最終更新日:2023.09.29

脳梗塞とは?前兆となる初期症状と原因、生存率を解説

脳梗塞とは?前兆となる初期症状と原因、生存率を解説

脳はあらゆる私たちの体の身体機能や言語機能を司どるとても重要な臓器です。その脳の血管が障害を受けてしまうことで起こる病気の総称を脳卒中(のうそっちゅう)といいます。

脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞(のうこうそく)と、血管が破れる脳出血・くも膜下出血といった病態があります。脳に障害が起こってしまうと、それらの機能に支障をきたすだけでなく、最悪の場合には死に至ることもあります。中でも今回紹介する脳梗塞は、死亡率が高いとされる病態です。

本記事では、脳卒中の診療を行う医師に監修していただき、脳梗塞の前兆となる初期症状と原因、生存率を解説しています。

脳梗塞(のうこうそく)とは

脳梗塞は脳内の血管が詰まることによって血液が滞ってしまい、脳細胞が壊死してしまう病気です。

高齢化社会の昨今、高齢者を中心に発症する方が増えている疾患の一つです。健康寿命を延ばして元気な老後を送るためには、脳梗塞にならないように注意すること、発症を未然に防ぐことがとても重要です。

脳梗塞を放っておくとどうなる?

脳梗塞は、脳の動脈が閉塞し、血液が流れなくなることで脳が壊死する病気です。症状としては、片方の手足の麻痺やしびれ、言葉が出てこない、視野が欠ける、めまい、意識障害などがあり、多くの方が後遺症を残すことがあります。脳卒中の原因疾患で最も多いため、高齢者の介護負担を社会全体で支援する介護保険制度において、要介護認定を受けた方の20%以上が後遺症に苦しんでいます。脳卒中は国内死因の第4位であり、他の臓器の疾患よりも日常生活に支障をきたしやすく、介護の必要性が高いことが特徴です。

脳梗塞による危険な3つの症状

下記の3つの症状は、脳梗塞の可能性が高い大変危険な状態と考えられています。

  1. 体の片側だけ、うまく動かない
  2. 思うように言葉が出ない(ろれつが回らない、話せない)
  3. 見え方がおかしい(視野の半分がかける)

どれか1つでも症状が現れたら脳梗塞の可能性が疑われます。

体の片側がうまく動かない

とくに現れやすいのが、「顔のマヒ」と「腕・脚のマヒ」です。

脳梗塞による顔のマヒは、顔の左右一方がゆがんだり、下がったりするのが特徴です。「イー」と発音しながら笑顔を作ってみると、これらの症状がわかりやすくなります。

顔のマヒは本人が見落としてしまいがちな異変の1つです。いつも顔を合わせている家族などが見れば、普段と顔の様子が違って見えるため、早期発見につながることが多いです。

腕・脚にも、どちらか一方に力が入らなくなるマヒ症状がみられます。手のひらを上に向けた状態で、両腕を前に伸ばそうとしたとき、一方の腕が上がらない、あるいは一旦上がっても維持できずに徐々に下がってくるという場合は腕のマヒが疑われます。また、自覚症状として「しびれ」を感じることも少なくありません。

脚にマヒが起こると、症状のある片側の脚に力が入らなくなるため、体が傾いてうまく歩くことができないという状態になります。

うまく話せない(ろれつが回らない)

何か言おうとしても、言葉がなかなか出て来なかったり、ろれつが回らなくて言葉が不明瞭になってしまう症状が起こります。

症状を確認する際は、「私の名前は●●です。」など、短い文章を繰り返し発音することを試みてみましょう。スムーズに言葉が出なかったり、途中の言葉や語尾が抜けたりした場合は注意が必要です。

また、失語症とよばれる症状がみられることもあります。たとえば、普段から手にしているテレビのリモコンなどを指差して「これは何ですか?」と質問されたときに、「リモコン」と正しく答えられないことがあります。このように、思うように言葉が出てこない、言っていることが理解できないないという場合は要注意です。

