傷病手当金は非課税所得です。所得税も住民税もかかりません。
受給したこと自体について確定申告をする必要もありません。ただし、同じ年に給与収入があった場合(休職前の数か月分など)は、その給与に対して年末調整や確定申告が必要になる場合があります。医療費控除を申請したい場合も、別途確定申告が必要です。
病気やケガで仕事を休まなければならなくなったとき、一番の不安は「これからの収入はどうなるの?」ではないでしょうか。そんなときに生活を支えてくれるのが傷病手当金という公的制度です。
うつ病・適応障害・がん・骨折など、業務外で労務不能と認められる病気やケガであれば原則として対象になります。この記事では受給条件・計算方法・申請書の書き方・振込タイミング・退職後の扱いまで、一気通貫で解説します。
傷病手当金は健康保険法に基づく制度で、次の4つの条件をすべて満たすと受給できます。協会けんぽ・健康保険組合・共済組合などに加入している本人が対象です。扶養家族(被扶養者)は対象外です。また、個人事業主・フリーランスが加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金の制度がありません。
一方で、パートやアルバイトであっても、勤務先の健康保険に加入していれば対象になります。雇用形態ではなく「健保の被保険者かどうか」が判断の基準です。
仕事中や通勤中に起きた事故・ケガは「労災保険」の対象になるため、傷病手当金とは別の制度で補償されます。傷病手当金はあくまで「業務外(私傷病)」が条件です。
精神疾患(うつ病・適応障害・統合失調症など)も、業務外と認められれば対象です。精神科・心療内科に通院中の方でも問題なく申請できます。
「連続して3日間休んだ後、4日目以降も仕事に就けない日が続いている」という状態が必要です。この最初の3日間を待期期間と呼びます。
給与が支払われている日は傷病手当金は支給されません。ただし、支払われた給与が傷病手当金の額より少ない場合は、その差額が支給されます。たとえば、傷病手当金の日額が7,000円で、会社から日額4,000円の給与が出ている場合、差額の3,000円が受け取れます。
「標準報酬月額」とは、毎年4〜6月の給与をもとに決められる健保上の区分金額です。給与明細に記載されている健康保険料の計算にも使われています。実際の手取りより高く算出されることが多く、おおむね月収の約2/3が支給されるイメージです。
※ 標準報酬月額は協会けんぽの等級テーブル(2025年度)で換算しています。実際の支給額は加入健保・標準報酬月額により異なります。正確な金額は加入健保にご確認ください。
※ 下記はあくまでも目安です。実際の標準報酬月額は健保の等級区分で決まるため、実際の支給額と異なる場合があります。正確な金額は加入健保にご確認ください。
| 月収(目安) | 標準報酬月額 | 1日あたり支給額 | 月額(×30日) | 最大受給総額(547日) |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 200,000円 | 約4,444円 | 約133,333円 | 約2,430,000円 |
| 30万円 | 300,000円 | 約6,667円 | 約200,000円 | 約3,648,000円 |
| 40万円 | 410,000円 | 約9,111円 | 約273,333円 | 約4,984,000円 |
| 50万円 | 500,000円 | 約11,111円 | 約333,333円 | 約6,078,000円 |
支給が始まった日から、実際に支給された日数を通算して最大547日(1年6か月)です。2022年1月の法改正により、途中で復職した期間はカウントされなくなりました。再び同じ病気で休んだ場合でも、前回の支給日数と合算されます。

傷病手当金は、自分で申請しなければ一円も支給されません。申請には「傷病手当金支給申請書」4枚1組が必要で、本人・医師・会社がそれぞれ記入します。
| 枚数 | 記入者 | 主な記入内容・注意点 |
|---|---|---|
| 1・2枚目 | 被保険者本人(あなた) | 氏名・振込口座・休業期間・出勤状況など。出勤した日は正直に〇をつける |
| 3枚目 | 主治医(療養担当者) | 病名・療養期間・労務不能の証明。完成まで1〜2週間かかる場合あり |
