最終更新日:2026.02.09 | 投稿日:2026.02.06

白内障とは?症状(見え方)と原因、白内障手術について解説

白内障とは?症状(見え方)と原因、白内障手術について解説

白内障は高齢者の視力低下の最大の原因となる病気です。初期の変化を含めると、80歳以上ではほぼ全員に何らかの濁りがみられ、最も多い眼疾患となっています。

白内障は視力低下を起こす病気の一つですが、高齢者の場合は老眼と自己判断して放置されるケースも少なくありません。最悪の場合、重症化して日常生活に大きな支障をきたす可能性があるため、早期の眼科受診と治療が推奨されます。

圧倒的に高齢者に多い一方、さまざまな種類があり、中には年齢問わず発症するタイプもあります。

本記事は、白内障の診察・治療をしている医師に監修いただき、初期症状・原因、外科的治療(白内障手術)について解説しています。

目次

白内障とは

白内障とは、目の中にあるレンズ(水晶体)が白く濁り、光が通りにくくなる病気です。水晶体が濁ることで網膜に十分な光が届かなくなり、視界がかすんだり、まぶしく感じたりといった見え方の変化が生じます。

白く変化するのは、眼球の中にある水晶体です。水晶体は、直径約9mm、厚さ約4mmの凸型レンズの形をした透明な組織で、主にたんぱく質からできていますが、約65%は水分で構成されています。一番の特徴は、柔軟性をもった「生きたレンズ」であることです。

私たちは生活の中で、遠くの景色から手元の文字まで、さまざまな距離の物を見る必要があります。異なる距離の物にピントを合わせるためには、目に入ってきた光の屈折を調節し、網膜の上に正確な像を結ぶことが必要です。

水晶体は柔軟性があるため、毛様体が伸び縮みすることで厚みを変え、ピントの調節を行っています。この仕組みによって、私たちは無意識のうちに遠くも近くも見ることができます。

しかし、水晶体は一生使い続ける組織であるため、加齢や紫外線などの影響によって内部のたんぱく質が変性し、濁りが生じることがあります。この水晶体の濁りが進行した状態が、白内障です。

白内障は高齢になるほど発症しやすいため「老化現象」と思われがちですが、放置すると見え方は確実に悪化します。点眼治療によって進行を遅らせることは可能でも、一度濁った水晶体を元に戻す治療法はなく、根本的な治療は手術のみです。

一方で、白内障は手術によって視力改善が期待できる病気でもあります。「最近、見え方が変わってきた」「メガネが合わなくなった」と感じたら、早めに眼科を受診し、現在の状態を確認することが大切です。

白内障の見え方

白内障の特徴は、単に視力が低下するというよりも、見え方の質そのものが変化する点にあります。代表的な見え方の変化には、次のようなものがあります。

  • 視界が霧や霞がかかったようにぼやける
  • 光がにじんで見え、まぶしく感じる(夜間、逆光、対向車のライトなど)
  • 物が二重、三重に見える
  • 色の鮮やかさが失われ、白が黄ばんで見える
  • メガネを替えても、以前のようにスッキリ見えない

特に、夜の運転が不安になる、明るい場所でかえって見えにくいといった変化は、白内障でよくみられる初期サインです。

白内障の症状について詳しくはこちらへ

白内障の症状

老眼と白内障の違い

老眼と白内障は、どちらも見えにくさを感じるため混同されがちですが、原因も対処法も異なります。

老眼は、加齢によって水晶体の柔軟性が低下し、近くにピントを合わせにくくなる状態です。主に手元の文字が見えづらくなり、老眼鏡を使うことで改善します。

一方、白内障は、水晶体そのものが濁ることで、遠くも近くも全体的に見えにくくなる病気です。まぶしさやかすみ、色のくすみなどが現れ、メガネを替えても十分に改善しないのが特徴です。

また、老眼は生理的な変化ですが、白内障は進行性の病気です。見えにくさが「近くだけ」なのか、「全体的に変わってきている」のかが、両者を見分ける一つの目安になります。

