最終更新日:2023.12.07

アデノウイルスの潜伏期間は?子どもの症状と感染経路、大人へうつるのかを解説

アデノウイルスの潜伏期間は?子どもの症状と感染経路、大人へうつるのかを解説

アデノウイルス(adenovirus)は非常に感染力の強いウイルスです。ウイルスの型や感染する部位、症状の出方によって、それぞれ病名がついています。たくさんの型(種類)があるため、アデノウイルスに2度3度と繰り返し感染することがあります。

現在、国内でも海外でもアデノウイルスに対する特効薬はありません。そのため、治療は基本的に症状を和らげるための対症療法となります。

本記事では医師に監修していただき、子どもに多いアデノウイルスの潜伏期間、各病気の感染経路と症状、子どもから大人へうつるのかを解説しています。

アデノウイルスとは

アデノウイルスは風邪症候群(いわゆる一般的な風邪)の原因ウイルスのひとつです。アデノウイルスにはたくさんの型(種類)が存在し、ウイルス感染すると炎症によってさまざまな症状が出ます。そして感染するウイルスの型・体の感染場所によって、その病名も異なります。

代表的なものは、

  • 鼻炎・咽頭炎(上気道炎)
  • 気管支炎・肺炎(下気道炎)
  • プール熱(咽頭結膜熱)
  • はやり目(流行性角結膜炎)
  • 胃腸炎
  • 出血性膀胱炎、尿道炎
  • 肝炎

などがあげられます。

アデノウイルスは夏の高温多湿の環境で活発化するため、夏に感染することが多いとされていますが、基本的には年間を通して感染リスクがあると言えます。

アデノウイルスの受診の目安

一般的な風邪症状と同様に、鼻水・鼻づまり・発熱の症状がでますが、高熱が続いたり目の充血がみられたりしたら、アデノウイルスに感染している可能性が高いです。一度、受診しましょう。

※ アデノウイルス感染症と診断された場合、幼稚園・保育園への登園、学校へ登校が一時停止されます。

また、

  • のどの痛みが強くて水分がとれない
  • 高熱が3日以上、続いている
  • 元気がない、ぐったりしている

以上のような症状がみられたら、早めに受診してください。

アデノウイルスは大人にもうつる?

アデノウイルスは大人にもうつります。感染力が非常に強く、保育園・幼稚園などで広がったり、子どもからパパ・ママへと、大人へうつったりすることがよくあります。原因ウイルスの数が多いことから、1シーズンに何回もかかることがあるため、子どもからの感染も含めて大人も予防対策が必要です。

アデノウイルスの潜伏期間

ウイルスの型によって潜伏期間は異なりますが、概ね 2〜14日程度といわれています。型によっては潜伏期間が長い場合もあるため、感染経路に心当たりがないと感じる患者さんも思いです。

アデノウイルスを原因とする病気 潜伏期間の目安
プール熱
(咽頭結膜熱)
4〜7日
クループ症候群
(急性咽頭炎)
1〜7日
気管支炎・肺炎 5〜7日
はやり目
(流行性角結膜炎)
5〜14日
胃腸炎 3〜10日
膀胱炎・尿道炎 1〜7日
肝炎 3〜10日

アデノウイルスの大人の感染経路

アデノウイルスは、

  • 飛沫感染
  • 接触感染

この2つが主な感染経路です。

大人の場合、子どもから感染することが多いです。

アデノウイルスの飛沫感染

咳やくしゃみなど、空気中に飛び散ったウイルスを吸い込んだことによって感染します。子どもが幼稚園・保育園、学校などで感染し、家庭内で感染することがあります。家族に感染者がいる場合は、ウイルスが飛び散らないように配慮することが大切です。 