見え方がおかしい

ものが二重に見える複視(ふくし)という症状が突然起こることがあります。またそのほかにも、両目で見たときや左右どちらかの目だけで見ても、同じ側の視野の半分が欠けてしまうという現象も起こります。

視野の病気と勘違いして、まず眼科を受診してしまう方が多いですが、これらの見え方の異常は脳梗塞の症状の1つなので注意が必要です。

脳梗塞が起きた際にとるべき行動 – 迷わず救急車を

疑わしい症状がみられたら、迷わず救急車を呼び、早急に対処することが必要です。

夜間に異変を感じた際「寝て休めば治るのでは?」と自己判断して、朝まで様子を見てしまうケースも少なくありません。

  • 脳梗塞の症状かどうか自信がない
  • 症状の程度が軽い
  • 少し休んだらすぐに治った、症状が落ち着いた

など、このような理由から受診をためらう方が多くいらっしゃいます。

しかし、脳梗塞はその前兆・初期症状を見過ごされてしまいやすい病気であることを念頭に起き、ためらうことなく直ちに救急車を呼んでください。たとえ、それが脳梗塞でなかった場合でも問題ありません。「手遅れになってしまうよりは良い」と考えましょう。

脳梗塞の前兆となる初期症状

脳梗塞は、どこの血管が詰まったのか、どの程度詰まっているのか、詰まりの大きさはどのくらいなのか、どんなスピードで詰まったのかによって症状が異なります。 また、突然発症することがあれば、発症前に前兆の発作が起こることもあります。前兆の発作は数分から数十分でおさまることがほとんどですが、放置せずにすぐに受診することが、その後脳梗塞が発症するリスクを大きく抑えることにつながります。脳梗塞の症状は、血管が詰まった部位や大きさ、程度などによって変わります。部位別の主な症状は以下の通りです。 ・内頸動脈 半身の運動障害・感覚障害、顔面神経マヒ、言語障害、脱力、失語、片目の一時的な視力低下 ・中大脳動脈 半身の運動障害・感覚障害、意識障害、失語、失読、失書、失認、失行、同名半盲(両目の同じ側が見えなくなる症状) ・前大脳動脈 半身の運動障害(特に足)、半身の感覚低下、意識障害、記憶障害、けいれん、尿失禁 ・後大脳動脈 半盲、失認、半身の感覚性マヒ、吐き気、めまい ・椎骨動脈脳底動脈 強いめまい、吐き気、意識障害、複視、顔面神経マヒ、感覚障害、構音障害、嚥下障害、両側手足の運動障害、呼吸停止

脳梗塞の前兆となる初期症状

脳梗塞は突然発症するというイメージがありますが、実は脳梗塞になった人の約3割が、前兆といえる発作(TIA/一過性脳虚血発作)を経験しています。 TIAには「急に手の力が抜ける」「片方の足がしびれたり、感覚が鈍くなったりする」「めまいがしてまっすぐ歩けなくなる」「立ち上がれない、歩けない」「ろれつが回らない」「人の話が理解できない」「文字がうまく書けない」「物が二重に見える」「片目の視力が突然落ちる」といった症状があり、ほとんどの場合は長くても数十分でおさまります。 しかし、おさまったからといって放置せず、すぐに受診して治療を受けることが、本格的な脳梗塞の発症を抑えることにつながります。

脳梗塞は何科に相談する?