白内障の種類

白内障は、水晶体のどの部分に濁りが生じているか、また症状の進行度合いによって分類されます。これらの分類は、症状の出方や治療判断の参考になります。

にごりが生じる部位による種類

皮質白内障
水晶体の周辺部分(皮質)から濁りが生じるタイプです。進行すると、まぶしさや光のにじみを感じやすくなります。

核白内障
水晶体の中心部分(核)が徐々に濁るタイプです。視力低下がゆっくり進行し、色の見え方が変化することがあります。

後のう下白内障
水晶体の後方にある後のう下が濁るタイプです。初期から視力低下やまぶしさが出やすく、比較的早い段階で生活への影響が出ることがあります。

症状の進行による種類

初発白内障
ごく軽度の濁りが始まった状態で、自覚症状がほとんどないこともあります。

未熟白内障
濁りが進行し、見えにくさやまぶしさを自覚するようになる段階です。

成熟白内障
水晶体全体が強く濁り、視力が大きく低下します。多くの場合、手術が検討されます。

過熟白内障
長期間放置され、水晶体の構造が変化した状態です。合併症のリスクが高くなるため注意が必要です。

白内障を発症しやすい年齢

白内障は年齢とともに発症率が高くなる病気です。一般的には、次のような傾向があります。

  • 50代
    水晶体に軽い濁りが現れ始める人が増えます(自覚症状がない場合もあります)
  • 60代
    まぶしさやかすみなど、見え方の変化を自覚する人が増えます
  • 70代以降
    日常生活に支障が出て、手術を検討する人が増えます

ただし、進行スピードや症状の出方には個人差があります。

見えづらさを感じているにもかかわらず我慢を続けると、転倒や事故のリスクが高まるため、生活に不便を感じ始めた段階で眼科を受診することが重要です。

白内障の原因

白内障は、水晶体のたんぱく質が変性し、透明性を失うことで起こります。原因はさまざまですが、最も多いのは加齢によって起こる「加齢性白内障」です。一方で、老化とは関係なく発症する白内障も存在します。

種類 主な原因例 特徴
加齢性 老化(繊維細胞蓄積・硬化) 90%以上、40代〜高齢者に多い
先天性 遺伝・母体感染(風疹など) 乳幼児期早期治療必要
外傷性 スポーツ・事故 遅発性あり、急速進行の可能性
併発性 ぶどう膜炎・糖尿病・アトピー 原疾患治療が影響
放射線性 被曝(医療・事故) 数年後発症
薬物性 ステロイド長期使用 若年発症、定期眼科観察推奨

多くは老化による「加齢性白内障」

白内障の原因として最も多いのが、老化によって起こる加齢性白内障です。では、なぜ目のレンズである水晶体は、年齢とともに白く濁ってしまうのでしょうか。

水晶体はレンズのように透明な組織ですが、大きく3つの層から構成されています。最も外側にあるのが水晶体嚢で、水晶体全体を包む袋状の膜です。その内側が水晶体皮質で、ピント調節を担う部分です。中央には、密度の高い水晶体核があります。

この水晶体核は、生まれたときには存在しません。水晶体嚢のうち前眼房に接する前嚢の内側には水晶体上皮細胞が並び、ここで新しい線維細胞が作られています。これらの線維細胞が積み重なって、水晶体皮質を形成します。水晶体上皮細胞では、生涯にわたって新しい線維細胞が作られ続けます。一方、古い線維細胞は水晶体の中央へ向かってゆっくりと移動・蓄積していきます。水晶体の中央には次々と細胞が集まるため、細胞内の水分が減少し、密度の高い状態になります。この過程を繰り返して形成されるのが、水晶体核です。

こうして長い年月をかけて水晶体は少しずつ硬くなり、酸素や栄養が届きにくくなります。その結果、水晶体内のたんぱく質が変性・凝集し、透明性が失われていきます。この変化によって生じる水晶体の白い濁りが、加齢性白内障の正体です。

加齢性白内障は老化現象の一つと考えられており、早い人では40歳代から変化が始まります。 発症頻度は年齢とともに高くなり、70歳代では約半数、80歳代ではほとんどの人に何らかの白内障変化がみられるとされています。

