最終更新日:2026.10.02 | 投稿日:2026.02.18

肺炎とは?原因・症状・検査・治療・予防までを専門医監修で解説

肺炎とは?原因・症状・検査・治療・予防までを専門医監修で解説

肺炎は、決して珍しい病気ではありません。

日本では死因の上位に入る病気で、厚生労働省の人口動態統計によると、2023年の死因順位では「肺炎」が第5位です。統計上は別に集計されている「誤嚥性肺炎」も第6位に入っています。特に高齢者では重症化しやすく、命に関わることがある病気です。

一方で、肺炎の初期症状は風邪と区別がつきにくく、「もう少し様子を見よう」と考えているうちに、気づかないまま悪化してしまうケースも少なくありません。だからこそ、肺炎について正しく知っておくことが重要です。

肺がどのような役割を担っているのか、そして肺炎が肺のどこで起こる病気なのかを理解することで、体の変化に気づきやすくなり、早めの受診や適切な対応につなげることができます。

本記事では、呼吸器科の専門医監修のもと、患者さんやご家族にも分かりやすく、肺の役割と肺炎について丁寧に解説します。

目次

肺はなぜ感染症に弱いのか

肺は、呼吸を通じて外の空気と常に接している臓器です。人は1日に約2万回呼吸をするといわれ、そのたびに空気中の細菌やウイルス、微粒子を体内に取り込んでいます。つまり肺は、病原体の侵入口になり得る場所です。

肺の末端にある肺胞は、血液とガス交換を行う重要な場所です。酸素を効率よく取り込むため、肺胞の壁は非常に薄くできています。そのため、肺胞で炎症が起こると、呼吸の機能に直接影響が出やすいという特徴があります。

本来、呼吸器にはいくつかの防御機構があります。

鼻や喉での異物の捕捉、気道の粘液と線毛運動、咳反射、肺胞マクロファージによる免疫防御などが連携し、病原体の侵入を防いでいます。

しかし、

  • 加齢
  • 喫煙
  • 嚥下機能の低下
  • 免疫機能の低下
  • 基礎疾患の存在

といった条件が重なると、これらの防御機構は弱まります。特に高齢者では、咳反射や嚥下機能が低下し、病原体が肺胞まで到達しやすくなることが分かっています。

肺は生命維持に不可欠な臓器であると同時に、常に外からの病原体にさらされる臓器でもあります。この特徴を理解しておくことが、肺炎を早く見つけ、重症化を防ぐ第一歩になります。

肺炎とはどんな病気?

肺炎とは、主に肺の末端にある袋状の組織「肺胞」を中心に起こる炎症です。

風邪や気管支炎と混同されがちですが、炎症が起きている場所が異なる点が重要です。

肺胞は、酸素を血液に取り込み、二酸化炭素を体外へ排出するガス交換の中枢です。肺炎では、この肺胞に細菌やウイルスなどが侵入し、炎症が起こります。

細菌性肺炎などでは、炎症が進むと肺胞の中に

  • 膿
  • 炎症細胞
  • 滲出液

がたまり、本来空気が入るはずのスペースが失われます。その結果、十分な酸素を取り込めなくなり、体が酸素不足の状態に陥ります。これが、肺炎で「息苦しさ」「強いだるさ」「動けない」といった全身症状が出る理由です。

ここで押さえておきたいポイントがあります。

肺炎は、単なる感染症ではありません。「呼吸そのものを支える場所」が直接ダメージを受ける病気です。だからこそ、症状が急に悪化することがあり、重症化すると命に関わります。

また肺炎には、細菌性・ウイルス性・誤嚥性などさまざまなタイプがあります。原因によって治療法は大きく異なり、正確な診断が回復を左右します。

肺炎は誰にでも起こり得る病気ですが、軽く見るべき病気ではありません。「いつもと違う」「治りが悪い」と感じた時点で、早めに医療機関を受診することが、重症化を防ぐうえで重要です。

なぜ肺に炎症が起こるのか

肺の構造と防御反応

肺には、病原体などの異物が体内に侵入しないよう、いくつものバリアが備わっています。鼻や喉で異物を捕らえ、気管支では線毛運動によって外へ押し戻す仕組みが働いています。