アデノウイルスの接触感染

ウイルス感染した人の手指に触れたり、プールでの接触によって感染が広がります。

家庭内感染の例では、子どものタオルや食器・食べ物の共有によって感染することも多いため、避けるようにしましょう。また、子どもの嘔吐物や、赤ちゃんのオムツを替えた際の便が、大人の手指について感染することもあります。汚物の処理には十分に注意してください。

アデノウイルスによる病気と症状

アデノウイルスは、さまざまな病気の原因になります。それぞれの症状の特徴は以下の通りです。

プール熱 – 高熱・喉の痛み

プール熱とも呼ばれる咽頭結膜熱は、夏風邪の代表格とされていますが、夏だけでなく1年を通して感染リスクがあります。名前からプールで感染すると思われていますが、プール以外のところで感染する場合がほとんどです。

  • 39〜40度の高熱
  • 喉の奥の腫れ、痛み
  • 喉の白っぽい糊のような分泌物
  • 白目の充血
  • まぶたの裏側の赤み
  • 白くネバネバした目やに
  • 眩しがる

など、さまざまな症状が現れます。赤ちゃんの場合は下痢や嘔吐を伴うこともあります。

高熱が続くので水分をしっかりと摂ることが大切です。熱で辛い時は解熱薬が、目の症状(結膜炎など)には点眼薬が処方されるなど、治療の基本は症状を和らげる対症療法となります。

はやり目 – 目の充血・目やに

はやり目(流行性角結膜炎)は、アデノウイルスが目に感染(接触感染)することで起こります。

  • 白目の充血
  • 白くネバネバした目やに
  • 目がゴロゴロする(違和感・異物感)
  • 涙が出る
  • まぶたの腫れ
  • 視力低下(ウイルスによる後遺症:点状の角膜混濁)

以上のような目の症状が中心で、プール熱に比べると高熱はなく、喉の赤みや痛みもさほど強くはありません。

ほかの感染を防ぐために抗菌点眼薬や、炎症を抑える目的でステロイド点眼薬が処方される場合もありますが、はやり目に有効な点眼薬はありませんのであくまでも補助的な治療となります。

ウイルス性の結膜炎は、細菌性の結膜炎と比べて症状が重く、流行性角結膜炎は完治に2〜3週間かかることもあります。感染力も強いため、登園を再開するには医師の許可が必要です。一般的には、症状がなくなった2日後が登園できる目安です。

気管支炎・肺炎 – 激しい咳・痰

アデノウイルスに感染し、のどの腫れ(扁桃炎)や痛みをなどの症状がでたあとで、やがて病態が重症化して、気管支炎や肺炎などを引き起こす場合があります。

気管支炎は、気管支の粘膜にウイルス(または細菌)がついて炎症が起こります。

  • 発熱
  • 激しい咳

など、風邪症状から徐々に咳が激しくなるのが特徴です。これは肺炎に至る手前の状態とも言えます。

ウイルス(または細菌や微生物)によって、肺にある肺胞に炎症が起こる病態が肺炎です。気管支炎と同じく、発熱や咳の症状が続きます。

アデノウイルスによるウイルス性肺炎と診断された場合、症状が軽ければ症状を和らげる薬などで自宅療養をします。

胃腸炎 – 波がある腹痛・長引く嘔吐下痢

ウイルスが胃腸の中に入り込んで炎症を引き起こします。それによって、胃腸のはたらきが悪くなるため「お腹の風邪」とも呼ばれます。

  • 腹痛
  • 下痢(白〜黄白色の水っぽい便)
  • 嘔吐
  • 発熱

など、主にお腹の症状が目立ちます。

アデノウイルスによる胃腸炎も、特別に効果のある治療はありません。吐き気・嘔吐、下痢が何日も続くという場合には、その症状に合わせたお薬を処方して、症状を緩和させながら自然に治るのを待ちます。

下痢が続くと、脱水症状が起こることもあるため、こまめな水分補給はとても重要です。症状がひどい場合には点滴を検討することもあります。胃腸を十分に休めながら、症状が回復してきたら、胃腸に負担をかけないものから少しずつ食事を開始して行きます。