老化以外が原因で起こる白内障

白内障の多くは加齢によるものですが、老化以外の要因によって発症する白内障も存在します。

先天性白内障

先天性白内障は、生まれつき水晶体が濁っている白内障です。遺伝的な要因のほか、妊娠中に母親が風疹などの感染症にかかることで発症することがあります。乳幼児期は視機能が発達する重要な時期であるため、先天性白内障では早期発見と適切な治療が不可欠です。

外傷性白内障

外傷性白内障は、目に強い衝撃を受けたことをきっかけに発症する白内障です。

原因として多いのがスポーツによる外傷で、バドミントンのシャトルや卓球のボールなど、眼球窩(眼の周囲)に入りやすいサイズの物体が当たるケースや、ボクシングなどでの強い打撲が挙げられます。交通事故や転倒、目のケガも原因となります。

外傷性白内障は、衝撃を受けた直後に発症する場合だけでなく、数年から10年以上経過してから遅れて発症することもあるのが特徴です。そのため、過去に目の外傷歴がある場合は、症状が軽くても眼科での定期的なチェックが重要です。

併発白内障

併発白内障は、他の病気に伴って発症する白内障です。

目の病気では

  • ぶどう膜炎
  • 網膜色素変性症
  • 網膜剥離
  • 眼内炎

などが原因となることがあります。これらの場合、原因となる疾患の適切な治療や炎症のコントロールが、白内障の進行予防において重要です。

また、全身の病気が関与するケースもあり、アトピー性皮膚炎や糖尿病に伴って発症する白内障は、それぞれ「アトピー性白内障」「糖尿病白内障」と呼ばれます。

このタイプの白内障では、基礎疾患のコントロールが白内障の進行や重症化に大きく影響します。

放射線性白内障

放射線性白内障は、放射線の影響によって水晶体が障害されることで起こる白内障です。

医療行為や事故などで過剰な放射線を被ばくした場合、被ばく直後ではなく、数年後から水晶体の白濁が現れることがあります。

薬物性白内障(ステロイド白内障)

薬物性白内障は、薬の副作用によって発症する白内障です。

特に多いのが、リウマチ、喘息、アトピー性皮膚炎などの治療で、ステロイド薬を長期間・大量に使用した場合に起こるものです。

このタイプはステロイド白内障と呼ばれ、比較的若い年齢でも発症することがあります。自己判断で薬を中止することは危険なため、定期的な眼科受診による経過観察が重要です。

そのほか、生活習慣に関連する白内障

生活習慣に関連する白内障のリスク要因は、主に以下の4つが挙げられます。

糖尿病(糖尿病性白内障)
高血糖の状態が続くと、水晶体内にソルビトールという物質が蓄積します。ソルビトールは水分を引き寄せる性質があるため、水晶体がむくみ、短期間で急速に濁りが進行します。糖尿病性白内障は、加齢性白内障より進行が早いのが特徴であり、血糖コントロールが発症・進行予防の鍵となります。

紫外線の浴びすぎ
長年にわたり強い紫外線を浴び続けると、水晶体のたんぱく質が酸化ストレスを受け、白内障のリスクが高まります。屋外での活動が多い方は、UVカット機能のあるサングラスや帽子による対策が有効です。

喫煙習慣
喫煙は体内の活性酸素を増加させ、水晶体に強い酸化ストレスを与えます。喫煙者では、非喫煙者に比べて白内障の発症リスクが2~3倍に高まると報告されています。禁煙は白内障予防に有効な生活習慣改善の一つです。

偏った食事・肥満
ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質の不足や、脂質の過剰摂取による過酸化脂質の増加は、水晶体の老化を加速させます。野菜や果物を中心としたバランスのよい食事を心がけることが、白内障リスクの低減につながります。

白内障は、加齢によるものが大部分を占めますが、老化以外の明確な原因で発症する場合もあります。原因を正しく理解することは、進行の予測や治療方針を考えるうえで重要です。

白内障になりやすい人の特徴とリスク要因

白内障は加齢に伴い誰にでも起こりうる変化ですが、発症の時期が早い人や、進行が速い人には共通する特徴があります。ここでは、白内障のリスクが高くなりやすい背景について整理します。

