最終更新日:2023.08.30

水俣病とは?原因とそのほかの公害病を解説

水俣病とは?原因とそのほかの公害病を解説

水俣病は、メチル水銀が原因となる中毒性の神経疾患です。熊本県水俣湾周辺を中心とする八代海沿岸で発生したことから「水俣病」と名付けられました。

かつて水俣病は、原因不明の神経疾患にあたるとされていました。しかし、昭和31年(19565月、水俣湾周辺で水俣病患者の発生が判明し、同年末には52人もの患者が確認された事件が起こりました。こうした出来事を経て、翌年からは「水俣病」という病名で呼ばれるようになったのです。

それから60年以上経ちましたが、現在も水俣病で苦しんでいる患者さんがいらっしゃいます。水俣病は決して、過去の公害病ではないのです。

本記事では、脳神経内科の医師に監修していただき、水俣病の原因とそのほかの公害病を解説していただきます。

水俣病は四大公害病の1つ

人体にとって有害な物質が海や河川に排出されると、魚やエビ、カニ、貝などがエラや消化管から有害物質を吸収します。すると食物連鎖によって、魚介類の体内に高濃度の有害物質が蓄積することになります。

水俣病は、このような汚染された魚介類を人が日常的に摂取し、結果的に有害物質を体内に取り込んでしまったことによって起こった病気です。

当時、水俣病の原因となったのは、中毒性化学工場から排出されたメチル水銀化合物という有害物質でした。症状は摂取したメチル水銀の量や期間などによって異なりますが、昭和2040年代は特に汚染がひどい時期であったといわれています。

この時期に八代海(別名、不知火海:しらぬいかい)で捕れた魚介類を日常的に食べていた方は、症状が出やすい傾向にあると考えられています。(水俣病の具体的な症状は下記で解説いたします。)

水俣病は公害病にあたるため、発症した場合は公害健康被害の補償等に関する法律に基づいた上で、関係各県の知事及び国から患者として認定されます。

 

四代公害病とは

戦後の重化学工業化が急激に進んだ高度成長期。この時期に、日本では大きな公害病が4つ発生しました。

熊本県水俣市で起こった水俣病を含む4つの公害病は「四大公害病」とよばれています。各地で産業公害が多発し、大きな社会問題となったのです。

 

水俣病の原因と症状

水俣病の原因は、有害物質であるメチル水銀です。このメチル水銀が工場から流れ出て、海に住む魚たちを汚染したことが大きくかかわっています。

海の中で暮らす魚は、エラなどから直接メチル水銀を取り込むため、成分が濃縮されます。そうしてメチル水銀が蓄積された魚を、別の魚が食べる食物連鎖によって、今度はその別の魚にメチル水銀が蓄積されます。

このように汚染された魚を、最終的に人が食べ、メチル水銀が人体に取り込まれます。こうした流れを「生物濃縮」と呼びます。

水銀は無害な「無機水銀」と有害な「有機水銀」があり、メチル水銀は有機水銀に属します。非常に強い毒を持ち、ごく少量でも人体に悪影響を与える恐ろしい物質です。

食べ物を通じてメチル水銀を摂取すると、胃腸から吸収された後に血液に運ばれ、全身の臓器に届けられます。脳には「血液脳関門」という毒性物質などに対する障壁がありますが、メチル水銀はこれをもくぐり抜けて脳に蓄積されてしまい、やがて脳の障害や神経症状を招きます。

特定の神経症状のみが起こるだけでなく、数種類の症状が併発することもあります。軽度の場合は、こむら返りや手足のしびれが現れ、さらに症状が進むと歩行時のふらつきやつまずきが起こるようになります。

重症化すると、言葉が出てこなくなって会話に支障が出たり、嗅覚や味覚が衰えたり、ものが見えにくくなったりします。疲れやすい、気分が落ち込むといった状態になることも多いです。

高濃度のメチル水銀を一気に取り込んだ場合は、脳の神経細胞が短期間で大量に消失するので、すぐに重篤な症状が表れます。しかし、水俣病のように低濃度のメチル水銀を中長期的に継続して取り込んだ場合は、神経細胞の消失が進むことから、症状の進行がゆるやかです。

 

そのほかの公害病

新潟水俣病

新潟県阿賀野川流域で発生した、水俣病と同じ症状の病気です。

昭和40年(19655月に初めて患者が確認された後、同年7月には患者数が26人となり、うち5名の死亡が報告されました。

 

イタイイタイ病

イタイイタイ病は富山県にある神通川(じんつうがわ)流域で、第二次世界大戦当時に発生しました。 経産婦が発症することが多い病気で、手足の骨がもろくなってしまうことから、その名の通り激しい痛みを感じます。

原因は未処理の鉱山廃液にふくまれていたカドミウムでした。裁判の結果、鉱山廃液を垂れ流していた会社に賠償命令が出て、排水と川の水質検査を毎年行うことが義務づけられました。

 

四日市ぜんそく

三重県四日市市を中心に、1960年頃から発生した公害病です。

気管支炎(きかんしえん)やぜんそく、肝障害(かんしょうがい)に苦しむ患者さんが多く、中には亡くなってしまったケースもあります。

原因は、石油化学工場から出る煤煙(ばいえん)中に含まれていた亜硫酸ガスによる空気汚染でした。川崎市や尼崎市など他の地域の工業地帯でも、同じような症状に悩まされた人がいました。

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こちらの記事の監修医師

黒田 清司

くろだ脳神経・頭痛クリニック黒田 清司 先生

岩手県盛岡市「くろだ脳神経・頭痛クリニック」、院長の黒田 清司 です。

当院には、頭痛や認知症、めまいでお悩みの方がたくさん来院されますが、これらの症状はどれも予防することが大切です。
そのためには、ご自身の身体の状態を意識して、生活習慣の改善を目指すことはもちろん、定期的な検査や通院で病気の早期発見を心がけることが重要になってきます。

気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。

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