最終更新日:2023.09.12

EDとは?勃起不全の原因と治し方、ED治療薬を解説

EDとは?勃起不全の原因と治し方、ED治療薬を解説

ED(イー・ディー)は、「Erectile Dysfunction」の略称で「勃起機能の低下」を意味します。

ED(勃起不全)は痛くなる症状があるわけでもなく、命を落とすような重篤な病気でもありません。しかし、EDによる自信喪失や心理的なストレスを抱える男性はとても多く、日常生活のさまざまな場面で影響を及ぼしてしまうこともあります。

EDの治療は機能的な問題を解決するだけではなく、症状がなかったときのような自然体をとり戻す意味でも、身体と心の双方からのアプローチが重要です。

本記事では、心療内科の医師に監修していただき、ED(勃起不全)の原因と治し方、ED治療薬を解説しています。

 

ED(勃起不全)とは?

EDとは、医学的に「勃起不全症」とよばれる男性性機能障害の1つです。

「満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られないか、または維持できない状態が持続または再発すること」と定義されています。

つまり、

  • 性交時に十分な勃起が得られない
  • 十分な勃起が維持できない
  • たまに勃起しないことがある
  • 勃起できるか不安になる

など

満足な性交が行えない状態の中で、上記のいずれの状況に該当しても、ED(勃起不全)と診断されます。

現代の日本では、40代男性の約20%、50代男性の約40%、60代男性の約60%に、中等症以上のEDが認められています。

勃起を促す体内物質の仕組み

男性の陰茎には海綿体という「スポンジ状の勃起性組織」が存在します。細い血管が集まっており、海綿体はほぼ血液で占められています。

勃起は脳から陰茎への神経を通じて命令・信号が送られ、この海綿体という組織に血流が流入・増量することで起こります。血液で十分に充満されることで、陰茎が硬くなりそれを維持することができるのです。

その過程で重要となる物質が「サイクリックGMP(グアノシン一リン酸)」です。この成分は、自然に体内で生成される血管拡張剤の役割を担い、その濃度が細胞内で上昇することで、陰茎の平滑筋はリラックスします。

性的な刺激があると一酸化窒素が放出され、その結果サイクリックGMPの量が増えます。ただし、陰茎の海綿体には「PDE(ホスホジエステラーゼ)5」という、物質(サイクリックGMP)を分解する酵素も多く含まれおり、その間でバランスが取られています。

勃起が射精後や性的な興奮が減少した後に解消するのは、PDE5の作用によるものです。PDE5がサイクリックGMPを分解し、それによって血管と平滑筋が収縮し、勃起は収束します。

このように、正常な勃起には神経と血管の働きが必要不可欠です。そして、さまざまな物質が正しく放出されることが重要であるという点で、勃起はとても複雑なメカニズムの上で成り立っていることがわかります。

ED(勃起不全)は何らかの原因で、その神経伝達や血液流入の阻害が起こっている状態です。

医療機関では、この機能障害となっている要因を明らかにし、機能改善とメンタル的なサポートを行います。そして、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることが最終的なゴールとなります。

ED(勃起不全)の原因別タイプ

EDは、その原因別に大きく4つのタイプに分類されます。

  • 心因性ED
  • 器質性ED
  • 混合性ED
  • 薬剤性ED

それぞれの原因と特徴を解説します。

精神的ストレスによる心因性ED

精神的・心理的な要因が重なり、勃起機能の低下がみられます。20代の患者さんをはじめ、比較的、若い方に多くみられるEDです。

身体的障害・加齢による器質性ED

血流や神経など、身体的な何かしらの異常や障害によって、機能障害が起こっている状態です。

複数の要因による混合性ED

心因性EDと器質性ED、両方の影響を受けているケースです。比較的、ご高齢の方に多いEDです。

薬剤の副作用による薬剤性ED

他の疾患の治療によって何らかのお薬を服用されている場合、その薬の副作用によって勃起不全が起こっている可能性があります。

20代に多い心因性EDの発症要因

20代・30代・40代の働き盛りの若い世代に多い心因性EDは、

  • 仕事でストレスを感じることが多い
  • 過去の性交でトラウマ(失敗経験)がある
  • 妊娠のために性交を行うことがプレッシャーになっている

など

日々の生活の中で何らかの心理的ストレスを感じ続けてしまうことによって、性的な刺激があっても勃起できないという場合があります。

心因性EDを根本的に解決するには、その精神的・心理的な要因を取り除くことがとても重要です。必要に応じてED治療薬を服用することで少しずつ自信を取り戻しながら、心理的ストレスを和らげていくことが大切です。

50代以降に多い器質性ED・混合性EDの発症要因

加齢に伴って、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下すると、勃起不全を誘発することがあります。