1. 体質・持病や治療の影響がある人

全身の健康状態や治療内容は、目のレンズである水晶体にも影響を与えます。

  • 糖尿病の方
    高血糖の状態が続くと、水晶体内に糖が蓄積し、濁りが急速に進みやすくなります。一般の方より10〜20年早く発症することもあります。
  • アトピー性皮膚炎の方(特に顔・目の周囲に症状がある場合)
    かゆみによって目を強くこする・叩くといった刺激が、水晶体に負担をかけます。ほかの要因と重なることで、20〜30代の若年発症がみられることもあります。
  • ステロイド薬を長期使用している方
    喘息や自己免疫疾患などで、ステロイド薬を長期間使用している場合、副作用として白内障のリスクが高まることがあります。
  • 高度近視(強度近視)の方
    近視が強い方では、目の組織変化が起こりやすく、加齢変化が平均より早く現れる傾向があります。

2. 環境・職業的な要因がある人

日常的に受ける光や熱の刺激の蓄積も、白内障の発症に関与します。

  • 屋外での活動が長い人
    農作業、建設業、ゴルフやマリンスポーツなど、長年にわたる紫外線曝露は、水晶体のたんぱく質を酸化させ、発症を早める一因になります。
  • 強い光や熱を扱う職業
    溶鉱炉作業やガラス工など、強い赤外線を浴び続ける環境では、赤外線白内障と呼ばれる特殊な白内障のリスクが高まります。

3. 生活習慣の影響

日々の生活習慣も、体内の酸化ストレス(老化)を通じて白内障リスクに影響します。

  • 喫煙習慣
    喫煙は水晶体の抗酸化力を低下させ、白内障の発症リスクを約2倍に高めると報告されています。
  • 過度な飲酒習慣
    大量の飲酒は、体の老化防御機能を弱め、白内障リスクを高める可能性があります。
  • 抗酸化栄養素の摂取不足
    ビタミンC・E、ルテインなどを含む野菜や果物の摂取が少ない場合、目の老化に対抗する力が弱くなる可能性があります。

まとめ:リスクを減らすためのチェックリスト

以下に当てはまる項目が多い方は、定期的な眼科検診や生活習慣の見直しを意識しましょう。

  • 家族に若くして白内障になった人がいる
  • 血糖値が高い、または糖尿病と診断されている
  • 20〜30代で強い近視がある
  • 喫煙習慣がある
  • 外出時に紫外線対策をしていない
  • 目を強くこする癖がある

外出時にUVカット機能のあるメガネやサングラスを使用するといった小さな習慣でも、白内障の発症を遅らせる可能性があります。

白内障の症状

白内障の症状は、水晶体の濁りの程度によって徐々に変化します。初期の段階では自覚症状が軽いこともありますが、進行すると見えにくさが明確になり、日常生活の質や安全性に影響を及ぼします。

重要なのは、現在の症状がどの段階にあるのかを把握することです。

白内障の初期症状(経過観察が可能な段階)

白内障の初期では、水晶体の濁りが軽度なため、視力検査の数値には大きな異常が出ないことも少なくありません。そのため、老眼や一時的な目の疲れと誤解されることがあります。

この段階でみられる主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 明るい場所でまぶしく感じる
  • 夕方や夜に目が疲れやすくなる
  • 細かい文字が読みづらくなる
  • コントラスト(明暗差)が分かりにくくなる
  • メガネを替えても見え方が改善しにくい
  • 片目で見ると物が二重に見える(単眼複視)
  • 色がくすみ、白が黄ばんで見える

これらの症状が軽度で、日常生活に大きな支障がない場合は、点眼治療を行いながら定期的に経過観察することが一般的です。

白内障が進行すると(治療を考える目安)

白内障が進行すると、水晶体の濁りが強くなり、視力低下をはっきり自覚するようになります。メガネで矯正しても視力が十分に出ず、見え方の質が大きく低下します。

進行した白内障では、次のような影響が現れます。

  • 読書やスマートフォン操作が困難になる
  • 夜間の運転や階段の昇り降りに不安を感じる
  • 物の輪郭や距離感が分かりにくくなる
  • 転倒や事故のリスクが高まる