| 4枚目 | 勤務先(事業主) | 休業期間・給与支払いの有無の証明。健康保険法上、事業主に協力義務あり |
主治医に依頼します。クリニックによっては書類作成に1〜2週間かかることがあるので、受診のたびに「来月分の申請書をお願いしたい」と早めに伝えておくとスムーズです。精神疾患の場合も、医師が労務不能と判断すれば記入してもらえます。
会社の人事・総務に依頼します。「うちでは書かない」と言われることがありますが、健康保険法上、事業主には申請書類への協力義務があります。拒否されても遠慮せずに再依頼してください。
それでも対応してもらえない場合は、加入している健保(協会けんぽの場合は各都道府県支部)に連絡すると、例外的な対処法を案内してもらえます。
| 申請のタイミング | 振込まで(目安) | 理由 |
|---|---|---|
| 初回申請 | 2週間〜1か月 | 加入資格・申請内容の詳細審査があるため時間がかかる |
| 2回目以降 | 2週間前後 | 審査が簡易になる。毎月1か月分ずつ申請するとスムーズ |

数か月分をまとめて申請すると審査が長引くことがあります。毎月定期的に1か月分ずつ申請するのが最も効率的です。
申請から1か月以上経っても振り込まれない場合は、書類の不備や審査の遅延が考えられます。加入健保の窓口に「○月○日に申請書を送付した」と告げて状況を確認しましょう。郵送の場合は追跡番号を控えておくと安心です。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| 国民健康保険加入者 | 国保には傷病手当金の制度がない(一部市区町村では独自給付あり。お住まいの自治体の国保窓口にご確認ください) |
| 扶養家族(被扶養者) | 被保険者本人のみが対象 |
| 業務中・通勤中のケガ | 労災保険が優先されるため不支給 |
| 有給休暇中 | 給与が支払われるため原則不支給(給与<手当の場合は差額支給) |
| 待期3日が完成していない | 4日目以降にならないと支給対象にならない |
| 障害厚生年金・老齢年金との重複 | 年金額に応じて傷病手当金が減額・不支給 |
| 退職後の任意継続被保険者 | 退職前から受給中の場合を除いて原則対象外 |
病気が回復せず退職せざるを得ない場合も、次の2つの条件を満たせば退職後も傷病手当金を受け取り続けることができます。
傷病手当金は「労務不能の日」に対して支給されます。退職日に挨拶や荷物整理のためだけでも出勤してしまうと、その日が「労務可能」とみなされ、原則として継続給付の要件を満たさなくなります(例外的な取り扱いがある場合もあるため、事前に加入健保に確認することをおすすめします)。
退職を検討している場合は、退職日の前後の申請スケジュールについて、主治医・人事担当者・加入健保の三者に事前確認することを強くおすすめします。
退職後の申請先は、在職中に加入していた健保(協会けんぽまたは健保組合)に直接です。会社を経由する必要はなく、本人が直接郵送で申請できます。
1年6か月経っても回復していない場合、障害年金の受給を検討できます。うつ病・統合失調症・がんなど多くの疾患が対象です。傷病手当金の受給中から早めに年金事務所や社会保険労務士へ相談しておくと、支給終了後のブランクを最小限にできます。
退職後に回復して仕事を探せる状態になったら、雇用保険(失業給付)の申請ができます。ただし、傷病手当金と失業給付は原則として同時受給できません。回復してから順番に手続きを進めましょう。
傷病手当金は非課税ですが、年間の医療費が多かった年は確定申告で医療費控除を受けられます。ただし高額療養費や民間保険の給付金は差し引く計算が必要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 健康保険加入の会社員・公務員(国保・扶養は対象外) |
| 支給額 | 標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3(月収の約2/3) |
| 支給期間 | 支給開始から通算最大547日(1年6か月) |
| 申請書 | 4枚1組(本人・主治医・会社が記入) |
| 振込時期 | 初回2週間〜1か月 / 2回目以降2週間前後 |
| 退職後 | 2条件を満たせば継続受給できる(退職日の出勤に要注意) |
| 手当終了後 | 障害年金・雇用保険・医療費控除を検討 |
