックは平成10年5月に盛岡市愛宕町に開業しました。
一般内科診療はもちろんのこと、糖尿病などの生活習慣関連病、膠原病・リウマチ疾患を専門とするクリニックです。
皆様の健康を守るため、優しく、わかりやすい説明を心がけ、診療に取り組んでおります。
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