一般的には、矯正視力が0.7未満になると、日常生活に支障を感じる方が増えるとされています。ただし、白内障の治療判断は視力の数値だけで決めるものではありません。

「見えにくさによって生活に不便や危険を感じているかどうか」が、治療を検討する重要な目安になります。 そのような変化を感じた場合は、早めに眼科で相談し、今後の治療方針について説明を受けることが大切です。

白内障の診断方法

白内障は、見えにくさの自覚症状だけで診断する病気ではありません。水晶体の濁りの状態、視力への影響、他の目の病気の有無を総合的に評価して診断します。

また、白内障と似た症状を起こす病気もあるため、見えにくさの原因が本当に白内障なのかを見極めることが、診断の重要な目的となります。

白内障自体を診断する眼科検査

白内障の診断では、主に以下の検査を組み合わせて行います。

視力検査

裸眼視力および矯正視力(メガネ装用時)を測定し、見え方の低下の程度を確認します。白内障では、メガネで矯正しても視力が十分に改善しないことが多く、治療方針を考えるうえで重要な指標となります。

細隙灯顕微鏡検査

顕微鏡を用いて水晶体を直接観察し、濁りの有無・部位・進行度を詳しく評価します。白内障の確定診断において、最も重要な検査です。痛みはなく、短時間で終了します。

眼圧検査

目の中の圧力(眼圧)を測定し、緑内障の合併がないかを確認します。白内障と緑内障は併存することも多く、見えにくさの原因が重なっていないかを判断する目的で行われます。また、眼圧検査は、将来的に白内障治療(特に手術)を行う際の眼圧変動リスクを評価する意味でも重要です。

眼底検査

散瞳薬を使用して瞳孔を広げ、網膜や視神経の状態を詳しく調べます。白内障があっても、網膜や視神経に病気がある場合は、治療後の見え方に限界が出るため、診断および今後の見通しを立てるうえで欠かせない検査です。

※散瞳後は数時間、まぶしさや近くの見えにくさが出ることがありますが、一時的なものです。

将来の治療判断に必要な検査

白内障が進行し、今後の治療方針を検討する段階になると、より詳しい検査が行われます。

これらの検査は、「今すぐ治療が必要か」「将来どのような選択肢が考えられるか」を判断するための基礎情報となります。

屈折検査

近視・遠視・乱視の度合いを正確に測定し、現在の見え方を客観的に評価します。白内障による視力低下と、屈折異常による見えにくさを区別する目的もあります。

角膜の検査

角膜の形状や表面の状態を調べ、乱視の有無や程度を確認します。あわせて角膜内皮細胞密度測定を行うこともあり、これは角膜の透明性を保つ細胞の数を評価する検査です。角膜内皮細胞の状態は、将来の治療や手術の適応判断に影響する重要な指標となります。

眼軸長測定

眼球の長さを測定し、目の構造を正確に把握するために行われます。将来の治療計画を立てる際の基礎データとなる検査です。

これらの検査は、必ずしもすぐに治療や手術を行うためのものではありません。今後の経過や治療のタイミングを適切に判断するための準備として行われます。

  • 白内障の診断は、症状だけでなく検査結果を総合して判断されます
  • 見えにくさの原因が白内障以外にないかを確認することが重要です
  • 将来の治療判断に備えて、段階的に検査が行われます

白内障の治療方法

白内障の治療は、水晶体の濁りの程度と、日常生活への影響を総合して判断されます。白内障があるからといって、すぐに治療が必要になるわけではなく、進行段階に応じた対応が取られます。

見え方に違和感があり、白内障が疑われる場合は、まず眼科を受診します。前章で述べた検査によって白内障の状態や他の病気の有無を確認したうえで、進行度に応じた治療方針が決まります。

初期の白内障は点眼治療で進行抑制を試みる

白内障が初期段階で、生活に大きな支障がない場合は、定期的な検査による経過観察が基本となります。自覚症状が軽度の場合には、点眼薬や内服薬を用いて、進行をできる限り緩やかにすることを目的とした治療が行われることがあります。

白内障の治療に使われる薬には、次のようなものがあります。

  • ピレノキシン
    水晶体の濁りに関与するとされる物質の作用を抑える目的で使用されます。
  • グルタチオン
    抗酸化作用により、水晶体への酸化ストレスを軽減します。
  • チオプロニン(内服薬)
    水晶体たんぱく質の変化を抑える目的で使用されることがあります。