しかし、これらの防御をすり抜けて病原体が肺の末端にある肺胞まで到達すると、状況は一変します。

肺胞は、酸素と二酸化炭素を交換するために壁が非常に薄く、血管と密接に接しています。ここに病原体が侵入すると、肺胞に存在する免疫細胞が一斉に迎え撃ちます。

免疫細胞が病原体と戦う過程で、肺胞を取り囲む毛細血管から浸出液(炎症による液体成分)が肺胞内にしみ出してきます。すると本来、空気が入るはずの肺胞が液体で満たされ、酸素が十分に取り込めなくなります。これが、肺炎で「息苦しさ」や「酸素不足」が起こる主な理由です。

病原体の量が多かったり、病原体の力が強かったりすると、炎症はなかなか収まらず、浸出液の増加や肺胞の障害が続きます。この状態が長引くと、呼吸状態はさらに悪化し、重い肺炎へと進行します。

つまり肺炎とは、

  • 病原体が肺胞に到達し
  • 免疫が防御しようとした結果
  • 呼吸の場そのものが使いにくくなる

という仕組みで起こる病気なのです。

肺炎の種類と原因

肺炎は、「肺に炎症が起こる」という結果は同じでも、何が原因で起きたのか、どのような環境で発症したのかによって性質が大きく異なります。

肺炎を理解するうえでは、

  1. 原因となる病原体(ウイルスか細菌か)
  2. 発症した場所(市中か院内か)

この2つの視点で整理することが重要です。

① 原因となる病原体による分類

細菌性肺炎

細菌が原因で起こる肺炎で、成人の市中肺炎では肺炎球菌などの細菌が重要な原因の一つです。細菌が肺胞に侵入し、免疫反応によって強い炎症が起こります。

炎症が起こると、肺胞内に膿や浸出液がたまり、急激に呼吸が苦しくなることがあります。

  • 高熱
  • 咳・痰(黄色〜緑色の痰がみられることもある)
  • 胸の痛み
  • 全身状態の急な悪化

といった症状がみられることがあり、治療には抗菌薬が用いられます。ただし、痰の色だけで細菌性かどうかを判断することはできません。

ウイルス性肺炎

ウイルス性肺炎は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスなどが原因で起こります。特に新型コロナウイルス感染症では、ウイルスそのものによる肺胞障害に加え、過剰な炎症反応が肺炎の重症化に関与することが分かっています。ウイルスは肺胞の細胞そのものを傷つけるため、炎症が広範囲に及ぶことがあります。

  • 発熱
  • 咳
  • 息切れ
  • 全身のだるさ

などがみられます。抗菌薬はウイルスそのものには効きませんが、細菌感染の合併が疑われる場合には使用されることがあります。重症化すると酸素投与や入院治療が必要になります。

なお、細菌性・ウイルス性の傾向はあるものの、症状だけで原因を見分けることはできません。原因の判断は、診察・画像検査・各種検査を組み合わせて行います。

② 発症した場所による分類

市中肺炎

市中肺炎とは、病院の外での日常生活の中で発症した肺炎を指します(入院時に発症している場合や、入院後48時間未満に発症した場合を含みます)。原因となる病原体には一定の傾向があります。

主な原因は、

  • 肺炎球菌
  • インフルエンザウイルス

など、比較的よく知られた病原体です。

そのため、原因菌をある程度予測しやすく、初期治療の方針が立てやすいという特徴があります。ただし、高齢者や基礎疾患のある方では重症化することもあり、注意が必要です。

院内肺炎

院内肺炎とは、入院時には感染していなかったものの、入院してから48時間以上経過した後に新たに発症した肺炎を指します。すでに体力や免疫機能が低下している状態で起こることが多く、治療が難しくなりやすい肺炎です。