神経内科や脳神経外科など脳卒中の専門医

脳梗塞の原因と種類

脳梗塞はその発症原因から、

  • ラクナ梗塞
  • アテローム血栓性脳梗塞
  • 心原性脳塞栓症(心原性脳梗塞)

の3つに分けられます。それぞれの原因と特徴を解説します。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞は、脳の太い血管から枝分かれした細い血管(穿通枝動脈:せんつうしどうみゃく)で詰まる、ごく小さな脳梗塞です。そのため、症状が現れないことも少なくありません。

また症状があった場合でも、軽いしびれや運動障害、言語障害などの一時的なものが多いため、気づかないことも多いです。放置すると、次で紹介する、アテローム血栓性脳梗塞や、心原性脳梗塞(脳塞栓症)が起こることもあります。

穿通枝動脈は細いため、高血圧によって圧力がかかり続けると、内壁が厚く固くなります(動脈硬化)。 動脈硬化が進むと、血管の内側がどんどん狭まり、次第に塞がってしまうのです。

日本では、かつて高血圧症の方が多かったこともあり、高血圧などが原因で発症する「ラクナ梗塞」が脳梗塞の半分近くを占めていました。

アテローム血栓性梗塞

血液中の余分なコレステロールなどの脂質が血管の内膜に付着してできたコブのようなものを、アテロームといいます。 そのアテロームが脳の太い血管(動脈)の壁にたまり、何らかの原因で破裂した際、それを修復するために血小板が集まって血栓を作ることがかかわっています。この血栓が詰まって脳梗塞が起こります。

また、頸動脈にできたアテロームが破裂したことで生まれた血栓が流れ出し、末梢血管をふさいでしまったために発症する場合もあります。

心原性脳塞栓症

心臓にできた血栓が流れてきて、脳の血管に詰まる脳梗塞です。 心房細動という不整脈が原因で発症します。心房細動が起こると、規則正しく動いていた心臓の電気信号が不規則になり、心臓の収縮がうまくいかなくなります。 すると、心房内の血流が停滞して血液がよどんで育った血栓があるときはがれ、血流に乗って脳まで運ばれて詰まります。

比較的大きな血栓のことが多いため、脳の根本の太い血管が詰まることで、影響範囲が大きく、重症化しやすい脳梗塞です。急激に症状が起こりやすいのが特徴です。

脳梗塞の検査診断

脳梗塞を発症した場合、適切な治療をすみやかに進めていく必要があるため、検査もできるだけ早く、なおかつ正確に行うことが重要となります。 まずは体温、脈拍、呼吸数、血圧といったバイタルサインや、意識レベルを確認し、意識がない場合は救急措置として気道の確保や血圧コントロール、鎮静・鎮痛、口腔内の吸引、酸素吸入などを行います。 その上で、本当に脳梗塞なのか、その場合はどの程度のダメージを受けているのかを鑑別するためにCT検査やMRI検査を行います。 意識がある場合は本人に、意識がはっきりしない場合は付き添いの人に、発作が起こった際の状況を確認します。 発症からどの程度時間が経っているのかによって治療内容が変わるため、発作の発生時刻を正確に伝えることが求められます。 さらに、症状や持病、服用している薬の有無、喫煙や飲酒の習慣の有無などを確認し、血液検査、尿検査、心電図検査、X線検査、心臓超音波検査などを行いつつ、診断を進めていきます。 一般内科的診察として、視診や聴診、触診を行い、全身の状態を調べることも大切です。 視診では、皮膚や粘膜、爪を観察し、貧血や黄疸がないか診ていきます。聴診では、心臓の拍動と肺の呼吸音を調べますが、特に重要となるのが頸部の聴診です。頚動脈硬化が進んでいる場合、血液の流れる音に雑音が入ります。 さらに、触診で頭部や頸部の脈拍や、両手足の脈拍の差などを調べることにより、血流状態を診ていきます。眼底の血圧や動脈の状態をもとに、脳の血管の状態を推測する眼底検査が行われることもあります。 神経学的診察も、治療方針を決める上で重要です。まずは意識状態を確認し、意識がある場合は歩く、片足で立つ、会話するなどの様子をもとに運動機能、感覚機能、言語機能を調べます。意識障害が出ている場合は、呼びかける、体をつねって痛みを与える、何らかの音を聞かせるなどに対する反応をみて、重症度を診断します。