ただし、これらの薬は、白内障の進行を完全に止めたり、濁った水晶体を元の透明な状態に戻したりするものではありません。効果には個人差があり、進行抑制効果は限定的であることが知られています。

そのため、薬による治療を行っていても、少しずつ見え方が悪くなっていくケースは珍しくありません。

手術を検討するタイミング

白内障が進行し、視力低下や生活上の不便さが明確になってきた場合には、治療方針の見直しが必要になります。この段階で選択肢となるのが、外科的治療(白内障手術)です。

手術を検討する目安としては、次のような状況が挙げられます。

  • 車の運転に不安を感じるようになった
  • 視力の低下が比較的速いペースで進んでいる
  • 屋外での仕事や細かい作業に支障が出ている
  • 日常生活で「見えにくい」と感じる場面が増えた

白内障治療では、視力の数値だけでなく、生活の質(QOL)への影響が重視されます。どのタイミングで手術を受けるかは、患者さん一人ひとりの生活環境や価値観によって異なります。

また、糖尿病などの持病がある方は、基礎疾患の治療やコントロールを優先することが重要になる場合もあります。白内障では、濁った水晶体を透明に戻したり、進行を完全に止める方法はありません。

薬で進行を抑えながら経過をみていても、生活に不便を感じることが増えてきた段階で、主治医と相談し治療方針を再検討します。

白内障手術の具体的な方法や注意点については、別ページで詳しく解説しています。

白内障を予防するには?

白内障は加齢の影響が大きい病気であり、完全に発症を防ぐことは難しいとされています。しかし、生活習慣の見直しや基礎疾患の適切な管理によって、発症や進行を遅らせられる可能性は十分にあります。

ここでは、白内障のリスク低減・進行抑制の観点から、意識したいポイントを整理します。

生活習慣の改善

白内障の進行には、体内の酸化ストレスが深く関与しています。そのため、酸化ストレスを増やさない生活習慣が重要です。

  • 禁煙を心がける
  • <li栄養バランスの取れた食事を意識する <li野菜や果物を日常的に摂取する <li過度な飲酒を控える

特に喫煙は、白内障の明確な危険因子であることが知られており、禁煙はリスク低減に有効です。

ビタミンCやビタミンEなどの抗酸化物質を多く含む食品を食事から摂ることは、全身の健康や目の老化対策として推奨されます。一方で、高用量の抗酸化サプリメントによって白内障の発症や進行が有意に抑えられるという明確なエビデンスは、大規模研究では示されていません。そのため、サプリメントに過度な期待を寄せるのではなく、日々の食事を基本とすることが大切です。

関連のある病気の治療と予防

白内障は、全身の病気や他の目の病気と深く関係しています。特に重要なのが、糖尿病などの慢性疾患の管理です。

糖尿病では高血糖状態が続くことで、白内障が若い年齢から進行しやすくなることがあります。そのため、血糖コントロールを適切に行うことは、白内障の進行予防だけでなく、糖尿病網膜症の発症・進行抑制にも重要です。

また、ぶどう膜炎などの炎症性疾患がある場合は、炎症をしっかり抑える治療を継続することが白内障の悪化防止につながります。さらに、ステロイド薬(内服・点眼・注射など)の長期使用は、薬剤性白内障の原因となることがあります。

ステロイド治療が必要な場合は、主治医と相談しながら適切な量・期間で管理し、定期的に眼科を受診することが大切です。

眼部の紫外線被ばく

紫外線は、水晶体のたんぱく質を変性させ、白内障の進行を促す要因の一つです。特に屋外での活動が多い方は、日常的な紫外線対策が重要になります。

  • UVカット表示のあるサングラスやメガネレンズを使用する
  • つばのある帽子をかぶる
  • 晴天時だけでなく、曇りの日も対策する

これらの対策は、白内障だけでなく、加齢黄斑変性など他の目の病気の予防にも有効です。

眼部の外傷を避ける

目のケガは、外傷性白内障の原因となることがあります。特に以下のような場面では注意が必要です。

  • ラケットスポーツやボール競技
  • 金属加工や建設作業などの作業現場
  • 転倒や事故のリスクがある場面

これらの状況では、アイガードや保護メガネの着用が推奨されます。目への強い衝撃は、受傷直後だけでなく、数年後に白内障として現れることもあるため、予防が重要です。

白内障と合併症について

白内障は単独で起こる病気とは限らず、他の目の病気や全身疾患と併発することがあります。これらの合併症の有無は、見え方の回復の程度や治療方針、治療後の見通しに影響するため、あらかじめ理解しておくことが大切です。