市中肺炎と大きく異なる点は、原因となる病原体の種類です。

院内肺炎では、

  • 薬剤耐性菌
  • 病院環境に特有の細菌

の関与を考慮する必要があり、一般的な抗菌薬が効きにくいケースもあります。

そのため、院内肺炎は

  • 重症化しやすい
  • 治療が長引きやすい

という特徴があり、慎重な管理と専門的な治療が必要になります。

市中肺炎と院内肺炎の違いが重要な理由

市中肺炎と院内肺炎では、

  • 発症の定義(48時間の区切り)
  • 原因となる病原体の種類
  • 治療の難しさ

が大きく異なります。

同じ「肺炎」でも、背景が違えば対応も変わります。この点を理解しておくことが、肺炎を正しく知るうえで非常に重要です。

肺炎が重症化しやすい人の特徴

肺炎は誰にでも起こり得る病気ですが、重症化しやすい人には共通点があります。それは「特別な体質」ではなく、肺の防御機構や全身の回復力が低下している状態です。

高齢者(65歳以上)

肺炎が重症化する大きな要因は加齢です。

年齢とともに、

  • 免疫機能の低下
  • 咳反射の低下
  • 嚥下機能の低下

が進み、病原体や異物が肺胞まで到達しやすくなります。実際、肺炎による死亡の大半は高齢者が占めており、年齢が上がるほど死亡リスクが高くなります。

嚥下機能が低下している人

食べ物や唾液が誤って気道に入りやすい状態では、誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。

  • 脳卒中の後遺症
  • 認知症
  • 寝たきり状態

がある方では、発熱や咳が目立たないまま進行することもあり、気づいたときには重症化しているケースが少なくありません。

慢性の肺疾患がある人

COPDやぜんそく(喘息)など、もともと肺に慢性的な炎症やダメージがある場合、肺炎をきっかけに一気に呼吸状態が悪化することがあります。

これらの疾患があると、

  • 肺の予備力が少ない
  • 気道や肺が炎症に敏感になっている

という状態のため、肺炎による炎症が加わることで、呼吸困難や低酸素状態が急速に進行しやすくなります。

特にぜんそくのある方では、肺炎を契機に喘息発作が誘発されることもあり、症状が重なって重症化するリスクが高くなります。

免疫機能が低下している人・持病がある人

以下のような状態では、病原体を十分に排除できず、炎症が長引きやすくなります。

  • 糖尿病
  • がん治療中
  • ステロイドや免疫抑制薬の使用
  • 慢性の心臓病・腎臓病・肝臓病

結果として、治りにくく、重症化しやすい肺炎になりやすいのが特徴です。また、喫煙も肺の防御機能を弱め、肺炎のリスクを高めます。

体力・栄養状態が低下している人

低栄養や脱水状態では、免疫反応や回復力そのものが落ちます。

  • 食事量が減っている
  • 体重が減少している
  • 水分摂取が少ない

といった状態は、肺炎の見逃せないリスクサインです。

肺炎が重症化しやすい背景には、「肺を守る力」と「回復する力」の低下があります。

特に高齢者では、「少しの異変」が「急激な悪化」につながりやすいため、早めに気づき、早めに対応することが重要です。

肺炎の症状

肺炎はどのような経過で進行するのか

肺炎は、多くの場合、次のような経過をたどって徐々に進行します。

  1. 風邪のような症状(発熱・咳・だるさ)
  2. 咳や痰が増え、熱が下がらない
  3. 息切れや呼吸の苦しさが出てくる
  4. 酸素が足りず、日常動作がつらくなる

肺胞の炎症が広がるにつれ、浸出液が増え、酸素の取り込みが徐々に障害されていくのが肺炎の特徴です。

一方で、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症に関連する肺炎、重い細菌性肺炎などでは、短期間で急速に重症化することもあります。特に高齢者では、自覚症状に乏しいまま進行することがあるため注意が必要です。

重症か軽症かは、症状だけで見分けられるのか

結論から言うと、症状だけで重症度を正確に判断することはできません。

たとえば、

  • 熱がそれほど高くない
  • 咳が強くない

場合でも、

  • 肺炎の範囲が広い
  • 酸素の取り込みが大きく低下している

ことがあります。

特に高齢者や基礎疾患のある方では、見た目よりも体の中で進行しているケースが少なくありません。

重症化のサインとして注意すべき症状

以下のような症状がみられる場合は、重症化の可能性があります。

  • 少し動くだけで息切れが強い
  • 呼吸が速い
  • 会話をするのがつらい
  • 唇や爪が紫っぽくなる
  • 意識がぼんやりする
  • 食事や水分がほとんど取れない