脳梗塞の治療

脳梗塞の治療は、急性期と慢性期によって変わります。急性期は発症から1〜2週間以内の症状が不安定な時期ですが、その中でも発症から6〜8時間以内は超急性期と呼ばれ、このタイミングでいかに早く血流を再開させられるかどうかが治療のポイントとなります。慢性期は発症から1ヶ月以降を指します。 超急性期のうち、発症から4時間半以内の場合はt-PAという血栓溶解薬の点滴治療が有効です。これにより、30〜40%の人がほとんど後遺症のない状態まで回復できるといわれています。 ただし、受診した医療機関に画像検査で必要な機器がそろっていることや、治療経験豊富な専門医がいることなどが前提条件であり、なおかつ重度の高血圧や糖尿病などの持病がある場合はt-PAによる治療を受けられません。そのため、発症から4時間半以内にt-PAによる治療が受けられる例はさほど多くないのが実状です。 発症後8時間以内の場合に行われるのが、血栓回収療法です。内頚動脈や中大脳動脈などに詰まった大きな血栓を除去することができ、治療後の血管の再開通率は8割近くといわれています。 急性期の治療では、新たな血栓ができないようにしたり、脳のむくみをとったり、血流をよくしたりするための薬物療法がメインです。慢性期も引き続き薬物療法が行われますが、再発防止を目的とした薬に切り替わります。

脳梗塞の生存率・余命

 

脳梗塞の予防と対策

 

脳梗塞に関するよくあるご質問

脳梗塞が起こりやすいのはどんなときですか?

脳梗塞は、血圧の変動や脱水があると起こりやすくなります。そのため、脱水になりやすく血圧が下がりやすい睡眠中や起床時、活動開始時に多く発症するといわれています。「アテローム血栓性脳梗塞」「ラクナ梗塞」は睡眠中に起こりやすく、「心原性脳塞栓症」は起床後2時間以内に起こりやすい傾向があります。 また、場所としては発汗することで水分が失われやすい浴室、睡眠によって水分が失われやすい寝室、寒い時期の気温差が激しい脱衣所や玄関が要注意です。加えて、暑さから脱水を招きやすい夏(6月から8月)にかけて起こりやすいともいわれています。 とはいえ、脳梗塞が発症するリスクは季節や場所問わず存在しています。予防のためには、日頃から水分をこまめにとるようにし、脳梗塞を引き起こす危険因子となる高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療を欠かさないことなどが大切です。

 

脳梗塞の再発率は?

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脳梗塞の発症は何歳が多い?

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脳梗塞の復帰率は?

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脳梗塞はどれくらいで治る?

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脳梗塞の危険な状態は?

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脳梗塞に良い食べ物は何?

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脳梗塞 入院 どれくらい?

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こちらの記事の監修医師

金 正門

まさと脳神経内科クリニック金 正門 先生

岩手県盛岡市「まさと脳神経内科クリニック」、院長の金 正門(きん まさと)と申します。当院は、令和元年5月に盛岡市向中野にて開業しました。

私は盛岡市出身であり、盛岡市立大新小学校、盛岡市立城西中学校、岩手県立盛岡第一高校、岩手医科大学と、学生生活全てを盛岡で過ごしました。医師になってからも岩手医科大学神経内科学講座(現:内科学講座 脳神経内科・老年科分野)に入局し、平成8年4月から平成31年3月までの23年間盛岡で大学の最先端医療に携わってきました。

今回、その盛岡にて開業出来たことは私にとって大変な喜びであります。元号が平成から令和に改まるタイミングで、大学診療から地域診療へとそのフィールドが変わるのも何かの縁かと思っております。

信頼していただける医師として最も重要なのは、確実な診断と治療であることは言うまでもありませんが、患者さんが何でも気軽に相談できる医師であることも大切なことであると考えます。

患者さんと同じ目線で物事を捉える事が出来る様に、真摯な姿勢で皆様の健康維持の為に頑張っていきたいと思います。患者さんに信頼されるクリニック、安心と笑顔を届けることができるクリニックを目標に、スタッフ一同努力していく所存であります。

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