ここでは、白内障と関係の深い代表的な病気について解説します。

白内障と加齢黄斑変性

加齢黄斑変性は、網膜の中心部にある黄斑に障害が起こる病気です。黄斑は「物を見る中心」を担っているため、障害されると視野の中心が暗くなる、歪んで見えるといった症状が現れます。

白内障では主に視界全体がかすむ・ぼやけるのに対し、加齢黄斑変性では中心だけが見えにくい、歪むという特徴があります。

両者が併発している場合、白内障の治療によって視界のかすみは改善しても、中心視力の回復には限界が出ることがあります。

そのため、白内障の診断時には眼底検査などで黄斑の状態を確認し、どの程度の見え方改善が期待できるかを事前に評価することが重要です。

白内障と緑内障

緑内障は、視神経が障害され、視野が徐々に欠けていく病気です。初期には自覚症状が少ないため、白内障による見えにくさと区別がつきにくいことがあります。

白内障と緑内障が併発している場合、白内障治療によって視界のかすみは改善しても、一度失われた視野は回復しません。

そのため、白内障の診断時には眼圧検査や視神経の評価に加え、必要に応じて視野検査を行い、緑内障の有無や進行度を正確に把握することが重要です。

白内障と糖尿病

糖尿病では、高血糖の影響によって白内障が比較的若い年齢から進行しやすくなることがあります。また、糖尿病網膜症を併発している場合、見えにくさの原因が白内障だけでないケースも少なくありません。

白内障と糖尿病が併発している場合は、血糖コントロールを安定させることが、白内障治療の安全性や術後合併症リスクの低減に直結します。さらに、適切な血糖管理は糖尿病網膜症の進行抑制にも重要です。

治療方針を決める際には、眼底検査や必要に応じてOCT(光干渉断層計)などを用いて、網膜の状態を詳しく評価します。

白内障とぶどう膜炎

ぶどう膜炎は、目の内部に炎症が起こる病気で、白内障の原因や進行促進因子となることがあります。

炎症そのものに加え、治療に用いられるステロイド薬の影響によって、白内障が進行するケースもあります。

この場合は、まず炎症をしっかり抑える治療を優先し、病状が安定した段階で白内障の治療を検討するのが一般的です。

白内障と網膜の病気

網膜剥離の既往や、網膜変性疾患、黄斑円孔などの病気がある場合、白内障による濁りを改善しても、見え方の回復に限界が生じることがあります。

白内障の診断時に眼底検査を行うのは、「白内障を治したときに、どの程度の視力改善が期待できるか」を見極めるためでもあります。

白内障のよくあるご質問(FAQ)

白内障は片目だけに起こることもありますか?

はい、あります。

白内障は多くの場合、両眼に起こりますが、進行のスピードは左右で異なることが珍しくありません。そのため、「片目だけ見えにくい」と感じて受診し、もう片方も軽度に進行していることが見つかるケースもあります。

視力検査では問題ないと言われましたが、白内障の可能性はありますか?

あります。

白内障では、視力の数値が保たれていても、まぶしさ・コントラスト低下・夜間の見えにくさが先に出ることがあります。「数字は見えるのに見づらい」と感じる場合は、白内障の初期であることもあります。

メガネやコンタクトを使い続けると白内障が悪化しますか?

悪化することはありません。

メガネやコンタクトは白内障の原因にも進行因子にもなりません。ただし、白内障が進むと、度数が頻繁に変わる・合わなくなることはあります。

パソコンやスマホを長時間使うと白内障になりますか?