オットセイのような咳 – クループ症候群

咽頭に炎症が起こり、それによって声帯が腫れて空気の通り道をふさいでしまった状態の総称を「クループ症候群」といいます。アデノウイルスのほか、インフルエンザウイルスやRSウイルスなど、さまざまな原因ウイルスへの感染によって起こる病気です。

クレープ症候群では、主に咳の症状が出ます。

  • 長引く咳
  • 息を吸うときに苦しい(吸気性喘鳴)
  • 呼吸をすると胸がペコペコとへこむ(陥没呼吸)

など、進行するにつれて声がかすれ、やがて息苦しさを感じるようになります。

咳は、オットセイの鳴き声のような「クオッ、クオッ」または「アウッ、アウッ」という音が特徴的です。

呼吸を楽にするため、ステロイド薬を処方して、喉の炎症を抑える治療を行います。重症なケースでは、入院も必要となる場合があります。

アデノウイルスに関するよくあるご質問

アデノウイルスが原因となる感染症には、どのような病名がありますか?

ウイルスの型や感染する部位、症状の出方によって、それぞれ病名がついています。

各病名と主な症状は以下の通りです。

アデノウイルス感染症 一般的な風邪症状(発熱・喉の痛み・鼻水・咳)
プール熱
(咽頭結膜熱)
高熱・喉の痛みのほか、白目の充血や多量の目やに
はやり目
(流行性角結膜炎)
白目の充血や白くネバネバした目やに(結膜炎症状)
アデノウイルス腸炎 発熱のほか、吐き気・嘔吐、腹痛・下痢など胃腸(お腹)を中心とした症状
アデノウイルス性
出血性膀胱炎
肉眼的血尿(目で見て赤色がわかる血尿)、排尿痛、頻尿・残尿感、微熱
アデノウイルス肺炎 激しい咳・痰、苦しそうな呼吸、呼吸が速い

一度アデノウイルスに感染しても、再感染することはありますか?

アデノウイルスは多くの種類があるため、一度感染しても、再び別の型に感染することがあります。

アデノウイルスの特徴の一つが、その種類の多さです。51種類の型があると言われています。種類が多いため、何度も同じような病気になる場合があります。兄弟・姉妹間での感染、子どもから大人への感染と、家庭内感染も多いため、十分に注意しましょう。

子どもがアデノウイルスに感染したのですが、いつから学校(保育園や幼稚園)にいけますか?

症状の出方によって、登園・登校の条件が異なるため、医師に相談しましょう。

アデノウイルスは非常に感染力が強いため、症状によっては、登園・登校が停止されます。プール熱(咽頭結膜熱)の場合、発熱や目の充血・目やになどの症状が落ち着いて「完全に消失してから2日経過後」というのが登園・登校の条件

です。また登園・登校には医師の診断と許可証が必要です。

はやり目(流行性角結膜炎)も同様に、医師に診断してもらい許可を得ることが、登園・登校の条件となります。受診して「感染のおそれがない」と診断されたら問題ありません。必ず医師の指示に従いましょう。

そのほかのアデノウイルス感染症については、熱が下がり、全身状態も良好になれば、登園・登校は可能です。その場合、必ずしも医師の許可証は必要ではありませんが、園や学校など自治体によって方針が異なるため、通っているところに確認しておくと安心です。

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こちらの記事の監修医師

西島 浅香

西島こどもクリニック西島 浅香 先生

当院では、お子様の病気や健康についての相談、健康診断や予防接種についての相談をはじめ、併設の「西島産婦人科医院」と協力・連携しながら、子育て中のご両親の支援も積極的に行っております。

お子さん、ご両親との係わりの中から健康な家庭が築けますよう願いつつ診療しております。

生活環境や食物等の変化に伴い増加してきた、お子様のアレルギー疾患(気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎など)にも対応しております。

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