年齢を重ねるにつれて血管の弾力性が失われ、血管が十分に拡張できなくなる場合があります。また、加齢によって糖尿病や高血圧などの発症リスクが高まる年代であることから、このような生活習慣病を患っている方はとくに、血管に対してストレスがかかり、血流の問題によってEDを誘発している可能性も検討されます。

一方で、脳卒中やてんかん、パーキンソン病など、神経に障害ができる病気によって器質性EDになる方もいらっしゃいます。性的刺激を受ける神経や、勃起の指令を伝える神経が機能低下を起こしている状態です。過去の事故や手術によって発症する方も少なくありません。

加齢等による身体的な理由で勃起しづらくなっている状態(器質性ED)に対して、ストレスやプレッシャーを感じ、新たに心理的・精神的な要因(心因性ED)を作り出してしまうことがあります。このように、心因性EDと器質性EDが混在した状態を混合性EDといいます。

また喫煙やお酒の飲みすぎも、身体的・心理的ストレスの増大につながるため注意が必要です。

薬剤性ED発症のリスク要因となる薬

抗うつ薬や降圧剤などの薬剤が、EDを誘発している可能性も考えられます。

その要因として考えられる薬剤としては、

中枢神経や末梢神経に作用する薬剤

  • 解熱 消炎鎮痛剤
  • 抗うつ薬
  • 抗けいれん薬
  • 抗精神病薬(メジャー・トランキライザー)
  • 催眠鎮静薬などの向精神薬

末梢神経に作用する薬剤

  • 鎮けい薬
  • 抗コリン薬

循環器系に作用する薬剤

  • 不整脈治療薬
  • 利尿剤
  • 降圧剤
  • 血管拡張剤
  • 脂質異常症治療剤

消化管に作用する薬剤

  • 消化性潰瘍治療薬
  • 抗コリン薬
  • 鎮けい薬

などがあげられます。

ご自身の薬が影響を受けているかどうか気になる方は、主治医の先生に事前にご相談ください。

ED(勃起不全)の治し方

EDの治療は主に治療薬によって症状改善を図りますが、EDのタイプに応じて、適切な治療法を選択していきます。

単にお薬を服用するだけでなく、持病の治療を行ったり、根本的な生活習慣を見直しを図ったりすることも非常に重要です。

ED治療薬は、勃起の機能低下を防ぐために服用するお薬です。正確には「PDE5 阻害薬」といいます。

脳から陰茎への神経を通じて命令・信号が送られ、海綿体に入る血液の量を増やすことで陰茎が硬くなります。このときに血管拡張を促す物質(サイクリックGMP)が働いてくれるのですが、PDE5はこれらの物質を壊してしまう作用があります。

つまりPDE5が活発になりすぎると、勃起機能を阻害する要因になります。

PDE5阻害薬を服用することでPDE5を抑制し、筋肉が弛緩して血流を促すことで、勃起のメカニズムを正常化させることができます。

日本で認可されているED治療薬

  • シルデナフィルク(バイアグラの後発品)
  • バルデナフィル(レビトラの後発品)
  • タダラフィル(シアリスの後発品)

の3種類が、治療の選択肢として検討されます。

いずれも高い効果が認められており、副作用による重篤な症例は今のところ報告されていません。

ED治療薬の副作用やリスク

どのような治療法や治療薬であっても、副作用が起こるリスクはゼロとは言い切れません。EDの治療も同様に、治療薬によって起こりうる副作用を想定して治療を進める必要があります。

EDの治療薬には、わずかではありますが、下記のような副作用がみられる場合があります。

  • 血管拡張作用に伴う頭痛、ほてり
  • 消化不良や腹痛症状
  • 充血、動悸、頻脈の症状
  • 肝機能障害
  • アレルギー症状(薬疹を含む)

治療薬服用後、1つでも上記の副作用がみられた場合は必ず内服を中止し、すぐに医療機関を受診してください。

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こちらの記事の監修医師

佐竹 学

からだとこころのクリニックラポール佐竹 学 先生

宮城県仙台市の心療内科、からだとこころのクリニックラポールでは、身体疾患にも精神疾患にも対応しています。そのため、症状や原因別にそれぞれ違う病院に通って頂く必要はありません。

場合によっては、專門治療を行っている大学病院などにご紹介させて頂くこともございますが、まずは当クリニックにお越し頂ければ、適切な検査と診断を行い、患者さまにとって最も良いと思われる治療方針をご提案させて頂きます。

身体の症状にせよ、心の問題にせよ、患者さまがお持ちのお悩みは全て真正面から受け止めるようにしています。
職場や家庭についての不満、転職や転勤など環境変化による不安など、何でもお気軽にお話しください。

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