直接の原因にはなりません。

白内障は主に加齢や紫外線、代謝変化が関与します。ただし、目の疲れやドライアイによって「見えにくさ」が強調され、白内障の症状に気づきやすくなることはあります。

白内障は自然に治ることはありますか?

ありません。

白内障は一度生じた水晶体の濁りが自然に元に戻ることはありません。進行が緩やかな場合は長期間変化しないこともありますが、自然治癒は期待できません。

白内障があると、他の目の検査や治療ができなくなりますか?

一部、影響を受けることがあります。

白内障が進行すると、眼底が見えにくくなり、網膜や視神経の評価が難しくなることがあります。そのため、他の目の病気がある場合は、白内障治療のタイミングを考慮することがあります。

白内障は遺伝しますか?

直接的な遺伝は多くありません。

ただし、白内障になりやすい体質や病気(糖尿病など)が家族内で共通することで、結果的に発症時期が似ることはあります。先天性白内障は、遺伝や胎内環境が関与する場合があります。

白内障があっても運転免許は更新できますか?

可能な場合もありますが、視力・視野の基準を満たす必要があります。

特に夜間運転に不安がある場合は、事故リスクの観点から早めの相談が重要です。見えにくさを我慢して運転を続けることは勧められません。

白内障があると、目薬は一生続ける必要がありますか?

必ずしも一生ではありません。

点眼治療は進行を緩やかにする目的で行われますが、進行状況や生活への影響に応じて、治療方針は見直されます。自己判断で中断せず、定期的に眼科で相談することが大切です。

白内障は「我慢してはいけない病気」なのですか?

我慢し続ける必要はありません。

白内障は命に関わる病気ではありませんが、転倒・事故・生活の質低下につながることがあります。「見えにくさで生活が不便」と感じた時点が、相談の適切なタイミングです。

サプリメントや健康食品で白内障を予防できますか?

現時点では、サプリメントによって白内障の発症や進行を明確に予防できるという確かな証拠はありません。

大規模な臨床試験では、高用量のビタミンC・ビタミンE・βカロテンなどのサプリメントで、白内障を有意に抑えたという結果は示されていません。一方で、野菜や果物を中心としたバランスの良い食事から抗酸化物質を摂取することは、全身の健康や目の老化対策として推奨されています。サプリメントに過度な期待を寄せるより、日々の食生活を整えることが基本です。

ブルーライトカット眼鏡は白内障予防になりますか?

現時点では、ブルーライトカット眼鏡が白内障を予防するという明確なエビデンスはありません。

白内障は主に加齢や紫外線、代謝の変化などが関与する病気であり、ブルーライトとの直接的な関連ははっきりしていないとされています。ただし、ブルーライトカット眼鏡は、パソコンやスマートフォン使用時の眼精疲労やまぶしさの軽減に役立つ場合があります。白内障予防というより、デジタル機器使用時の快適性向上のための対策と考えるのが適切です。

白内障が進むと、必ず手術が必要になりますか?

必ずしもすぐに手術が必要になるわけではありません。

白内障の治療は、視力の数値だけでなく、日常生活への影響を重視して判断されます。 一般的には、

  • 生活に支障が出てきた
  • 運転や仕事、家事がつらくなった
  • メガネでの調整が難しくなった

といった状況が、手術を検討する目安になります。また、他の目の病気がないかを含めて、検査結果をもとに総合的に判断します。白内障は『必ずこの視力になったら手術』という決まった線引きがある病気ではなく、一人ひとりの生活スタイルに合わせて相談しながら決めていくことが大切です。

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こちらの記事の監修医師

髙橋 俊明

たかはし眼科髙橋 俊明 先生

岩手県盛岡市にある「たかはし眼科」、院長の髙橋 俊明 です。

平成30年7月からは髙橋公美副院長を迎え、2人体制で診療を行っております。 私の専門は角膜疾患や白内障手術ですが、副院長は眼底疾患を専門としており、幅広い眼科疾患に対応できるようになりました。 さらに2人同時に診察することで、患者様の待ち時間の軽減、ゆとりある診察を行えるようになりました。

医師、スタッフ共々皆様から親しまれますよう今後も努めてまいります。どうぞ、末永くよろしくお願いいたします。

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