申請が難しいと感じたら、社会保険労務士や加入健保の窓口に相談できます。まずは上のシミュレーターで受給額の目安を確かめてみてください。
傷病手当金は非課税所得です。所得税も住民税もかかりません。
受給したこと自体について確定申告をする必要もありません。ただし、同じ年に給与収入があった場合(休職前の数か月分など)は、その給与に対して年末調整や確定申告が必要になる場合があります。医療費控除を申請したい場合も、別途確定申告が必要です。
はい、傷病手当金を受給中でも健康保険料・厚生年金保険料の支払い義務は続きます。
給与からの天引きができなくなるため、会社が立て替えて復帰後に精算するか、毎月自分で振り込む方法が一般的です。事前に会社の人事・総務に支払い方法を確認しておきましょう。なお、40歳以上の方は介護保険料も同様に支払いが続きます。
株式投資・投資信託・FX・不動産収入(家賃)など、労働を伴わない投資収益は傷病手当金に影響しません。
傷病手当金が調整されるのは「給与(労働の対価)」に限られるためです。ただし、FXや株の売買に多くの時間と労力をかけることが「労務可能な状態」と判断されるリスクはゼロではありません。特に短期売買を大量に行うような場合は、念のため加入健保に相談することをおすすめします。
原則としてNGです。
傷病手当金は「仕事に就けない状態」であることが支給条件であるため、アルバイトや副業(ライター・デザイン・物販など)で収入を得ると「労務可能」とみなされ、支給停止や過去の受給分の返還を求められることがあります。メルカリなどでの不用品処分(古着・家具など生活用動産の売却)は原則として問題ありません。ただし、仕入れて転売したりハンドメイド品を継続販売するケースは「事業」とみなされるリスクがあります。判断に迷う場合は加入健保に相談してください。
はい、健康保険への加入期間に関係なく、入社直後でも申請できます。
「被保険者であること」が条件であり、加入してから何か月以上というルールはありません。ただし、退職後も受給を継続する「資格喪失後の継続給付」には「1年以上継続して被保険者であること」が必要です。入社直後に退職した場合はこの条件を満たせないため、退職後は受給できなくなります。
同じ病気・ケガによる再発の場合、待期期間(3日間)は改めて必要ありません。
ただし、支給日数は初回から通算されます。たとえば、1回目に200日分受給していた場合、残り347日分(547日−200日)が受給上限です。復職後に別の病気やケガが原因で休業した場合は、新たな傷病として別カウントになり、改めて待期3日間が必要になります。
はい、申請権は「労務不能だった日の翌日から2年間」有効です。
数か月分まとめて申請することは可能ですが、一度に大量の申請をすると審査に時間がかかり振込が遅れます。また、2年を過ぎると時効で受給権が消滅してしまうため、気づいたら早めに手続きしましょう。
住民税は前年の所得をもとに計算されるため、休職1年目は「休職前の給与収入」に対して住民税がかかります。
傷病手当金自体は非課税ですが、前年に給与収入があれば翌年度の住民税は発生します。休職が2年目以降に入ると、前年の所得が傷病手当金のみ(非課税)になるため、住民税がゼロまたは大幅に下がります。なお、在職中は給与から天引きされていた住民税が、休職中は天引きできなくなるため、会社から自分で納付する「普通徴収」への切り替えを求められる場合があります。
2か所以上に勤めていて、それぞれで健康保険に加入している場合は、両方の標準報酬月額を合算した額をもとに支給額が計算されます。
申請は主たる被保険者の健保に行います。副業先がパートなどで健保未加入の場合は、本業の標準報酬月額のみで計算されます。副業の給与が傷病手当金の日額より少ない場合、その差額が支給されます。
会社が就業規則などに基づいてボーナスを支給する場合、傷病手当金との調整は原則ありません。
ボーナスは「賞与」として扱われ、傷病手当金の支給要件である「給与(月例賃金)の支払いの有無」とは別に判断されます。ただし、ボーナスが「休業中の生活補填」として会社が判断して支払った場合など、給与に準じる扱いとなるケースがあるため、会社の就業規則や健保の判断次第で調整が入ることもあります。不明な場合は加入健保に確認しましょう。
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