これらは、酸素不足や全身状態の悪化が進んでいるサインです。

すぐに救急要請・救急受診を検討すべき症状

次のような場合は、様子を見ずに救急要請(119番)または救急医療機関への相談を検討してください。

  • 呼吸が苦しく、会話が続けにくい
  • 唇や顔色が青紫色・灰色っぽい
  • 意識がもうろうとしている、反応が鈍い
  • 強い胸の痛みがある、ぐったりして動けない
  • 水分がほとんど取れない、尿が極端に少ない
  • 高齢者で急に元気がない、食べられない、普段と様子が大きく違う

パルスオキシメーターをお持ちの場合でも、数値だけで判断せず、息苦しさや意識の状態などの症状を優先してください。判断に迷う場合は、救急安心センター(#7119)などの相談窓口も利用できます(実施地域は自治体により異なります)。

なぜ早期受診が重要なのか

肺炎は、早めに評価を受け、原因に応じた治療を始めることで、重症化や合併症のリスクを下げることができます。一方で、受診が遅れると、

  • 入院が必要になる
  • 回復に時間がかかる
  • 体力の低下が長引く

といったリスクが高まります。

「様子を見るか迷う」段階こそ、受診のタイミングです。早めの診断が、重症化を防ぐ大きなポイントになります。

肺炎の診察・検査・診断

肺炎の診断は、1つの検査結果だけで決まるものではありません。実際の医療現場では、「診察 → 検査 → 総合的な診断」という流れで、段階的に判断されます。

ここでは、それぞれの役割を整理して解説します。

① 診察:まず「肺炎を疑う」段階

最初に行われるのが、問診と身体診察です。この段階の目的は、肺炎の可能性があるかどうかを見極めることです。

医師は主に次の点を確認します。

  • 発熱・咳・痰の経過
  • 呼吸が苦しくないか、息切れの有無
  • 呼吸数、酸素飽和度(SpO₂)
  • 聴診で異常な呼吸音(ラ音)があるか
  • 全身状態(食事量、意識、動けているか)

特に高齢者では、熱や咳が目立たなくても肺炎が進行していることがあります。「普段と違う様子がないか」は、診察で非常に重要なポイントです。

② 検査:何を調べる検査なのか

肺炎の検査には、目的の異なる2種類があります。

肺炎かどうかを調べる検査

これらは、肺に炎症が起きているか(=肺炎そのもの)を確認するための検査です。

  • 胸部レントゲン検査
  • 胸部CT検査(レントゲンで判断が難しい場合や、合併症・ほかの病気との区別が必要な場合など)
  • 肺エコー(肺超音波)※実施できる医療機関は限られます

これにより、

  • 肺炎の有無
  • 炎症の広がり
  • 胸水などの合併症の有無

を確認します。重症度は画像だけでなく、酸素飽和度、呼吸数、血圧、意識状態、年齢、基礎疾患、血液検査などを総合して判断します。

※この段階では、原因までは確定しません。

肺炎の原因・種類を調べる検査

こちらは、なぜ肺炎が起きたのかを推定するための検査です。

  • 血液検査(白血球数、CRPなど)
  • 痰の検査(細菌の有無・種類)
  • ウイルス検査(インフルエンザ、新型コロナなど)
  • 既往歴・生活背景の確認(誤嚥の可能性、入院中かどうか)

これらを組み合わせて、

  • 細菌性かウイルス性か
  • 市中肺炎か院内肺炎か
  • 誤嚥性肺炎の可能性

を判断し、治療方針を決めていきます。

③ 診断:すべてを合わせて判断する

肺炎の診断は、診察所見・画像検査・検査データを総合して行われます。

たとえば、

  • 症状は軽いが画像では広範囲の肺炎
  • 発熱がなくてもCTで肺炎が確認される
  • レントゲンでは不明瞭でも臨床的に肺炎と判断

といったケースも珍しくありません。そのため、「症状だけ」「検査結果だけ」で肺炎と決めることはしないという点が非常に重要です。

検査が多く行われるのは、正確に診断し、適切な治療につなげるためです。少しでも肺炎が疑われた場合は、早めに医療機関を受診し、この流れに沿った評価を受けることが、重症化を防ぐ最善策です。

肺炎の予防とセルフケア

肺炎は、治療が必要な病気であると同時に、日常の工夫によってリスクを下げられる病気です。特に高齢者や基礎疾患のある方では、日々のセルフケアの積み重ねが、重症化や再発のリスクを左右します。

口腔ケアは誤嚥性肺炎予防の要

高齢者や嚥下機能が低下している方の肺炎予防において、重要でありながら見落とされやすい対策が口腔ケアです。

口腔内には多くの細菌が存在します。歯周病や虫歯がある場合、口腔内の細菌はさらに増えやすくなります。

高齢者や嚥下機能が低下している方では、睡眠中や食事中に唾液や微量の内容物を誤って気道に吸い込むことがあります。その際、口腔内の細菌が肺に入り、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。つまり、肺炎予防としての口腔ケアの大きな目的は、口腔内を清潔に保ち、肺に入り込む細菌を減らすことです。

歯磨き、舌や口腔内の清掃、義歯(入れ歯)の清掃・管理を続けることが大切です。誤嚥のリスクがある方は、口腔ケアに加えて、嚥下機能の評価や食事姿勢の調整なども、医療・介護職と相談しましょう。

口腔ケア+ワクチンで重層的に予防する

口腔ケアに加えて、ワクチン接種も肺炎予防として有効です。

高齢者の肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重い感染症の予防に役立ちます。定期接種(B類疾病)の対象は原則65歳の方で、60〜64歳でも心臓・腎臓・呼吸器の機能に障害があり身の回りの生活が極度に制限される方や、HIVによる免疫機能の障害があり日常生活がほとんど不可能な方は対象となります。2026年4月からは、定期接種に使用するワクチンが23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)から、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更されています。実施方法や自己負担額は自治体により異なるため、詳しくはお住まいの市区町村にご確認ください。

肺炎球菌ワクチンは、すべての肺炎を防ぐものではなく、肺炎球菌が原因となる重い感染症を防ぐためのワクチンです。また、インフルエンザワクチンの接種も、肺炎予防の観点から重要です。

インフルエンザは、それ自体がウイルス性肺炎を起こすだけでなく、細菌性肺炎を合併するきっかけにもなります。毎年のインフルエンザワクチン接種は、インフルエンザとその合併症の予防に役立ちます。

日常生活のセルフケアと早期対応も重要

肺炎は、風邪や体調不良をきっかけに発症することが多い病気です。そのため、日常生活で体調を整え、感染症を防ぐことも、肺炎予防につながります。

  • 十分な睡眠
  • バランスの取れた食事
  • こまめな水分補給
  • 手洗い・換気・咳エチケット
  • 禁煙
  • そして口腔ケア

これらは特別なことではありませんが、感染症を防ぎ、体の抵抗力を保つための基本です。

また、

  • 発熱や咳が長引く
  • 体力が戻らない

といった状態は、体が弱っているサインでもあります。この段階で医療機関を受診することも、肺炎の重症化予防につながります。

体の変化に早く気づくことも予防

特に高齢者では、肺炎の初期症状が目立たないことがあります。

  • 元気がない
  • 食事量が減った
  • 息切れが増えた

こうした「いつもと違う変化」に気づき、早めに受診することが、重症化を防ぐ大切なセルフケアになります。

特別な治療ではなく、毎日のケア+予防接種+早めの対応。この積み重ねが、肺炎から命を守ることにつながります。

肺炎に関するよくあるご質問

肺炎は高齢者に多いと聞きますが、若い人も肺炎になりますか?

若い人も肺炎になります。

肺炎は高齢者に多い病気ですが、若い人でも発症します。特に、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症などをきっかけに、若年層でも肺炎を起こすことがあります。

薬の副作用で肺炎になることはありますか?

薬が原因で肺炎が起こることはあります。

大きく分けて2つのパターンがあります。1つは、薬そのものが肺に炎症を起こす「薬剤性肺炎(薬剤性肺障害)」で、これは感染症ではありません。もう1つは、ステロイドや抗がん剤、免疫抑制薬などで免疫機能が低下し、細菌やウイルスによる感染性の肺炎を起こしやすくなるケースです。

肺炎は人にうつりますか?遺伝しますか?

肺炎は、通常、遺伝する病気ではありません。

ただし、肺炎の原因となるウイルスや細菌の一部は人から人へうつることがあり、その結果、感染した人が肺炎を発症することがあります。一方、誤嚥性肺炎や薬剤性肺炎などは、通常、人から人へうつることはありません。

ほかの手術のあとに肺炎になることがあるのは本当ですか?

手術後に肺炎になることはあります。

手術後は、

  • 体力や免疫機能の低下
  • 痛みによる呼吸の浅さ
  • 長時間の安静

などが重なり、術後肺炎を起こしやすくなります。特に高齢者では注意が必要です。

肺炎と風邪は自分で区別できますか?

ご自身で区別するのは難しいです。

初期症状は似ていますが、肺炎では

  • 息切れ
  • 強いだるさ
  • 回復の遅さ

が目立つことがあります。自己判断せず、症状が続く場合は受診が大切です。

風邪から肺炎になることはありますか?

風邪をきっかけに肺炎を発症することはあります。

風邪やインフルエンザなどのウイルス感染に続いて肺炎を発症したり、弱った気道に細菌が入り込んで二次的に細菌性肺炎を合併したりすることがあります。「風邪が長引いている」と感じたら注意が必要です。

エンピリック治療(経験的治療)とは何ですか?

エンピリック治療(empiric therapy)とは、原因となる細菌が特定できる前に、想定される病原体に対して治療を開始する方法です。

肺炎では、検査結果がすぐに確定しないことが多いため、

  • 症状
  • 年齢
  • 基礎疾患
  • 市中肺炎か院内肺炎か

などをもとに、最も可能性の高い原因菌を想定して抗菌薬を開始します。これがエンピリック治療です。

その後、

  • 痰の検査結果
  • 症状の改善具合

を見ながら、抗菌薬を変更・調整(デエスカレーションなど)していきます。エンピリック治療は、治療を急ぐ必要がある肺炎において、世界的にも標準的な考え方であり、「当てずっぽう」ではなく、医学的根拠に基づいた合理的な治療戦略です。

エンピリック治療とは、「分かってから治す」のではなく、「悪化する前に、最も可能性の高い原因を想定して先に治す」ための治療です。

肺炎の治療後も、しばらく注意が必要ですか?

治療後もしばらくは注意が必要です。

肺炎は症状が改善しても、肺の炎症が落ち着き、画像所見や体力が回復するまでには数週間〜1か月以上かかることがあります。高齢者や基礎疾患のある方では、さらに時間がかかることもあります。

この期間に無理をすると、

  • 再燃
  • 回復の遅れ
  • 体力低下の長期化

につながることがあります。治療後もしばらくは、無理をせず、体調の変化に注意することが大切です。

肺炎の治療後、日常生活で気をつけることはありますか?

回復期には次の点を意識してください。

  • 急に普段どおりの生活に戻さない
  • 十分な休養と睡眠をとる
  • 食事・水分をしっかり摂る
  • 咳や息切れが続く場合は再受診する

特に高齢者では、「治ったあと」が一番疲れやすい時期です。回復を焦らず、体力が戻るまで慎重に過ごすことが、再発防止につながります。

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こちらの記事の監修医師

星 史彦

仙台駅前ほし呼吸器クリニック星 史彦 先生

仙台市出身。東北大学医学部を卒業後、八戸市立市民病院で外科研修を行い、東北大学呼吸器外科に入局しました。大学院で肺がん関連遺伝子を研究し、医学博士を取得しています。その後、石巻赤十字病院、青森県立中央病院、東北大学病院、仙台医療センターで、肺がんを中心とした呼吸器疾患の診療に携わってきました。 20年以上にわたり胸部レントゲン検診の読影を担当し、読影数は数十万枚に及びます。気管支鏡検査、胸腔鏡手術・ロボット支援手術、薬物療法まで、肺がんの「発見・診断・治療」に一貫して関わってきました。地域の皆さまに「身近でありながら、専門性の高い呼吸器診療」を提供することを目指しています。

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